「店頭に裸の男性モデルが立っていた"アバクロ"の繁栄と凋落」ホワイト・ホット アバクロンビー&フィッチの盛衰 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
店頭に裸の男性モデルが立っていた"アバクロ"の繁栄と凋落
2000年代の初頭、L.A.のショッピングモール"DRIVE"の中にあるアバクロンビー&フィッチの店頭では、季節に関係なく、筋骨隆々の男性モデルがジーンズに上半身裸で客を出迎える姿があった。店内に入るには裸のモデルの脇を避けなくてはいけなかったのである。それが、当時一世を風靡したセクシーなプレッピー・ブランドの象徴でもあったわけだ。
しかし、真っ暗な店内に入ると、ルーズなポロシャツやカーゴパンツや下着が壁にずらっと並んでいて、細かく吟味できないし、何しろ日本人にはオーバーサイズで試着する気になれなかったのを覚えている。しかし、アバクロは世界中で人気ブランドとなり、ラルフ・ローレンほど保守的でなく、かと言ってカルバン・クラインほどはセクシーじゃない設えの服を、街のあちこちで見かけるようになる。
本ドキュメンタリーは、"アバクロ"社内であからさまに行われていた社員に対する人種差別や、創始者のスキャンダル、白人をターゲットにした商品そのものの排他性が、時代の感覚からズレていく過程を、関係者たちの証言を基に検証していく。結果、"アバクロ"とはインクルーシブが社会的なテーマになる前の時代に存在した、最後の人気ブランドだったことがよくわかる。因みに、現在の"アバクロ"はブランドイメージの再構築を目指している。
ファッションと時代の関係性がシンプルに解き明かされる社会派ドキュメンタリーである。
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