「終盤での収束が心地よい」ブラック・フォン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
終盤での収束が心地よい
公開から遅れること1か月余り、地元映画館でもやっと上映されることとなり、遅ればせながら鑑賞してきました。予備情報をあまり入れずに行ったので、まさかのホラー要素にビビりまくりましたが、サイコスリラー作品としてはなかなかおもしろかったです。
ストーリーは、ある街で連続少年誘拐事件が発生し、親友もその被害に遭ったフィニーが、自身も誘拐されてベッドと黒電話とトイレしかないような地下室に監禁される中、断線しているはずの電話が何度も鳴り、そこから聞こえるヒントを頼りに脱出を図るというもの。脱出のカギを握り、事件とも大きく関係する不思議な黒電話が、本作のタイトルとなっています。
序盤は、フィニーの人柄や周囲の人物との関係性、妹・グウェンの夢など、以降の伏線となる要素を盛り込みながら、ゆっくりと展開します。しかし、フィニーが誘拐されてからは一気に緊張感が高まり、まるで脱出ゲームのような展開と、奇抜なマスクをかぶる犯人に監視される恐怖、謎の黒電話の真相が絡んで、スクリーンから目が離せなくなります。
一方、外では妹のグウェンが、夢の暗示を頼りに必死で兄を探す様子が描かれ、残された家族の不安や焦りが伝わってきます。このお告げ的な夢や謎の黒電話など、全体的にどちらかというとオカルト的に展開し、この部分の謎が少々気になるところです。しかし、それ以上に気になったのが、脱出の成否です。そういう意味では、兄妹の必死な姿が、観客の疑問を押し切っており、二人の子役の演技力が本作を成立させているとも言えます。
また、黒電話からのヒントをもとに試みた脱出方法はことごとく失敗しますが、それらが最後に収束していく展開は悪くなかったです。と同時に、困難に直面しても諦めない、わずかな可能性にも懸ける、失敗も成功へとつながる、そして何よりそれを自身の手でやり遂げた達成感と自信など、地下室での経験がフィニーに大きな変容をもたらしたという構図もよかったです。とはいえ、地下室の様子の変化に犯人が気づかないのは、ちょっとツッコミたくなりました。
出演は、フィニー役にメイソン・テムズで、地下室でしだいに変容する少年を見事に演じていました。妹グウェン役のマデリーン・マックグロウは、兄を思って行動する姿が、クールでキュートでした。犯人役のイーサン・ホークは、本作の雰囲気を一手に背負う、ヤバさ全開の演技が秀逸でした。
突然血みどろキッズがヌッと登場するのには飛び上がりました。
この映画はスリラーホラーの雰囲気をしたファンタジーなんじゃないかと思います。犯人も時折暴力キャラだけど、どこか抜けていますしね。