「大事な台詞ばかりなのに!」映画刀剣乱舞 黎明 笹崎さんの映画レビュー(感想・評価)
大事な台詞ばかりなのに!
3回鑑賞しました。
普段は原案ゲームである刀剣乱舞ONLINEのプレイと、たまに他のメディアミックスを見ていました。
最初は新規向け映画なのか?と思っていたのですが、内容について噛み砕くほどにこれは新規の方やゲームをやっていない人が見て理解できるのか?と思うようになってきました。
大きなテーマは作品の最後やパンフレットでも言われているように、「誰にでも審神者になる可能性を秘めている」ということなのだと思うのですが(これがそもそも伝わっているのかも分かりませんが、はっきりと台詞にも出ているので伝わっていることにします)、これに加えて「歴史を守るとはどういうことなのか」「歴史に残っていない人間をはい邪魔者、と切り捨て続けることは本当に歴史を守ったことになるのか」など、審神者になるにあたって考えて欲しそうなことが色々盛り込まれていたことに気付いたのですが、主に台詞回しのせいでそれがとても分かりにくくなっていると思います。
そのせいで安っぽいストーリーに豪華なアクションがくっついた、キャラ萌え目当ての客を釣った映画のような反応が多いのがとても勿体無い……(もちろん普段刀剣乱舞を知っていても知らなくても楽しんでいる人もたくさんいますが、脚本を手放しで褒めている人はやはり少ない印象です)
なぜだか分かりませんが、後半に行くにつれて人間の台詞がどんどん分かりにくくなっていきます。少なくとも私は3回見てもまだよく分からないところがあります。
台詞として表に出る言葉に至るまでの思考が無言の間で表現されているせいなのかと思いますが、そうして出てくる台詞が悪くいえばありきたりな綺麗事によく似ているため、視聴者に「ハイハイよくあるやつね」と流されて吟味させないような造りになってしまっているのが本当に惜しい。
最後の交差点からスカイツリーでの説得シーン、あんなに尺が長かったのだからテーマ並みに伝えたかったことだと思いますので、普段の客層に求められているものに応えつつそれを描くにはどうしたらよかったのか、是非色々ブラッシュアップして次作に繋げて欲しいと思います。
歴史物はこの8年でたくさんやってきていますので、現代、未来に続く話が出てきたのが私は嬉しいです。評価興行的に厳しいかもしれませんが、この方向でまた見てみたいです。
ゲームプレイヤーとしては、今までゲーム内やメディアミックスでの審神者の描かれ方を見て、「審神者ってみんな大事そうにしてるけど本当に必要?」と思いながらプレイしていたため、本当に必要だったんだなということが描かれていた今作はとても好きです。
また、見ているといい意味で「これはどういうこと?」と考える余地がたくさん出てくるので、普段見ているメディアミックスよりもたくさん見返す作品になると思います(とはいえ答えは書いていないと思いますが……)。
あと今作は刀剣男士の設定に絡めた日常の姿がたくさん見られたのでそこも満足しています。尺が少なかった故のラッキーかもしれませんが、ストーリーのためにキャラクターが普段しなさそうな葛藤や行動を自発的にさせる、というようなことが無かったため、その点でも見ていて一番好きな刀剣男士の姿が見られる作品です。