ロストケアのレビュー・感想・評価
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正解なき時代に高齢者問題を問いかける。
松山ケンイチの静かな演技が光る『ロストケア』は、日本の高齢者問題に鋭く切り込んだ作品です。「重い」「疲れた」という言葉や、観客がつい「ふぅ…」とため息をついてしまうようなシーンが多く、鑑賞後に深い余韻が残ります。
この映画は、「何が正解で、何が不正解なのか」「幸福とは何か」「救いとは何か」といった根源的な問いを投げかけます。自分だったらどうするのか、そして身近にも起こり得る問題であるからこそ、考えさせられる作品です。価値観の違いや、物事を一人で考えるのか、複数の人と考えるのか、誰と向き合うのかによって、導き出される答えは大きく変わることを実感させられます。
認知症とは…
映画のレビューからは脱線してる?
友人に介護施設で働く介護士がいる。彼が以前言っていたのだが、「認知症って健康だけが取り柄で長生きした人間の成れの果て」らしい。真面目に仕事だけして趣味らしい趣味を持たずに定年退職した人ほどなりやすく、カタい職種の人が多いんだそうだ。
手指は第二の脳と言われるように、仕事や趣味もなくボーっと老後を過ごし、手指を動かさなくなると脳の活性も妨げる。デイサービスなどでやっている園児のお遊戯のようなことは、認知症予防に非常に簡単で効果的とのこと。自分も気をつけなきゃ、って思った。
言われてみれば、うちの両親も仕事以外にやることがなく、仕事を辞めてから坂を転げ落ちるようにボケていったっけ。
そして迷惑をかけ続ける父に「早く死んで」と願ったこともある。これはいつの日か自分に帰ってくる悲しい願いなのかも…。
現実にこの映画のようなことを実行して褒められるはずもない。だけど、端から否定することもできない。
この国は長い間病んでいる。30年以上足踏みしたままだ。高齢化、少子化、人口減少、エネルギー、食糧、領土etc…たくさんの大きな問題を抱えて右往左往している。まるでこの国自体が治療不可の認知症のようだ。
大きな声では言えないが、「PLAN75」のような世界もアリなのかも知れない。むしろ個人的にはソレを望みたい。それがこの映画を観た素直な感想だ。
とても考えさせられる作品
ヘルパーとして働いていた斯波
同僚や利用者の家族からも信頼されていた
ある時、利用者と斯波の事業所の所長が亡くなっていた
弁護士の大友は、事業所のことを調べて斯波の犯罪だと思い直接話をした
斯波は殺したのではなく、救ったのだと言って斯波なりの考え方を述べたという内容だった
個人的なことになりますが、介護にかかわっている者なのでとても考えさせられる内容だったと思います
テレビでよくみる身体的なケアももちろん大変ですが、それ以上に精神的にしんどくなることが介護にとって一番大変だとお思います
この作品は、そこの部分がとても描かれいると思いました
斯波の考え方には個人的には同意します
家族だからとかの考え方は捨てて、個人としてその人のことを考えた方がいいと思います
行政なども手を貸してもらえなく自分たちだけでなんとかしようと思ってしまうところもリアルでした
安全地帯にいる人達などほんの一握りです。経済的なことなどもあるので
みなさんつらいと思いながらなんとかやっていっているんだなと思います
キリストの言葉を使っているのに破壊神シバとは・・・ヒンドゥー教か?
綾戸智恵の刑務所に入れて欲しいという切実な願いにもショックを受けたけし、斯波の父親(柄本明)の認知症演技には驚かされた。もう彼だけでも満点クラスだったが、ストーリーの細かな味付けが足りなかったかな~と残念に思う。
裁判が始まり、死刑を求める声と死刑制度反対という両極のデモも描かれていたのに、「救われた」と感じる遺族の気持ちがそれほど描かれていないところが特に残念。自分の家族のことは自分で決めるものだし、他人には殺されたくない気持ちもわかるだけに坂井真紀の家族だけではどうしても足りないのです。
付け加えるなら、憧れの先輩が連続殺人鬼だと知り、介護センターを辞めてしまった足立由起ちゃん(加藤奈津)。いくらショックだったとはいえ、すぐにデリヘル嬢になるかなぁ・・・それも黄金律?してもらいたいのはやまやまだけど・・・
途中からは『半落ち』(2004)も思い出し、最後に同じ森山直太朗の曲で締めくくるというのもピッタリ。「殺してくれ」と願う認知症患者の気持ちも伝わってくるのですが、身内ならともかく、他人の親に対して勝手に黄金律を踏襲してしまってはダメですよね。
ただし社会派部分は伝わってくる。特に生活保護申請や「安全地帯」という斯波の言葉。結局、権力者たちは勝手に法律を悪用し、貧乏な者をさらに地獄に落としてしまう。まぁ、そこで斯波が破壊神になったわけだな・・・と勝手に解釈しました。
良くない意味で映画っぽい
いやすごく重要なテーマを扱ってると思うんです。
この国のみんなが他人事ではいられない問題というか。
とにかく人間の尊厳ってなんなんだって
「絆」は呪縛でもあるだろって話なんだけど、
いかんせん踏み込みが足りなかった印象。
良くない意味で映画っぽいとこが散見されて
終盤は演出が鼻につく感じがしちゃった。
テーマ共感。カタルシス解放しない問題が問題
内容は、10年前の原作同名の推理ミステリー小説の作品から映画化。この国の介護問題と制度の問題や尊厳死について生々しすぎる程に、其々の人々の生活に光を当てた作品。
印象的な台詞は、『僕は父を殺しました。父殺しを僕が見逃されたのは、きっとやるべき事がまだあるからだと思いました。』法廷で裁判官に向かって、シバ役の松山ケンイチが話す言葉。キラリと光る殺人鬼としての一面が短絡的に垣間見える所が面白かった。手段が目的となる穴に落ちていく様が上手く表現されていたと思います。
印象的な場面は、やはり松山ケンイチの父役の柄本明さんの感情演技でしょう。半身不随と痴呆症の入り混じった演技は、おしゃべりな所が不自然ですが一見の価値ありの怖いくらいの凄い演技です。
印象的な立場は、男女ダブル主演の演技対決。検察官の長澤まさみと殺人鬼の松山ケンイチとの家族に対する立場の違いに焦点が当てられている所です。演技対決は手に汗握る素晴らしい間合いの取り合いとなってます。残念なのは、結果2人は共感するも全体的な問題の解決になっておらず、2人の関係のみのカタルシスの解放になっている所です。2人の演技力対決に終始する物語がなんとも見易かったですが根本的な問題の解決につながらず残念でした。
全体的に介護疲れで尊厳死や生活に対して国家の許可を待てない人達の対応策がステレオタイプの様に描かれていた様に感じます。そこに自分の人生が投影されず自由に選択肢を選べない問題のみを掘り下げた短絡的な所より、もっと深く潜ってほしいと感じました。
介護職を辞めて風俗や水商売に鞍替えするのは常識的な事として認識されていますが化粧をすると全然違う顔と行動になる演技力に目を疑い感心しました。まるで別人格。
それにしても人殺しと法廷で罵られる時の松山ケンイチの唇の演技は上手かった偽善者と殺人鬼のアンビバレンツを見事なものでした。
終始、観ていて気持ちのいい話ではないので、観る人にもよりますが、夜に見る事をお勧めしたいです。昼日中に観るものではありません。気分が滅入りそうになるはずです。
何が「罪」で何が「救い」なのか。
殺人を繰り返す斯波を「狂ってる」と言い切れない。
殺人を断罪する大友を「正しい」とも言い切れない。
まさにこれが本作の「闇深さ」なのではないだろうか。
斯波は人を殺したことを「救った」と表現した。
この言葉すらも僕は完全には否定し切れない。
大友は「あなたに殺す権利などない」と言い放つ。
この言葉さえも僕は完全には同意し切れない。
「救われた」と感謝する遺族もいる。
「人殺し!」と罵倒する遺族もいる。
どちらの気持ちも分かる。だから苦しい。
安全地帯からどんな正論を言っても心には刺さらない。
大友の主張だって何ひとつ間違ってはいない。
でも彼女の言葉は正論と言うより「きれい事」に聞こえる。
それがまた苦しくてたまらないのだ。
罪とは何なのか。救いとは何なのか。
その答えに正解はないし、あったとしても1つではない。
誰もが生きて欲しいし死んで欲しくない。
でも、生きてる方が地獄な状況も確かにある。
頭では分かってる。分かっているのだ。
でも誰もが納得する答えなど、どこにもない。
このやり切れなさをどう受け止めるか。
それぞれの人生観や死生観が試される作品だろう。
ダークヒーロー
Wikiにて、「介護している家族を殺してしまいたい、一緒に死のうと考えたりしたことがある」に「はい」が20%、うち「介護に疲れ果てた時」(77%)、「将来への不安を感じた時」(40%)、に殺害・心中を考える。それをリアルに体現している社会派作品。
作中では長澤さん演じる大友検事の正義感溢れる言葉の一つ一つに気持ち悪さを感じ、松山さん演じる斯波介護士の言葉が穴に落ちてもがき苦しんでいる人を救済する普通の優しい青年に見えた。
“絆”と名を変えた“呪”。大友検事も斯波もお互いの正義をぶつけ合う、そして正解がない。原作が10年前なのに何も変わらない日本の法律や介護士不足の問題が酷すぎる。
身近な事柄なのに目を伏せていた自分をビンタしながら鑑賞した。直太朗さんのエンドロールだけに救いがあるように思えた。
考えさせられる問題作
松山ケンイチ扮する斯波宗典はケアセンター八賀に勤めており誰に対しても優しく接していた。ある日老人とケアセンター長が亡くなった。
老人介護なんて家族でも嫌になるのに死と隣り合わせで他人が面倒みるんだから大変な仕事だ。仕事を休む訳にはいかないと容疑者の斯波は言った。しかし斯波が勤めるセンターの死亡が3年で63人にも及ぶとは。それは恐ろしい話だ。
斯波の父親役の柄本明の怪演が光るね。考えさせられる問題作だったよ。
検事役に長澤まさみ。やっぱり強い女性のイメージなのかな。
多くの人に観て欲しい作品
観ていて、いつ自分の身に降りかかって来てもおかしくない、まったく他人事ではない内容に、身がつまされました。
普段考えることを無意識に避けている現実問題を突きつけられた気がしました。
松山ケンイチさん演じる男の行動は決して許される事ではないと倫理的に頭ではわかっているのですが、映画を観ていると彼の行ないを肯定したくなり、これも1つの自己犠牲による正義なんではないかと錯覚しはじめ、ともすると、ある種、ヒーロー的にも感じかねないのですが、決して、それで終わってはいけない映画であるとも感じながら観ていました。
最後に裁判傍聴席の女性が叫んだセリフが非常に重要で、
結局、他人の関係性や感情なんて、理解しきれるワケもなく、
外側から土足でそこに踏み込み、自分の価値観だけで自分の正義を振りかざすことは自己満足以外の何ものでもないことをしっかり提示していることはこの映画のキモであると感じました。
救われたなんて決して思っていない人間がいる
一方で救われたと感じる人間もいる
重要なのは松山ケンイチ演じる男の行動の是非ではなく、このような誰の身に振りかかってもおかしくない現実がすぐそばにあり、その時、あなたはどう向き合い対処しますか?問われていることだと感じました。
見応えあり
相模原のやまゆり園、横浜の大口の病院の事件が土台にあるのかな。自分自身、親の介護は本当に大変だった。怒鳴りつけてしまうこともあった。そんな身内介護ですら大変なのに介護士の方々は沢山の高齢者や家族と接し色々考えてしまうことあるよな。また経済的に困窮した家庭が救われない実状も悩める問題だな。外人やら戦争国家に金をばら撒くのではなく日本国民や介護に携わる職業の方を国は保護して欲しいとか色々考えさせられた。医療業界は根深いパイプで繋がってて優遇されてるが介護業界はまだまだだからね。日本の抱える問題を描いた作品。
日本の行先をも考えさせられる
介護、孤独死、安楽死…
自らの今後、日本の今後も考えさせられる作品。
とにかく重くて深いので観る時は注意。
柄本明の演技がすごい。
松山ケンイチの論説に心動かされる。
最近親と歳が変わらないお母さんが倒れ障害が残った。そして最近急に亡くなった。
倒れた時、友人父は書類やら何も分からず娘の友人が動き回っているのを目の当たりにした。
まだ親は健在だが、実家は遠方になる。
目を背けていたが、倒れたら?書類は?手続きは?
自分にも課題を課せられた。
こどもの人口も少なく高齢者大国になる日本。
今でも介護者不足で問題視されるのに…
ピンピンコロリと昔の人はうまく言ったように
私はピンピンコロリと逝きたい。
安楽死は認められてないが、もし認められたら
私は安楽死を選択したい。
そんなことを考えさせられてしまった。
生きるなら
心身ともに健康でいたい、だけど、ままならない現実、もはやお互いに地獄からの解放は、死によるしかないのか、、問われる、考える、松山ケンイチの眼差し、長澤まさみの葛藤、まだ現実から距離がある世代の反応など、それぞれの演技が「見たくないもの」を「魅せて」くれた。
エンドロールがあたたかく傷を癒す。。
相手の同意はありましたか?それは勝手な自己判断では? どれだけ詳細に状況を記そうとも、悲惨に「思えて」も、その本質は当人達にしか、知り得ない。関係者のその後を果たして本当に好転させた??? 心根の優しい青年を苦悩させ、歪ませてしまう、介護現場の苛酷さよ、、
⭐︎4.3 / 5.0
8月16日(金) @ AP映画(2023)
ロストケア
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「私、救われたんです」に心を抉られる🥹人間として生きる事がこんなにも苦しいのか?「絆」って言葉を深く噛み締める映画🎬
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