ロストケアのレビュー・感想・評価
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正しいか正しくないかの問題ではない
迫真につぐ迫真
いい青年は
いい人間であるとは限らない
いい職業についている人も
いい人間であるとは限らない
大事な事はどの本にも書いてない
極端な面もあるが
どれも迫真につぐ迫真
実は全てを見透かしてるのは
ケアセンターのおばさんなのかも
しれない
憧れの先輩が事件をおこして
いなくなったとしても
3ヶ月で風俗にいく見習いの子も
諦めの早い今の子を写している
のかもしれない
いい映画だ
ロストケアを肯定的に捉えてしまうが…果たしてそれで良いのか…
小説を読んでから映画を鑑賞。小説と相違点はかなりあったが、メッセージのコアの部分はしっかり残しながら、周辺エピソードを削ぎ落とした感じか。小説ではグッドウィル事件を題材にした介護業者の不正問題も物語の重要な部分を占めていたが、映画ではその話は一切なかったため、国策の間違いに対する指摘は映画ではだいぶ薄れていた。その分、ヒューマンドラマとしての印象が強くなり、介護する側とされる側にとっての「救い」としての殺人であったというところがより強調される結果になっていたように思う。
松山ケンイチと柄本明のベッドでのシーンは迫真の一言。どちらも表情を1分間以上カットを入れずに流し続ける演出で、登場人物の心の葛藤や心情の変化などをじっくりと感じながら見ることができた。
裁判のシーンを見て、「ロストケア殺人」を小説よりも批判的に表現しているのかと思った瞬間もあったが、最後のシーンを見て、原作よりも「この殺人は仕方のないもので、介護する側もされる側も幸せな結果になった」という肯定的なメッセージ性を残していたように思う。でも見終わった後、「果たしてその感想で良いのか?」と悩んだ。きっと誰かと議論してもずっと平行線をたどりそうな答えの出せない問題だと気づいた。
私は、介護する側、される側⁉️
貧しき者は介護においても救われない
演技に魅せられる
厳しい現実を突きつけられるような映画でした。 主人公がしたことは許...
フィクションの意義の一つはこういうテーマを描くこと。
介護と家族、そして切り離せない貧困。
現実を直視すると重いこのテーマを正面から描いたとても良い作品だった…。
モチーフになっている事件はあれど、フィクションだからこそできる社会的タブー(社会がなるべく目を逸らしているテーマ)への切り込み。フィクションの力と意義を感じる。
サスペンスというより、社会派ドラマ(しかもかなり骨太なやつ)と呼んだ方が良さそう。
訪問介護施設の職員による利用者(要介護者)の大量殺人。
斯波のしたことは事実だけ切り取るなら社会的に許されないことだ。
でも、彼の行動や思想といった背景を見ると斯波がただのシリアルキラーではないことがわかる。
彼がこの行動に至った経緯、この辺の積み上げや描写が本作は本当に丁寧で、だからこそ私たちは正面から斯波のしたことの是非を問うという、本作のテーマに向き合わざるを得なくなる。
本作では斯波の行動に救われた(とは作中で明言されないけど、そうと観客にそう感じ取らせる)被害者家族、斯波の行動を糾弾する被害者家族、斯波の(特に父親殺害に関する)心情、それを裁こうともがく司法、という様々な視点から問題が描かれていたのが素晴らしい。
なんというか人物に対する描き方がフラットであろうと努められていたのを感じた。
法律と社会通念の面から斯波を裁くなら彼はおそらく死刑になるのだろう。
でも斯波の人となりや彼の過去、彼の行動を見れば、彼がただの大量殺人をおこなった狂人であると、私たち観客は言えなくなる。
そして本作で斯波を裁くことに1人の人間として苦悩する大友検事と共に苦悩することになるのだ。
私がこの作品を観て改めて思ったのは、法律や司法は社会全体をスムーズに回すためのもので、それ以上でもそれ以下でもないということ。
法律は私たちが安心して暮らすために大切なものだけど(例えば殺人が許された世界では私たちはスムーズに暮らしていけない)、個人の救いにはならないこともままあるのだ。
そして「法律でそうなってるから」と思考停止し、やむをえず追い詰められている人々(セーフティネットからこぼれ落ちてしまった人々)の実情を知らず、知ろうともせず、そこで踏ん張る人たちの叫びを黙殺して、断じてしまう人間にはなりたくないな、と思う。
今は安全圏にいても、いつ私たちは同じ状況になるとも限らない。
直視するのが辛くても、自分事として社会で向き合わなければいけないのだろうなと思う。
(本作が作られた意図もそこにあるのだろう。)
演者の皆さんもとても素晴らしかったのだけど、やはり本作は終始静かで理知的な態度を崩さない斯波を演じた松山ケンイチさんが良かったし、そして斯波の父を演じた柄本明さんが圧巻だったな。
私の亡くなった祖父母も認知症で要介護だったのだけど、祖父母の様子を鮮明に思い出した。認知症で身体が自由に動かせない人間の様子をなぜあんなにリアルに演じられるのだろう…。
そして斯波がアパートで父の介護をしながら2人で暮らしているシーン、どんどん部屋が荒れ、斯波がやつれていき、でもたまに穏やかに語らう瞬間がある、あの一連のシーンは本当に胸が苦しくて苦しくて、忘れられないと思う。ずっと嗚咽をこらえながら観ていた。
斯波の父が斯波に「殺してくれ」と言うシーンなんてもう劇場なのに嗚咽がこらえきれなかった…。
本作でも描かれてたけど、認知症の方って行動や言葉で周りを傷つけることもあれば、フッと以前の優しくて理性的な姿や意識に戻る瞬間があって、だから介護してる家族は苦しいんだよね…。
思い出もあるから憎みきれない、見放せない。
そういうのもエグいくらいにリアルで、だからこそ観ていて本当に辛かった…。
観ていて本当に辛くもあるのだけど、目を逸らしてはいけないテーマを真摯に描いた良作だと思う。
強いインパクトは残った、ただ介護に苦しむ人達の唯一の解決策が殺人にも思えてしまう、それで良いのかとの疑問は残った
前田哲 監督による2023年製作(114分)の日本映画。配給:東京テアトル、日活。
原作は読んでいないが、犯人不明のミステリー作品の様であり、介護により地獄の様に苦しんでいる多くの人々が存在しているという問題に光を当てたものかと思われる。しかし、映画は、早々と犯人は分かり、松山ケンイチ演ずる斯波宗典が主張する介護する人及び介護される人、その両者を救済するための殺人、映画自体がそれをまるで理解・肯定しているとも思える様な作りとなっていて、驚いてしまった。
松山ケンイチが勤めるケア施設の介護対象者が他施設に比べとても多く亡くなっていること、更にも特定の曜日に多く死んでいることを、数学が得意な検察事務官の鈴鹿央士が発見して物語が動いていく展開は、とてもワクワクとさせられた。
また松山をとても尊敬していた新人介護士の加藤菜津は、殺人を知ってショックを受けたせいかケア施設を辞め風俗嬢になってしまう。そんなこと現実ではないだろうと思ったが、調べてみると、掛け持ち風俗嬢で最も多い職業が介護職だそうで、他人をケアという共通性からか、実は親和性が有る職業移動らしい。
長澤まさみ演ずる大友検事は、救済のための殺人を当初は全面的に否定していたが、自分が会いたがっていた父親を見捨てたまま死に至らしめた経験もあり、松山ケンイチ斯波の考えを否定しきれなくなってしまう。さらに一歩進み、共感・納得してしまった様にも見えた。何だかとても怖い映画だが、脚本の不備により、そう見えてしまったところはあるのかもしれない。
法廷では松山のことを「人殺し、父を返せ」と叫ぶ戸田菜穂の声もあったが、彼の殺人により坂井真紀演ずる母と彼女の娘は救われて、新しい恋愛相手まで見つけてしまったエピソードが強く印象に残り、叫び声が製作者たちのアリバイ的なものに思えてしまった。
松山と長澤の移りゆく表情を超クローズアップで迫る映像が特徴的で、印象に残った。確信犯で自信に満ちた松山ケンイチの表情に狂気を秘めた説得力があり、それに飲み込まれていく長澤まさみに、リアリティの様なものを感じた。
まあ、監督・脚本家をはじめ製作者たちの問題意識は強く感じた。殺人方法提示も含めて、誤解を恐れない潔い、ある意味勇気ある映画とは思った。ただ、解決の方向性は見せず、唯一の解決策が殺人であったとも解釈されかねず、その点では残念な気もした。
現実的には難しいかもしれないが、またインパクトは少し弱まるかもしれないが、介護を1人で背負い込むな、社会にSOSを発信しよう、といった別解決策のヒント提示があっても良かったのかもしれないとは感じた。
監督前田哲、原作葉真中顕、脚本龍居由佳里 、前田哲、製作鳥羽乾二郎、 太田和宏、 與田尚志 、池田篤郎 、武田真士男、エグゼクティブプロデューサー福家康孝、 新井勝晴、プロデューサー有重陽一、ラインプロデューサー鈴木嘉弘アソシエイトプロデューサー、松岡周作、 渡久地翔、撮影板倉陽子、照明緑川雅範、録音小清水建治、美術後藤レイコ、衣装荒木里江、装飾稲場裕輔、ヘアメイク本田真理子、音響統括白取貢、音響効果赤澤勇二、編集高橋幸一、音楽原摩利彦、主題歌森山直太朗、VFXスーパーバイザー佐藤正晃、助監督土岐洋介、キャスティング山下葉子、制作担当村上俊輔 、松村隆司。
出演
松山ケンイチ斯波宗典、長澤まさみ大友秀美、鈴鹿央士椎名幸太、坂井真紀羽村洋子、戸田菜穂梅田美絵、峯村リエ猪口真理子、加藤菜津足立由紀、やす春山登、岩谷健司柊誠一郎、井上肇団元晴、綾戸智恵川内タエ、梶原善沢登保志、藤田弓子大友加代、柄本明斯波正作。
介護の苦労や辛さ、切なさが伝わってきました。
弁護士の大友はあるデイサービスの死亡者が異様に多いことから、介護士の斯波(しば)が行ってきた連続殺人に行き着く。
サスペンスだけど、メインはヒューマンドラマ。
この映画では、犯人が体験してきた介護における苦悩が鮮明に描かれていて、単なる悪と糾弾することは出来ませんでした。
松山ケンイチの純粋な眼とどうにもならない絶望感、長澤まさみの強い正義感や何処か迷いがある演技がより映画を引き立てていました。
何より柄本明の要介護者の演技は痛切で、心が痛かった。。
社会には落とし穴があって、一度落ちたら這い上がれない、安全地帯から見下ろしている人には分からない。
妙に現実的な言葉に感じたし、実際日本は超高齢化に向かっていくし、自分の両親のこととかも考えてしまった。
これからどうなっていくのだろう。
全く関係ないけれど、ロケ地の諏訪湖は前に観光をして景色がとても美しかった。諏訪大社とか、鰻のひつまぶしとかで有名な所です。
見なければよかった(いい意味で)
重く切ないストーリーに、真正面から向き合う映画
良かった。けど好きじゃない。
介護問題をフィクション使って伝えたいのはなんとなくわかったし、伝わったので良かった。
だた正直好きじゃないジャンル。
もう少し謎解きがあってから、犯人がわかると良かったかもしれない。
終わりもスッキリしない。
超高齢社会の今、必見の作品です。
テーマ、物語、キャストすべてが素晴らしい。
長澤まさみさん、松山ケンイチさんは、各々「MOTHER」「デスノート」で、私にとって特別な存在になりました。
今回も、息を飲む素晴らしい演技で、まばたきするのも惜しいほど目が離せませんでした。
私は、両親をすでに見送っています。
姉弟で相談して、協力して、乗り切りました。
そして、両親に対して、さして深い情がなかったのも、奏功しました。
父は病院で、母は高齢者施設で、いたずらな延命治療なしで息を引き取りました。
私には、息子が2人います。
今の私は、大人になった彼らには、自由に自分の人生を生き、幸せになって欲しいと心の底から願っています。
彼らが自立した後は、一旦親子関係を清算して、年の離れた幼馴染兼親友のポジションで付き合っていくつもりです。
斯波は解けない呪いのように親子関係をとらえていましたが、つくり変えることは可能だと思います。
斯波は、自分を罰したくて、同じ施設で介護士をし、殺人を続けたのかなと思いました。
天外孤独の彼なら、介護士不足の今、各地を転々としながら犯行を重ねることもできたでしょう。
そうしていたら、露見しなかったかもしれません。
とても優しくて、情が深く、けれど自分自身の本心も分からない愚かな人だと感じました。
「やるべきことでも、やりたくなければ、やらなくても無責任ではないし、
やりたいことだけするのは、わがままではないのだよ。
親の人生の責任を子どもがとらなくていいし、自分のことを第一に考えて」
と、ハグして伝えたくなりました。
エンドロール、素晴らしいので、是非最後まで観て欲しいです。
制度設計は慎重に
1年半要介護の母(94歳)と生活をともにし、つい最近失った者として、果たして冷静にこの映画と向き合うことができるだろうか?と少し危惧しましたが、共感できる点共感できない点それぞれあり、意外に大丈夫でした。シリアスなテーマを扱った映画ながら、きちんとエンタメの要素もおりまぜて飽きさせない工夫があるのが功を奏しているのでしょう。(以下ネタバレありです。)
多分主人公の原体験にあったのは、「自らの死を望んだ」父の言葉を聴いたときの衝撃だったのだと思いますが、実を言うと私の母も同じような言葉を発したのは一度や二度ではありませんでした。
介護保険制度はありがたいです。訪問介護には本当に助かりました。まさにエッセンシャルワーカーです。が、会社の仕事を実家在宅で消化しながらの下の世話とか家事一切はそれなりに大変ではありましたので、「その言葉」を聞くときは「これだけ一生懸命やってあげているのに」と寂しさと一抹の悔しさ・怒りがないまぜになった気持ちでブルーになることも多かったです。(最近鑑賞した、フランソワ・オゾン監督が描いた安楽死を巡る「すべてうまくいきますように」にもそうしたシーンがあリ、大変共感しました。)
なので、純粋な主人公が「その言葉」をきっかけに、涙ながらに「その行為」に走ったことは、環境や人によっては、ありうるかもしれないなと思いました。その点が共感した点です。
しかしながら、例えば私の場合、幸いにして母からは、同時に「幸せだった」や「いつもありがとうね」の言葉があったのです。毎日お互い冗談や軽口もありました。なので、「その言葉」もそうしたものに中和されて、母との大切な最後の時間の1シーンとして、少しビターではありますが私の中の幸せな記憶の一つとして刻まれています。なのでそうした行為に繋がる余地は少なくとも私の心の中には、1ミリも発生しませんでした。多分例外はあるかもしれませんが、多くの要介護者を抱える家族も同じ気持ちなのではないだろうか。そう思いました。
斯波と比べるといろいろな意味で恵まれていたのだと思いますが、聞くところによると要介護者の安楽死願望は珍しくはないそうです。なので安易にその願望を充足させる行為を「善意として」行った斯波については、やはり共感することはできませんでした。
日本にもスイスのような安楽死立法を目指す動きがありますが、仮にそうしたものが実現するにしても制度はやはり慎重に設計すべきではないか・・・そんな風に思いました。
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