ロストケアのレビュー・感想・評価
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現代の「高瀬舟」かもしれない
もしかしたら自分の中では2023年のベストワンになるかもしれない。鬼気迫る柄本明による重度の認知症を患った老父の演技、見ていて涙が出てきた。遠い故郷に住む自分の両親も今年親父が90、お袋が85になり、だいぶ耳も遠くなってきている。幸い認知症は出ていないが、二人とも心臓に爆弾を抱えているので、かなり体にガタが来ている。家の片付けもだいぶしんどいようで、家じゅうが散らかってきている。心配だ。
21世紀に入り、日本社会は格差は開く一方。お金のあるごく一部の人は介護付き老人ホームに入れるが、そうでない大半の人は子供と一緒、もしくは一人で安アパートやぼろい家の隅っこで暮らすしかない。いつ終わるかもわからない認知症との闘い。地獄のような日々。介護するほうもされるほうも追い詰められてしまう。ああいう最悪な形で救いを求めてしまうのもわかる気がする。
ちなみに、僕の大学の二次試験の小論文、テーマは「植物状態になった患者の生命維持装置を、親族の依頼を受けて外すことについて考えるところを述べよ」だったことを思い出した。
壮絶すぎる。けど、誰もが直視しないといけない介護問題
主役の2人を見た時点でこれはみると決めていて、それ以降チラシの前情報くらいしか入れずに見に行ったので、完全にサスペンス系かなと決め込んでいたけれど、あまりにも重たく介護問題を問いかけてくるこの作品に正直心構えが足りないまま突っ込んでしまった感が否めなかった。ちょっとだけ後悔。
けど、それでもかなりいろいろ考えさせられた。
誰もが当事者になり得る介護の問題。
自分は家族に介護が必要になる経験をしたことがなかったから、今までテレビなどでヤングケアラーとか、そういう言葉を聞いて大変だなってどこか他人事にしか思ってなかった。
この映画でかなり壮絶な介護の現状を見せつけられて、正直介護が怖くなったし、まだ先かもしれないけれどいつか自分の身にも起こり得ることとして捉えざるを得なくなった。
主役の2人はもちろんだけど、それにしても柄本明さんすごすぎたな。
迷惑かけてもいいんだよ
訪問介護という仕事
話としては、骨太で悪くないと思うのですが、訪問介護という仕事を実際経験したことがある身としては、冒頭から突っ込みどころが満載でした。
まず、訪問介護は基本ひとりでやります。3人もついていくなんて、入浴介助でもあり得ません。
訪問介護は昔から有資格者でなければできませんので、ユキちゃんは少なくとも知識をもった有資格者です。
1ヶ月ならともかく、3ヶ月も経つのに新人としてついていくのは、現在の介護士、特に訪問のヘルパー不足でどんどん訪問介護事務所がなくなっていってる昨今の状態ではありえないです。
他にも、清拭の際、バスタオルを掛けて、保温と羞恥心対策するというのはテキスト通りですが、寒い季節にお湯でからだ拭いて「気持ちいいねえ」はないです。
すぐ冷えるので、お湯で拭いたらすぐに乾いたタオルで拭き上げていきます。
風邪引かせるつもりか。
介護中に家族が来て当たり前のように家事をするのもアウトです。
家に介護可能な(要するに家事ができる)家族がいる場合、訪問の介護士はサービスしてはいけないので帰ります。
映画でああいうシーンが当たり前のように描かれると、現場のヘルパーさんや事務所が、誤解したご家族に「なんでできないの?」とクレームつけられそうで心配です。
こういう訪問介護現場の描き方を見ても、「ああ、この映画は、職業としての介護士が利用者を殺す話ではなくて、介護せざるをえなかった人がやむを得ず『家族』を殺す話なのだな」と思いました。
少なくとも制作サイドはそのつもりで作ったのではないかなと。
以前あった、息子が母を殺して心中しようとして死に切れなかった事件を思い出しました。
柄本明さん、すごい演技でした。本当に麻痺のある方のようでした。
繰り返される殺人と、繰り返されるリフレクションが、裁くものと裁かれるものを反射して、彼らが実は表裏一体であることを暗示しているようでした。
愛のある介護殺人はアリということですか?
真犯人探し的なミステリーかと思ったら全然違った。ずんのやすをずっと疑ってた自分がいた。
家族愛がテーマなのかもしれないけど自分的にはこの内容ではまったく感動しない。割と泣き上戸なのですが。
でも隣の女性がボロ泣きだったので好みの問題なのかもしれない。
映画が悪いというより好みの問題で★2とします。
なかなかレビューが書けず
他人事ではない
考えさせられる素晴らしい作品。
現在、私の両親は、何事もなく生活しているが、いつ映画のように認知症を患うか分からない。
そうしたときに、両親が自分の事やその他の事を忘れてただ「生きている」のではなく薬や医療などによって「生かされている」だけなのだとしたら楽にしてあげたいと思うし、自分自身が認知症になり何も出来ないのに家族や愛する人を忘れて生かされるのなら死を選ぶと思う。
また、本編でもあったように、家族の絆や責任感で自分の人生を両親の介護によって歩めなくなるのは、本末転倒であると思うし、両親はそれを望んでないと思う。
ただ現代日本では、いかなる理由があろうとも個人が人を殺めることは「悪」(国が法によって人を殺めるのは正義)である為、難しい問題点だと感じた。
深い問題
本当に考えさせられる。
自分の周りに、今は、
このような問題に直面してる人がいないのだが、
それは今だけであって、
これから自分にも降りかかる問題だと思うと、
本当に深い問題だと感じた。
松山ケンイチと同じことが起きたら
同じように考えてしまうと思う。
答えはないが、考えないといけないことを教えてくれた。
演出、脚本、俳優全て非常に良かった。 犯罪はダメだけど、非常に難し...
介護は他人に任せましょう
心が壊れていく
介護士斯波を松山ケンイチさんが、検事を長澤まさみさんが熱演。
斯波の深い悲しみをたたえた瞳、日々疲弊していく心、溢れた涙で歪む顔…、検事として対峙し、一人の人間としてガラス越しに涙を浮かべ語る…。松山ケンイチさん、長澤まさみさんの熱演に息を呑む。
これからの日本の映画界を牽引されるであろう主演お二人の演技に引き込まれた。斯波の父を演じた柄本明さん、峯村リエさん、戸田菜穂さん、他キャストの皆さんの演技も素晴らしい。
超高齢化社会が抱える悲しみが余りにも切ない。
映画館での鑑賞
法定での一言に救われた
この映画は、早朝の民家で老人と訪問介護センターの所長の死体が発見された事件をめぐる物語です。疑われるのは、献身的な介護士として知られる斯波宗典(松山ケンイチ)。検事の大友秀美(長澤まさみ)は、斯波が働く訪問介護センターでの老人の死亡率が異常に高いことに着目し、彼と対峙します。斯波は自分の行為を「救い」と主張するが、大友は真実を明らかにするために奮闘します。
観終わった後、松山ケンイチの演技力に感銘を受けました。特に最後の発言で、彼が法定で主張する「救い」に引き込まれ、納得しかかっていた自分がいました。しかし、法廷で遺族から「人殺し!」と叫ばれた瞬間、自分が救われた気持ちになりました。彼の演技が、観客の心に揺さぶりをかけることができる力を持っていると感じました。
この映画は、現代日本の高齢化社会の問題を描いており、観る者に深い考えを促します。社会のセーフティネットにかからない人たちの存在や、介護家族の厳しい現実を知ることができました。これにより、私たちが今後どのように高齢化社会に対処していくべきか、より具体的に考えるきっかけとなりました。
さらに、この映画は自分自身の親の介護が近づいていることを改めて感じさせてくれました。家族を介護する際の心情や責任、そして選択の難しさがリアルに描かれており、心に響く作品でした。
総じて、この映画は現代社会の問題を浮き彫りにし、観る者の心に訴えかける力がある作品だと感じました。演技やストーリーの面でも見ごたえがあり、そろそろ介護を迎える現役世代にオススメできる作品です。観終わった後、介護や高齢化社会について真剣に考え、自分自身や家族の将来についても見つめ直すきっかけを与えてくれました。家族や友人と一緒に観ることで、映画の内容について話し合いながら、より深く理解し合えることでしょう。
この映画はまた、高齢者への理解や支援が必要だけでなく、介護家族の苦労や犠牲も見逃してはならないというメッセージを伝えています。介護を担う家族が、心身ともに疲弊している場合も少なくありません。社会全体が、介護家族に寄り添い、支えることの大切さを再認識する機会となるでしょう。
また、映画の中で描かれる検事・大友秀美(長澤まさみ)のキャラクターも印象的です。彼女が被害者の家族を調査する中で、法の正義と斯波の信念に直面し、葛藤する様子が繊細に描かれています。このことからも、映画は単純な善悪の対立ではなく、人間の複雑さや多様性を浮かび上がらせる力がある作品だと言えます。
最後に、映画は観客に高齢化社会に対する課題や解決策について考える機会を提供し、私たち自身が何ができるのか、どのように社会に貢献できるのかを問いかけてくれます。今後もこのような問題提起がある作品が多く作られることを願いつつ、私たち一人ひとりが映画のメッセージを胸に、高齢化社会の問題解決に向けて歩んでいくことが求められます。
社会に影響を与えてほしい映画
自分がして欲しいことを人にしてあげる
つらいリアルな描写が多く、多くの人が直面するであろう事柄でありながら、目を背けがちな場面も真正面から捉えていると思いました。
長澤まさみさん演じる検事の大友に感情移入していましたが、殺人犯の斯波にも感情移入できてしまうのが、みていてつらいし考えさせられるな、と思います。
「自分がしてほしいことを、人にしてあげなさい」って言葉がこんなにも重く感じるとは思いませんでした。
松山ケンイチさんも長澤まさみさんもよかったですが、圧巻なのは柄本明さんでした。すごくリアル。
席に着くのが本編直前になってしまったんですが、最初から見れていて本当によかったです。冒頭見逃しそうな人は次の上映時間を待ってみた方がいいと思います。
斯波のことを慕っていた新人の女の子の最後の描写が私的にはいらないかなあっと思いました。
たまたま穴には落ちなかったけど
この社会には穴が空いている。その穴に落ちた人間はそこから這い上がることはできない。その通りだと思う。穴に落ちるのは、その人間のせいなのか?いや、誰もが一つ間違えばその穴に落ちてしまう。僕はそう思っている。僕は何とかその穴に落ちずに父の最期を看とることができた。ぎりぎりだった。斯波を裁くことなんてできない。斯波を裁くことのできる人などいるのだろうか。そんな思いでこの映画を観た。
斯波が父にニコチンの注射をうち、今際の際の父を抱き締めたとき、折り紙に書かれた父の感謝の言葉を見たとき、涙腺大決壊。父の最期を思い出した。僕は斯波になっていた。そして、そう遠くない未来に自分の番がやってくる。
医療従事者という人のレビューで、この設定、状況は少し古いというのを見つけました。僕が父を看取ったのは12年前、原作が10年前。この社会のこの状況は少しは好転しているのだろうか。
考えさせられる映画ではあるが
社会問題であり、とても関心のある内容ではあるが、映画の感想としては、壮絶な介護に苦しむ家族と、その苦しみから解放するために事件を起こす介護士という観る前からわかっていた内容だった。
その後どんな展開になるのか、どんな判決が下されるのかが気になって映画を観たのに、その前に終わってしまった感がある。介護疲れによる事件の報道が珍しくないから、新鮮味が感じられないのだと思う。映画化の時期が遅かったのかもしれない。
柄本明をはじめ、出演者の演技力が素晴らしかった。
坂井真紀のように、自分の人生を歩めるようになった人。
戸田菜穂のように、介護に苦しんではいたが、返せと叫ぶ人。どちらの側面も描かれているし、それぞれに両方の感情があるのだと思う。
現実的なところでは、
将来自分がどうなるのかも予想がつかないので、家族に迷惑をかけないために、貯金をしっかりしておかなければと思った。
ちょっと古い
老若男女問わず観てもらいたい映画
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