「絆は呪縛。」ロストケア リボンさんの映画レビュー(感想・評価)
絆は呪縛。
またもや柄本明さんの迫真の演技が光る作品でした。
ある男、シャイロック。。どこにでも出演されているけれど、毎回違う人物なのに本当にいそうな人達ばかり。そして、
今回の役どころ、脳梗塞に倒れ、片手が動かしづらくなり骨折で寝たきりになって認知の進んだ高齢のおじいさんを見事に演じられていました。
話もだんだん上手くできなくなる老人、だけど映画だから本当に聞き取れなくては映画にならないから、観客が聞き取れるギリギリのセリフ回しで話していて見事でした。
祖父もそうでしたが、やはり加齢などにより手がうまく動かせなくなり、細かい作業などがおぼつかなくなると、若い頃の上手く色んな作業が出来ていた頃の自分を思い出してやるせなくて高齢者はかんしゃくを起こしてしまいがち。。だけど見守る家族にはその手などを治してあげることも出来ないので、何もしてあげられないもどかしさと、高齢の親や祖父母の苛立ちを感じて周りの家族も苦しい。
そんな家族のやるせなさを、柄本明さんと松山ケンイチさんが見事に演じていました。
最後に父親を手にかける主人公の場面で、松山ケンイチさんが泣いていても涙の量はあまり多くなく、代わりに喉の辺りが激しく震え、本当に嗚咽にあえいでいる人物になっており、喉の動きだけで主人公の全ての悲しみを表現していた松山さんの演技力もやはり凄い、と圧倒されました。
そして「絆は呪縛」という言葉が深く胸に沁みました。。
絆は普段なら喜びを感じるものだけれど、場合によってはそのために苦しみや耐え難い苦痛を伴うこともある。
絆を断ち切ることが場合によっては救いになることもある、というのは腑に落ちました。勿論断ち切ってほしくない人にとっては主人公は悪なんでしょうけど。。
悪には思わない、救われたと思う遺族もいて、とても難しい問題でした。