劇場公開日 2023年3月24日

「原作既読勢として設定改変にはモニョりますが柄本明氏が素晴らしかったので、それで」ロストケア BONNAさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0原作既読勢として設定改変にはモニョりますが柄本明氏が素晴らしかったので、それで

2023年3月24日
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鑑賞方法:映画館

原作既読勢。
いろいろ物申したいことはありますが、まずは良い点から申し上げますと……

柄本明氏の起用ですね。

もうこれに関してはでかした素晴らしいよくぞこの逸材をこの役に当てたとしか言いようがございません。原作でも例の場面は大泣きしましたが、柄本父の演技が上乗せされたおかげで倍泣きしましたね。ええ、この映画は柄本父にチケット代を注ぎ込む作品と申し上げても過言ではございません。松ケン面白い髭の生え方してんなとか作品に関係ないこと思ったりしましたが、それでもあの場面は松ケン斯波の気持ちにシンクロしますね。いや泣くわあんなん。

さて、個人的に微妙だった点です。
いやごめんなさい。本当にこの作品で褒めるところ柄本氏の起用しかなかった。いえ、無論個々の役者さんは大好きです。はい。

①大友の設定について
原作の大友は男性です。
これに関しては作者の葉真中さんから「今の時代に即した設定」とのお言葉もありました。原作者了承の上の改変、ということですね。
個人的に私も女性にしたことについては、特に問題は無かったと思っています。
問題がその親の設定ですね。
原作では大友の父親を富裕層の有料老人ホームに入れています。そして父親はかなり成功した貿易商でした。
……で、なんでここを変えたのか。
父で良いじゃん、ではなく。今回の映画では《夫と離婚して保険外交員をしていた母》になっていたんですよね。
なんでそこ変えたんだろ。
あと、クリスチャン設定も「母まで」ですね。原作では《父の代からクリスチャン》です。
この設定改変が割とデカくて、要するに大友が斯波の存在を気にするか否かがこの辺由来だったりする。
なお、大友が父をホームに入れた時の葛藤も大幅カット、どころかほぼ無くなってましたね。

②介護保険法について
原作では作者さん何者ですかと思うほど徹底的に掘り下げて解説されていました。
……で、なんかここまで清々しく何も触れないとは思ってもみなかったです。この辺が劇中のいろんな方の行動の理由づけにもなったりするのですが。

③対話シーンの多さについて
正直、予告編で既に不安はありました。
で、見事に不安的中しました。
予算が足りなかったのでしょうか。本来であれば登場人物の動きで解説されるべき場面が、大河ドラマのナレ死並のスピードでセリフで処理されるというある意味超展開ですね。
すみません、これでも言葉選んでフォローしてるつもりです。でも実際そうなんだもん。仕方ないじゃん。
なんか登場人物が脈絡なく突然自分の過去のことを話し始め、周りもそれを気持ち悪がらずに受け入れるというパターンが非常に多かったです。

④ジャンルについて
原作は社会派ドラマです。
この映画は2時間サスペンスになりきれなかった人間ドラマです。
ぶっちゃけ途中で登場人物達が種明かしを始めた時点で、この後、名取裕子氏でも出てくるのかなと思いました。

結論。
柄本明氏の名演技は是非観てほしい。
ただ、原作既読勢の方はあくまで別物としてお楽しみいただきたい。
ただ、未読の方がこの作品を見て全体像が理解出来るかと言えば、ちょっとわからんなという感じはありました。

BONNA
クリストフさんのコメント
2023年3月30日

原作に興味湧きました。
ありがとうございます。

クリストフ
Hiroki Abeさんのコメント
2023年3月29日

原作既読の方のレビュー、大変興味深かったです。原作未読としても映画として惜しいなと思いながらも、それを超えてくる俳優陣の芝居も撮影にグッときました。原作も読んでみたいと思います。

Hiroki Abe
Bacchusさんのコメント
2023年3月25日

コメントありがとうございます。

原作通りにとは行かないのは仕方ないとしても、そこは押さえて欲しいとか、もう少し上手く表現出来なかったかとか、感じるものが多いと辛いですよね。

柄本明さんはホントおみごとでした。

Bacchus
いぱねまさんのコメント
2023年3月25日

失礼します
当方、原作未読なので大変参考になりました ネットで原作の粗筋も読みましたが、原作はサスペンス色と法律知識が色濃い作風なのですね
その他、色々と改編部分があるようで、その辺りの考察が今作の核心なのかなと感じました この手の不条理・理不尽がテーマ性に混ざる作品は、物語としての決着は示されても、その根本が解決できていないやるせなさを観客に突きつけますから、心が沈んでしまい気力が萎えてしまいます だから映画は凄いと思うのです 冷や水を浴びせるのも映画の意義なのかなと・・・

とりとめのない駄文、お時間失礼しました

いぱねま