劇場公開日 2023年3月24日

「綺麗事にできない介護の辛さ。」ロストケア Boncompagno da Tacaocaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5綺麗事にできない介護の辛さ。

2023年3月24日
iPhoneアプリから投稿

介護の辛さは経験してみないと分からない。特に認知症が出るとコミュニケーションもままならなくなり、映画のように、私も思わず親でも手を上げたくなるときもあった。だからといって殺してはいけないと言うのは、その通りだが、実際に親を殺さずとも、自分が自殺した人もいるのだ。決して綺麗事にできないことをうまくストーリーにしている。
介護未体験の人には分かりにくいと思うが、認知症は記憶がすべて一度に失われるわけでなく、柄本明が演じた父親のように、まだらになるので、クリアに覚えていることも、理屈通りに話せるときもあったりする。だからといって、普段の苦労がそれで償われるかというと、それほど現実は甘くない。
私も親を施設に入れたとき、そして親が死んだときは、正直なところ、解放感があった。後から悲しくなることもあるが、それまでにとっくに涙も尽きている感じなのだ。だから、この犯人を単純に許せないと語ってほしくない。救われたという家族がいてもおかしくはない。それほど過酷なことなのだ。
長澤まさみも松山ケンイチも力演していて、さすがだと思った。綾戸智恵さんのお婆さん役もよかった。

Boncompagno da Tacaoca