劇場公開日 2022年10月21日

「映画史を塗り替える娯楽活劇」RRR moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5映画史を塗り替える娯楽活劇

2023年2月2日
PCから投稿

「インド映画=(笑)」と楽しむような時代は終わった。いや、この映画にももちろん笑えるところはある。が、その笑いというのはゆるいB級映画をひやかしたり、嘲笑するような、すかした笑いではない。本当にすごいものを見た時に思わず笑ってしまう、そういう笑いが出てしまう映画なのだ。

正直言ってこの作品に娯楽性において、どれだけの日本映画が、いやハリウッドも含めた現代の映画が勝てているだろうか。現代の映画が脚本に社会性のあるメッセージをいかに織り込むか、ストーリーの整合性を保つかなんて事に熱心になっている間に、80年代のルーカスやスピルバーグの冒険映画、ジャッキーチェンのカンフー映画、90年代の大作アクション映画のような「活劇」のパワーを映画は失ってしまっているように思う。それを思い出させてくれた映画が、マッドマックス・フューリーロードであり、トップガン・マーヴェリックだったと思うが、完成度はともかく、瞬間最大風速においてはそれらの映画さえ凌駕する瞬間がこの映画にはある。その問答無用の「活劇力」で日常から私たちを解放し、ぶち上げてくれるのだ。

音楽とビートの迫力、洗練されたカメラワーク、熱い友情とインド独立の物語と俳優の演技、CGを巧みに融合したアクションのスケール。今のトム・クルーズにも感じる事なのだが、結局そのすべてが、観客を心の底から楽しませるためにある。その事に心から感動した。

この監督が将来この映画を超える世界的な娯楽映画の金字塔のような作品を撮ってしまう予感さえした。更に言うなら、インドという国が今後アジアの中心になっていく力強さをも、この作品から感じた。映画史が塗り替わるその瞬間を劇場で目撃出来て本当に良かったと思う。

moviebuff