劇場公開日 2022年10月21日

「模範的エンターテイメント作品」RRR pipiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0模範的エンターテイメント作品

2023年1月22日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

知的

エンターテイメント作品として大変秀逸であり、良く出来ていると思います。
ストーリーがしっかり練られているし、伏線が少しずつ回収されていくタイミングも良い。アクションも痛快。
特筆すべきは「観客の感情を動かす演出の巧みさ」ですね。

マサラムービーとはカレーのガラムマサラ(複数のスパイスを調合したもの)のようにナヴァ・ラサ(9つの情感)と呼ばれる、勇猛さ・スリル・笑い・哀れ・色気・驚き・憎悪・怒り・平安を1本の映画に意図的に詰め込んである作りです。初めてマサラムービーに触れると、この「盛り沢山」の部分がまずは衝撃的なのかもしれませんね。
また、往年のスペクタクル映画を彷彿とさせる絢爛豪華な画面作りも人海戦術を投入出来るインドならではと感じます。

ただ、個人的にはリピートしたいとまでは思わなかったかな。
それは作品のせいではなく、私自身がこういったジャンルは卒業しかけているだけのことでしょう。(娯楽映画としては秀逸だけど、心に残るものが何もなかったんです。監督もきっとそれはわかっていて、敢えてこういう作品にしたのだろうという気がします。)

私が10〜20代だったならば非常に印象深い作品の一つとなったのは間違いありません。少年誌・青年誌の漫画や小説を読んでいる気分でした。
CGの多用は苦手なのですが今の時代はもうこれが普通ですし、もはや実写・特撮・アニメ・CGの境目はあまり存在しなくなってきているのかもしれませんね。だからこそ、俳優達が実際に行っているアクション・殺陣・ダンス等には感銘を受けるのですが。

本作を高評価せねば、marvelも007もワンピースもるろ剣ももっと点数を下げねばなりませんから星5をつけるか非常に迷いましたが、自分がリピしたいとは思わないのですから少しだけ引きました。
まぁ、4〜5年に1回くらいなら観てもいいかな。

マサラムービーを初めて観たのは大多数の日本人同様ムトゥなのですが、本作はついにムトゥを超えてきましたね。
一度観たらそのアクの強さが癖になってしまうマサラムービー。東南アジア方面に行くとTVで流れている事も多かったのでなんとなく観てましたが(あと日本国内のインド&ネパール料理屋でとか)
ムトゥほど面白くはなく「やっぱり踊るんだなー」と思った程度。

けれども本作はダンスも歌も必要最小限に絞り込み、かつ、非常に効果的に扱っているため「最初っから『世界を獲る事』を狙って作っているんだろうなぁ」と思いました。実際に世界的大ヒットのようですし、本作で初めてインド映画に触れるという新規鑑賞者も大量に取り込んだ事でしょう。

マサラムービーはインドの伝統芸能のみならず、ハリウッドミュージカルや70年代のニューシネマや香港アクション映画の影響を多分に受けて形成&醸成されていますからエンタメの総合商社なのは当たり前かもしれません。昨今はここにジャパニメーションやMANGAの影響も加わっているんじゃないかな?などと愚考致します。
アメリカンニューシネマに見られるような支配への抵抗や政治、歴史、平和、生き様、人生哲学など「ナヴァ・ラサ」を生み出す為の背景が複雑な味わいになるのは当然ですね。
(でも、やっぱり主人公が堂々と歩くシーンだとか細かい感情描写の表現はムトゥとおんなじなんだなーと思ったり。インド流のお約束なのかもしれませんね。)

徹底した勧善懲悪で、悪人は倒れ善人は幸せになる展開も安心して鑑賞出来ます。
(◯◯◯の◯◯が生きていたのは驚いたけれど本当に良かった!)

ヒンドゥー教の厳格な戒律の為に他の娯楽が制限されがちですから許される映画が大衆娯楽として凄まじく発達したインド。他の国々の「映画好き」とは根底の事情からして違います。
色気の露骨表現などにも規制や嫌悪感情が複雑ですからそういう部分の感情をダンスに託す表現も発達しました。
しかし、そんな映画大国インドにおいてもラージャマウリ監督は実に名監督、名脚本家。大した映画職人ですね。感服しました。
バーフバリは未鑑賞でしたので観てみようと思います。

pipi
琥珀糖さんのコメント
2023年7月6日

コメントありがとうございます。共感ありがとうございます。

宝塚でもう演目になり上演されるんですか。
スピードですね。
札幌なので、流行から取り残されております。
(でも反田恭平は先日聴きました)

琥珀糖
masamiさんのコメント
2023年1月29日

pi pi様コメントありがとうございます。
凄い博識で御見逸れ致しました。
それから私のレビューの昭和歌謡ネタまで・・・
マサラムービーの話しは勉強になりました。
アカデミー賞は歌曲賞のノミネートになりましたが取れればいいな。あと・・・NOBU様のコメントが熱い!

masami
Mさんのコメント
2023年1月27日

「RRR」は私にとっては、とてもインパクトのある作品でした。
何度か見るうちに、ますます好きになりました。

M
NOBUさんのコメント
2023年1月24日

今晩は。
 インド映画は、今でも現地ではマサラムービーが主流ですが、(バンガロールで観た際にはそんな感じでした。)日本で上映された映画だと「マダム・イン・ニューヨーク」(この作品は、公開予定ではなかったそうですが、この作品に惚れ込んだ日本人の方が配給権を買い取り大ヒットした作品だそうです。実際、とても面白い。)や「めぐり合わせのお弁当」(インドのお弁当配達システムにビックリ、且つとても面白い。)やインドの階級を越えた男女愛を描いた「あなたの名前を呼べたなら」や「ホテル・ムンバイ」(個人的には悲しい思い出があるので、お勧めしません)など、インド映画の新たなる流れ(若い監督が多いです。ラップを取り入れた「ガリー・ボーイ」とかね。)
 けれど、インド内では、矢張りスーパー・スター、ラジニカーント作品を筆頭にしたマサラムービーが主流みたいです。
 故に、マサラムービーの今作に、歴史的な突っ込みを入れると個人的には、面白さが軽減する気がします。(スイマセン)
 あとね、アーミル・カーン主演作はどれも抜群に面白いし、”S・S・ラージャマウリ監督の、「マガディーラ 勇者転生」から始まる”バーフバリシリーズ”は鉄板で面白いですよ。
 オイラの居住区にある映画館でバーフバリシリーズを爆音で掛けてくれたことが有り、タミル語バージョンとテミル語バージョンを総て観て夜中に帰って来て、家人に怒られたなあ・・。
 折角pipiさんにコメントを頂いたので、張り切って書いてしまいましたが、オイラこうして過去を振り返るとインド映画が好きなんだな、と思ってしまいました。
 他にもね、面白い映画が多数あります。「パッドマン 5億人の女性を救った男」「Lion/50年目のただいま」「バルフィ!人生に唄えば」・・。マダマダ有るなあ。
 今は配信で幾らでも観れると思いますので、体調を鑑みつつお好きな作品を鑑賞されたら良いかと思います。
 これからも宜しくお願いいたします。
 くれぐれも、御身体ご自愛下さいね。
 では。返信は不要です。(明日、雪降るのでこの辺で。)

NOBU
じゃいさんのコメント
2023年1月24日

コメントありがとうございました!(僕のところでお返事したほうがいいのかな? よくわかってなくてすみません……)
マサラムービーって、インドだからマサラってわけじゃないんですね!
「カレーをつくる感覚と方法論」をきわめて自覚的に映画に導入して作ってるからこそ、インドの映画はあれだけスパイシーでサーヴィス精神旺盛なんだと、眼から鱗でした。やっぱり国々の「映画のテイスト」と「食のテイスト」って、どこか通底するものがありますね。

じゃい
ゆり。さんのコメント
2023年1月23日

pipiさんコメントありがとうございました。私はインド映画はまだ2作目です。「ムトゥ 踊るマハラジャ」はテレビで紹介していたのを見て、男女が見つめ合ったところでダンサーが大勢出てきて踊る、それがラブシーンを意味している、というのに感心しましたが、その時は観ようと思いませんでした。男性が小太りのおっさんでしたし。初めて見たのが「the lunchbox」で、踊り無しの素敵な恋愛映画で驚きました。本作は王道のインド映画の集大成になるんでしょうね。
○○さんが生きていてびっくり、騙されました。

ゆり。
レントさんのコメント
2023年1月23日

相変わらずの博識っぷりに頭が下がります。pipiさんみたいなサブカルにも精通している方が先生だったら授業もきっと楽しいでしょうね。

ちなみに他の方が本作をボリウッド映画と言ってますが、正確にはトリウッド映画らしいですね。インド南部のテルグ語、タミル語地域のTとハリウッドを掛け合わせてトリウッドというらしいです。あとコリウッドとかもあるらしいです。ややこしいですね。
日本人にはさっぱりですが、今後インド映画がもっと日本に入って来れば
そういったことも知られてゆくのでしょう。

あと、聖闘士星矢のハリウッド版が今から楽しみです。

レント
bionさんのコメント
2023年1月23日

あの合体アクションはすごいですよね。マンガの実写版は、インドに発注してほしいです。

bion
レントさんのコメント
2023年1月23日

ご覧になられたのですね。実は私はインド映画はほぼ初鑑賞でした。それが本作とは不幸かもしれないです。今後個人的に本作を超えられる作品が出てくるかどうか。
私もマーベル作品などの単純明快な作品はあまり好んで観ないのですが本作ははまってしまいました。恐らくリピートすると思います(笑)。
「非常宣言」はお勧めです。ただバイアスのかかった方には酷評されてますが。

レント