「大傑作! 「大義」と「スター性」と「身体性」のすべてを備えたヒーロー&バディ・ムーヴィーの最高峰!」RRR じゃいさんの映画レビュー(感想・評価)
大傑作! 「大義」と「スター性」と「身体性」のすべてを備えたヒーロー&バディ・ムーヴィーの最高峰!
圧巻の三時間。
断言していい。娯楽映画としては、今年どころか、21世紀を代表する大傑作。
って、たぶん観た人間の大半は同じこと思うよね(笑)。
まだ映画館で公開しているうちに観に行けて、本当によかった。
唯一文句があるとすれば、インド公開時にあった「インターバル」を、日本の映画館(というかチネチッタ)では、なんで取ってくれないんだ??? バカなんじゃないの???
面白すぎておしっこちびるぜ、とかよく言うけど、
ふつうにお洩らししちゃいそうだったじゃないか……(笑)。
まあ、なんていうか、千葉ちゃんがハリウッドまで渡ってずっと撮りたいって夢見てた映画って、こういう映画だったのかもしれないなあ、ってちょっと感慨にふけってしまった。
きっとそう思ったのは、ラーマのほうのオッサンの目元が、ちょっと若い頃の千葉ちゃんとか、今の真剣佑を思わせるからかも。
でもハリウッドですら、こういう超王道のクッソ面白い究極エンタメ映画みたいなのって、ありそうでなかなかないもんね。
少なくとも、アメリカ人がアホなピッチリスーツとマント着けさせたスター俳優揃えて作ってる、くだらないアメコミ映画の100倍は面白かったわ。
しょうじき、この映画についてはあまり語ることがない。
ただただ、ひたすら面白い。
裏も表もなく、ほぼエンタメとしては完璧な映画。
両雄が、最初は友情を培い、中盤は相克し、終盤は共闘する。
話はそれだけだが、もうそれだけで十二分におつりがくる。
大満足。こんな楽しい映画はめったにない。
お話の祖型としては、当然さまざまな「バディ・ムーヴィー」「潜入捜査もの」「親友対決もの」の名作からインスピレーションを得ているはずだ。『フェイス/オフ』、『インファナル・アフェア』、『ヒート』、『フェイク』……あと、古い「男の友情」映画で、『明日に向って撃て!』とか『冒険者たち』とか(ヒロイン不在だけど)。独立戦争映画のジャンルも見逃せない。『夕陽のギャングたち』とか。
でも、それらすべては本作のなかで分かちがたく混淆し、新たなる「王道」として再生している。
これが新たに生まれた、バディ・ムーヴィーの最高水準といってもかまわない。
インド映画である、ということ自体が、ある種の「言い訳」として機能している点はあるかもしれない(最初ボリウッドと書こうとしたが、タミル語映画だから、ヒンディー語圏のボリウッドとは違うんだな)。
多少おバカでも、突然踊っても、すべてがやりすぎでも、なんでも許されるのがインド映画。
若干CGがチープでも、イギリス人の描き方がひどくても、人の死に方がゴミのようでも、まるで気にならないのがインド映画。
でも、それはボリウッドおよびインドの映画界が、長い映画製作の歴史を通して築いてきた「特権」でもある。
インドでしか作れない最強の娯楽映画。大いにその登場を祝福したい。
内容的には中国人のつくってる日本鬼子(リーベングイズ)映画と変わらないじゃないか、という意見もありそうだが、英雄が圧倒的な国家権力に立ち向かうのは、むしろ正しい姿なのであって、独立運動は究極的にまっとうな題材選択だ。日本のなんとか侍とか、アメリカの特殊部隊上がりのスーパーヒーローみたいに、国家の犬が英雄ぶってるほうがきっとおかしいのだ。
お話も、一見荒唐無稽に見えながらも、実は脚本にほとんど隙がない。
全ての要素が過不足なく結びつき、大団円に向けて緊密に構築されている。
アクションに関しても、映画10本分のアイディアが、惜しみなく投下されている。
冒頭の狼&虎狩りが、まさか終盤でああいう使われ方するとか、まず気づかないよなあ……。
スーパーヒーローものとしての「説得力」においても、おそらくならハリウッドに勝る。
アメリカのヒーローものは、『ランボー』や『ダイ・ハード』の「生身の不死身ヒーロー」の時代から、より説得力のある「超人性」の根拠を求めて、子供向けアメコミを大人用に捻じ曲げて量産しだしたことで、ある種の「歪み」を抱えることになった。
まず第一に、子供向けの外観とシリアスな内容のズレ。
それから、世界を守るヒーローであることの大義の不在と苦悩。
それは、まさしくアメリカが「世界の警察」の立場から失墜した時期と呼応している。
現実に生きるアメリカン・ヒーローに夢を仮託できなくなったから、米映画界はアメコミの特撮世界に「逃げた」のだ。
ところが、『RRR』の英雄ラーマとビームは、土臭いまでの「生身の英雄」だ。
(なにせふたりとも実在の革命家だから。史実では会ったことはないらしいが)
昭和に回帰したかのような、ブルース・リーや千葉ちゃんタイプの肉体派ヒーロー。
ふたりの能力はおよそ常人離れしているが、そこに「説得力」を持たせるのが、「大義」と「神降ろし」の要素だ。
「独立運動」。これほどの明確な大義はない。
人は「大義」のためなら、人を超えられる。
そして、彼らの人を超える意志に呼応して、インドの神々がその身に宿るのだ。
冒頭から対比されていた、「炎」と「水」の要素が、『ターフバリ』から続く英雄神話に結びついたときは、こちらも胸の高まりが抑えられなかった。
もうひとつの「説得力」は、主役ふたりの驚異的な身体能力だ。
もちろん、ワイヤーもSFXも使っているだろうし、早回しも使っているだろう。
でも、肉体からあふれる生気とみなぎるパワーは、ガチもんの本物だ。
誰よりもタフで強い! 動ける! 踊れる! 演技ができる!
これがラジニカーントの昔から変わらない、インドにおける「スターの条件」。
(その切磋琢磨とふるい分けの「視覚化」こそが、インド映画名物のナートゥ・ダンスバトルなのだ。)
「本物のアクションスター」を起用しているから、当然「説得力」も勝手についてくる、というわけだ。
まあ、ふたりともバリバリの二世俳優であるところに、カーストの国の余韻は感じないでもないが(笑)。そりゃ血統で人を判断してはいけないが、血統が良いのはふつうに誇っていいことだ。だろ? 真剣佑。
もともと『RRR』というのは、ラージャマウリ監督と主演のラーム・チャラン、NTR Jr.(Rはラーマ)の三つのRからとった仮題がそのまま正題になったらしい。
要するに、これは企画ありき、原作ありきの映画ではない。
とにかく、監督ありき、スターありきの映画なのだ。
「二大スターがメガヒット監督のもとで相まみえる」。
なんて昭和な、なんて郷愁をそそるフレーズだろう。
こういうのが、映画だ。
こういうのが、映画なのだ。
お返事ありがとうございます♪
(私のレビューコメントに書いて下さいましたから赤ポチ表示で気付く事が出来るのでバッチリです^ ^
ご自身のコメ欄ですと、せっかく書いて下さっても気付かない時があって申し訳ないのです。)
「映画のテイスト」と「食のテイスト」なるほど〜!
大味になりがちなアメリカ、自分の好きなものをひたすら美しく盛り付けたいフランス(笑)
じゃいさんのお返事で、更に新たな観点が開けました〜♪
また共感作品が重なった時にはお伺い致しますね。今後とも宜しくお願い致します^ ^
1つ1つ頷きながら拝読させて頂きました。
同様に感じておりましたことを見事に言語化されていて感服です。
とりわけ
〉子供向けアメコミを大人用に捻じ曲げて量産しだしたことで、ある種の「歪み」を抱える
〉「二大スターがメガヒット監督のもとで相まみえる」
の2文は白眉かと。本作(と捻じ曲げアメコミワールド)の本質をズバリと端的に突いておられますね。
優れたレビューを読ませて頂きありがとうございました^ ^