「最後のセリフの重みを噛み締めたい。」RRR 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
最後のセリフの重みを噛み締めたい。
三時間がかりの怒涛のエンタメの最後に、ラーマに何がほしいと聞かれてビームが答える。「読み書きを」と。
インドの歴史に詳しいわけではないのだが、このセリフにはグッときた。ナショナリズムがやり過ぎではないかとか、中盤で非暴力に目覚めるみたいな描写があるのに、結局は殺しまくってませんか、とか、ツッコミどころは当然あると思うし、同時にそういうものにすべて答えを出す映画ではないとも思う。そもそもナートゥダンスとぶっ飛んだアクションとおっさん2人の熱い絆で倍額払っても余裕でお釣りがくる。
ただ、ラーマの家を訪れたときに、ビームが山と積んである本に視線をやるカットがある。その瞬間はよくわかっていなかったのだが、なぜビームがラーマを一方的に「兄貴」と慕うのか? 2人は英語を除けば能力値ではほとんど同格に思えるのに。おそらくビームは、文盲ゆえの限界を感じていて、読み書きが未来をつかむために必要だとほとんど本能的に気づいている。ビームだけの話ではない。インドがやがて独立国になることは誰だって知った上で本作を観ているわけだが、庶民が搾取されないためには読み書きが必須だし、生まれながらの環境が劣悪なときに抜け出すためにも学問はおろそかにできないだろう。
奇しくも現代の教育問題を描いた『きっと、うまくいく』や『スーパー30』のようなインド映画ともつながっているだなと、最後のひと言で点と点が線になった。この壮大な物語を締めくくるセリフだけに、作り手の思いがこもった、真摯に受け止めたい言葉なのだと思う。
あのシーンでは「えっ?それ?」と意外に思ったのですが、貴方様のおっしゃる通りそれを希望した背景確かにありますね。(英語話せないもどかしさのシーンなども。)
凄く納得しました!