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まず、裁判が終わっていないためカルロス・ゴーン氏が実際に犯罪を犯したかどうかは曖昧な状態です。それ故、犯罪者と糾弾することもできないし、犯罪をしていないと証明された訳でもありません。このことは非常に重要なことで、本作を観て批評する際には留意しなければならないことです。
今まで私は、「国外逃亡したゴーン氏がレバノンにいると分かっているのに、何故レバノンから日本へゴーン氏の身柄引き渡しが行われないのだろう?」とずっと疑問に感じていましたが、本作を観てその謎が解けました。この映画は「カルロス・ゴーンは日本の司法に抹殺された」という前提の元、日本の司法を批判し、ゴーン氏を擁護する内容となっています。レバノン出身のカルロス・ゴーンは、地元ではヒーローであり、日本はそれを不当に犯罪者扱いしていると見做されているようですね。
インタビューを受けているのはゴーン氏の親族や友人や使用人など、ゴーン氏の人柄などを根拠に彼を擁護する人たちばっかりです。犯罪を犯したか否かと人柄は無関係ですよ。インタビューの最中、ゴーン氏が行ったとされている金融商品取引法違反や特別背任について根拠を持った発言を行なっている人がいないのが非常に不満でした。
一応、ゴーン氏に批判的な意見を言う人物(例えば安藤優子さん)も登場しますが、インタビューを受けている関係者の数から考えればほんの一握りです。
どうしても私にはこの映画がゴーン擁護・日本批判のプロパガンダ映画に思えてなりません。中立の立場からカルロス・ゴーン事件を描いた作品とは、とてもじゃないけど言えません。私にとって本作は純粋にドキュメンタリー映画として楽しむことができず、ガッカリな作品だったと思います。