「もう一度、観よっと。」線は、僕を描く CBさんの映画レビュー(感想・評価)
もう一度、観よっと。
原作既読です。この原作も本屋大賞なので、みなさん、原作もぜひ安心して読んでほしい。これがまた、いいんだ。
原作では、先生や兄弟子たちの立ち居振る舞いで、熟達者たちの異なる個性・力量のわずかな差を感じていくのと同時に、ともに水墨画を学ぶことになった同級生たちとの関係で、初心者レベルでの異なる個性・力量の差を、体感していくというストーリーになっており、これがまた秀逸。読んでるこちらも水墨画の奥深さに分け入った気がしてくる。途中でわかる "僕" の背景も、その中にストンと落ちて納得する。スムーズな静かな流れで話が進む。そしてラストは・・・ まあ、そこはぜひ、映画観るか原作読むかしてほしいですね。いいよね、オチ。(映画は少しおまけしてたけど)
原作の方は、「水墨画の世界を、少しでも文章で俺たちに知ってほしい」 という思いがほとばしり伝わってくる感じ。水墨画のひとつひとつのさすがに現役の水墨画作家が原作者だけのことはあると思った。
さて、映画。
映画は106分という限られた中での表現なので、どこにデフォルメしてくるのだろうと思ったが、やはり、"僕" が消極的である背景や、先生が僕を選んだ理由を解き明かしていく点をクローズアップしていた。「ひとりの青年の再生」 という話だったね。
タイトルは、「僕が、線を描く」 ではなく、「線が、僕を描く」 なんだよね。すべて観終わって(読み終わって)はじめて、このタイトルがストンと腑に落ちる。その点は、原作も映画も同じ。
一方で、原作では想像するしかない 「水墨画」 を実際に目にできる、その描かれ方を目にできる、これはやはり映画の力というか映像の力として圧倒的!
水墨画という今まで知らない世界を、"僕" の視点で次々と疑似体験していく点は映画も原作も同様なのだけれど、映画観たら、原作も読んでみてください。「水墨画」 の様子をいかに文字で表現しているか。さすが原作者が水墨画家だと思う。「墨を擦る」 「筆を横方向に払う」 というひとつひとつを、主人公とともにじっくり体験していくことこそが、この小説の根幹、主題とも重なる部分だと感じる。映画のかぎられた時間では、さすがにその部分はさっと流すしかできないので、結果として別々の作品になっているのだと思う。
清原さん(果耶)の役(千瑛)はもう少しクールな女優がやるのかと思ってたけど、栗山さん(千明)ではちょっと年齢があわないから、やはり清原さんが妥当なのかな。俳優としての腕は申し分ないしね。
今回は原作とどんな関係なのかな、と考えながら観過ぎたので、あらためて真っ白な心で再度観てからまた映画としての感想を書きたいと思います。
CBさん、共感&コメントありがとうございます。
このタイトル、いいですよね。受け取り方は人それぞれかもしれませんが、まさに「ストンと腑に落ちる」という感じでした。