「真摯な眼差しで水墨画の道を求める」線は、僕を描く bluewaveskyさんの映画レビュー(感想・評価)
真摯な眼差しで水墨画の道を求める
墨絵の求道者の映画なのだが、今を時めく横浜流星さんと清原果耶さんがメインなのでビジュアルがこの上なく美しい。ただ、この映画の見どころはビジュアルだけにあるのではない。主役の青山霜介を演じた流星さんはコロナ禍の延期もあって時間をかけて練習し、撮影に臨んだという。流星さん以外の水墨画家役の出演者も同様で、それは筆を執るときの真摯な眼差しに現れている。
ストーリーは水墨画の大家・篠田湖山(三浦友和)の孫、千瑛(清原果耶)が抱える悩みを軸に展開。その後、霜介もあるトラウマを抱えていることが、次第に明らかになっていく。指導面では湖山は弟子を教えるのが下手という設定だが、敢えて節目に大枠を示すだけで霜介や千瑛に自由に試行錯誤を重ねさせるという筋の通った指導を行っているように感じられた。
他の登場人物では、湖山邸の食などを取り仕切る西濱に扮する江口洋介が90年代のドラマの“あんちゃん”のキャラとあまり変わっていないのが興味深い。また霜介の仲間の役の細田佳央太さんや河合優実さんが水墨画サークルをつくって盛り上げるシーンは、同じ小泉監督作品の『ちはやふる』の乗りを想起させる。特に細田佳央太さんは4年前の『町田くんの世界』を引き継いだユーモラスなキャラクター。ちはやふるの西田を演じた矢本悠馬さんの後継は彼に落ち着きそう。三浦友和さんや、批評家役の富田靖子さんを含めて新旧青春スターの競演も見どころとなっている。
滋賀の五個荘の屋敷を借りきったという湖山邸を舞台として背景の景色は美しく、役者が映らないシーンでも、明らかに墨絵のテーマを意識した画作りとなっており趣がある。さらに、ちはやふるでもおなじみ横山克さんの繊細なメロディはこの映画でも健在、期待通りの作品となっていた。