「真実は、見えるか?」ドンバス 機動戦士・チャングムさんの映画レビュー(感想・評価)
真実は、見えるか?
凄く残念に思うことがあります。もっとチェチェンの報道をしていたら…。もっとクリミアの報道をしていたら…。
クリミアが併呑された時、1万を越えるヒトの命が失われたそうです。あんまりニュースにならなかった気がしますが、負の連鎖は、この時から続くわけで、本作も、キーウ侵攻前に作られたダークユーモア映画だったそうですが、現実が、もっとダークに…。
アゾフ大隊っていましたよね。作中にあったような製鉄所の、息苦しい地下に籠城。祖国に命を捧げました。その一方で、アゾフのメンバーが、民間人を殺害したとする報道もあるようです。彼らは殺戮者なのか。あるいは、祖国にいながら敵対国に内通する輩を、即断即決で始末する愛国機動隊だったのか…。その後、捕虜になった隊員もいるそうです。凄く心配です。
でも私、ホントは分からない。日本語しか分からない私は、日本語のニュースしか見ません。では、ロシア語しか分からない人は?。ウクライナ語しか分からない人は?。
世界は、何者かによって編集された情報で溢れています。情報そのものが、規制の対象であり、プロパガンダという兵器になり得ます。それでも、何も知らないままでは許されない。だって何も知らなければ、嘘の情報を疑うことさえできないから。情報発信者の、意図を探る鍛練が、要求される時代のようです。
本作はモキュメンタリーに属すると思います。ウクライナの人から見た、ウクライナで暮らす親ロシア派と云われる人達を、映すのがコンセプト。ただ結婚式のシーンは、かなりの風刺というか、悪意を感じますけどね。映画そのものはフェイクだとしても、映画が伝える映像、空気、感情はフェイクとは思えません。
しかも、現実が映画を超えちゃうし。あの懲罰兵に対する市民の敵対感情は、演技とは思えません。当然、対立勢力にも言い分はあるでしょう。ただ、現地のあの重苦しい空気は、ニュースでは伝わりません。是非、皆様もご覧下さい。
真実は、見えますか?。
「シリア モナムール」
ロシアのクリミア併呑に対する制裁を、EUが発動しました。ところが、上手くまとまりません。シリアからの難民問題で、足並が揃わない為です。そのシリアに肩入れしたのが、他ならぬロシア。つまり、シリアの独裁者を支援することで、自国に向かう制裁を弱体化できる。その為にロシアが支援したとすれば、シリアで命を落とした人々は、納得できるでしょうか?。併せご覧下さい。