「イスラム社会の女たちの現実は夢も希望もないが、この映画が作られたのが唯一の希望かも。(タリバン勝利以前だったけど)」明日になれば アフガニスタン、女たちの決断 たこ姫さんの映画レビュー(感想・評価)
イスラム社会の女たちの現実は夢も希望もないが、この映画が作られたのが唯一の希望かも。(タリバン勝利以前だったけど)
ストーリーはオムニバス風に3人の女性について展開する。
妊娠後期なのに家族にこき使われる妊婦。何の思いやりもない夫、妻が舅のせいで地面に倒れたのに腹部を気遣う様子もない。夫も舅もイスラム社会の中で女性を思いやることを学ばないで大人になったのだろう。
7年も浮気を重ねながらそれでもよりを戻したい夫にウンザリしているエリート女性。さっさと分かれれば良かったのに、離婚は彼女のその後の人生を難しくするのだろうか。いやいや最初に紹介された夫候補は文盲だったので大卒の現夫を選んだと言っていたから進歩的な夫を期待していたのだろう。世話してくれた叔父の反対を押し切った結婚だったので浮気夫と別れられなかったのだろう。むなしく夢破れ別れを告げたときに妊娠を知る女。セックスを断るなんて無理なのだろうな、ほとんどレイプだったかも。
最後の18歳の若い女は最初の妊婦の隣に住んでいる子沢山家族の長女。父親はテロで亡くなり母親は苦労して子供たちを育てており、長女を親戚に嫁がせて生活の安定を願っている。そして18歳の彼女を妊娠させて逃げたのがエリート女性の夫。18歳の若い女は両親のような昔のしきたり通りの愛のない結婚ではなく恋愛結婚に憧れて浮気男にだまされ、妊娠してしまった。幼い夢は破れ、好いてくれるいとことの結婚を承諾する。その前に何としてもお腹の子どもを堕ろすしかない。
こうして闇堕胎の待合廊下で3人の女が同席している。最初の妊婦は胎児の胎動がなくなったからおそらく死産?エリート女性と若い女は中絶を待っている。
アフガニスタンに暮らす女性の現実なのだろう。婚姻外の妊娠は絶対に許されないという話しはイスラム社会全般に聞く。サウジアラビアで働いていたフィリピン人女性によると、妊婦が家族によって殺され、その罪を問われない事例を見たそうだ。数年前に話題になったフランス人の漫画家リアド・サトゥフ(父がアラブ人)の漫画「未来のアラブ人」にも同じ話が出ていた。
イスラム社会では女性は子を産む奴隷と思われているのだろう。西側の価値観が理解されるにはイスラム社会が豊かにならなければ無理だろう。社会を動かす大きな要素は経済。まだまだ時間がかかりそうだ。