「社会規範の抑圧から逃れる」X エックス nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
社会規範の抑圧から逃れる
田舎町でチャラい若者たちが惨殺されるスラッシャーホラーというジャンルではありますが、チャラさを判断する社会規範意識を揶揄するような視点が感じられました。
その時代の今時の若者と、昔ながらの宗教や倫理感を重んじる老人との対立というような。
とは言え、老人側も単純に倫理感に反しているから殺す訳ではなく、若さや奔放さへの嫉妬なのか執着なのか。
夫婦はこうあるべきという固定観念に、ある意味縛られているのか。
動機は過去に関するものなのか、既に製作されているらしい2作目にも興味をひかれます。
若者たちも、老人を思いやったりなど普通に良い奴ですし。
夜に語り合う場面は、青春もののような雰囲気で。
最初に殺されるのが、一番チャラくない奴、しかしダブルスタンダードな貞操観念の持ち主というところも、腑に落ちるというか。
社会規範や偏見の抑圧・欺瞞についても意識させられます。
そこからいかに逃れるかということでは、主人公が象徴的なのかと。
主人公が、自分に暗示をかけるような言動をしていたのは、親から人並み外れた社会規範の抑圧があり、それから逃れるためだったのかと解釈しています。
丁度、宗教2世の問題がニュースになっていたこともあり、2世の苦悩を連想してしまいました。
描写されていた宗教が、カルトなのかこの地域では一般的なキリスト教なのか、よく分かりませんでしたが。
アメリカの宗教事情に詳しければ、もっと面白く観れたかも知れません。
殺害シーンやクライマックスの攻防は意外にあっさりしていて物足りないように感じたものの、老婆の描写は異様なインパクトでした。
ラストも、主人公の過去などを考えると、複雑な余韻が残りました。