「踊るのが大好きだったあの娘」X エックス KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
踊るのが大好きだったあの娘
老夫婦のビジュアルがバケモノすぎる。
特に何もしていなくても彼らが画面に入るだけでなんか怖くてゾクゾクした。
前半は個人行動が多かった二人。夫婦が隣り合って立つシーンの画の強さよ。
若さと老い、ロマンスと性欲、嫉妬と殺人。
意味深に焦らされた後、不気味さが頂点に達してからの鮮烈な展開がとても好き。
「老人の性欲」の要素があることで非常にユニークかつ気持ちの悪いシーンが生まれ、単なるスラッシャーとはまた違った恐怖を感じることができる。
ポルノ撮影、若い人間の性交渉は新たな命や生の象徴とも言える。比べて老夫婦は死へ向かいゆく生活。
そこの対比の描き方が強烈で、だからこそ殺すことで若さを断ち切っているのかなとも思った。
それにしても、年老いた人間の性的なところを目の前にするとどうしてこうも「ウッ…」となってしまうんだろう。
年を取ったら枯れるべきみたいな謎の固定観念に縛られたくないのに、生理的嫌悪感がものすごかった。
自分だって老いるというのに。自分の親や祖父母に性的な行動があったから今の自分があるというのに。
気持ち悪さや恐怖を感じつつ、すごく切なくて悲しい気持ちにもなった。
踊るのが大好きだったあの娘、可愛いマリー。
老婆の嫉妬心もマキシーンの嫌悪も理解できるジレンマ。
若さに価値を重く置く風潮には異議を唱えたいけれど、やっぱり年齢の差は顕著に出てくるもの。
私もいつかはこうなる?なんて実感ない。考えたくない。死にたくない。でも年齢を重ねることに後向きにはなりたくない。
やたら不穏を煽る前半のつくりには若干間延びを感じる。後半が異常にテンポ良く進んだので特に。
ただ、やっていることはポルノ映画撮影なので観ていて楽しいし、キャラクターの深堀や変遷は普通に面白かった。
「客が望んでいるのはおっぱいと尻と巨根。」なんて身も蓋もないことを言うんだ…そしてめっちゃでかかった…。
この映画を観て、改めてホラー映画が好きだなと思った。なんだか生きている実感が湧く。
あとあれね、家ならともかく劇場鑑賞の際はエンドロールの最後まで席を立たないほうが良いよね。他人のためじゃなくて、自分のために