「覗き見」ボイリング・ポイント 沸騰 なつさんの映画レビュー(感想・評価)
覗き見
ワンカット作品にはあまり出会えてないのだけど、視聴し始めたら暗転や切り替えがないので、休まるタイミングがなく結構疲れる。
と、いうか独特の臨場感がありヘタなホラー作品より怖いなと…
序盤から、なんだかいっぱいいっぱいのオーナーシェフ。
クリスマスの高級レストランでお祝いムードで大繁盛の日にめいいっぱい豪華な料理でお客さんをもてなそう!って気概がまるでない。
プライベートでの電話(離婚した奥さんと息子)のことで必死。
そんなもんだから、衛生管理者からダメ出しされレベルを下げられてしまう。
じゃあ直せよ!とか思うが、家庭のことで頭に入らす。
衛生管理者の言う通り、他のスタッフに任せれば良かったのに…
今までなぁなぁにしてた部分を自分のことは棚にあげて個々を注意するシェフ。なんだかイライラMAX。
カメラは舐めるように登場人物の背中を追っていく。
100人客にプロポーズ予定のカップルもいる。
表面上は仲良しスタッフのようだか、いざ開店するとなると現場でのストレスがそれぞれ爆発し始める。
ドラマはごく少人の間で起きる。
ぬるりぬるりとカメラがそれぞれを映す。
遅刻者、勝手にホストを変われ陰湿な差別的な席につかされたウェイトレス、変にプライドのあるフランス人の料理人、妊婦の洗い場係に同じく遅刻のアホな洗い場係。スィーツ係の青年のリストカット跡を見て涙する教育係。
実はレストランは火の車なのにつけ込みライバルシェフからのほぼ恐喝のようなレストラン買収問題。抜き打ちでやってきたグルメ評論家。
客とシェフとの境で悔し涙を流す客席主任。
しまいには片腕として有能だった副料理まで辞めると叫ぶしまつ。
それら全てが、表の楽しいクリスマスディナーの裏で行われている。
あくまで舞台は裏側。
煌びやかなお客の様子は完全に背景。
舞台はレストランなのに料理ではなく作業の姿がメイン。
しかし、私が思い描く「高級レストラン」のイメージはこんなんじゃないなとも思う。
登場人物達の服装がまずおかしい。
ダラっとしたコック服、なんだか汚らしい。パブにいそうなラフなウェイトレスの服装。カウンターで大して仕事をしてないように見えるスタッフ。全く美味しくなさそうな肉料理、ラムがピンク色なのは高級に行かない私でもわかる。私の偏見なのか…
「ナッツアレルギー」
あぁ、これは絶対地雷なやつ…
全ての重圧から逃れるために常にアルコールで流してきたが、ついに薬に手を出し店の外で倒れてラストを迎える。
彼の物、誰にも渡したくなかった居場所。
そこから逃げ出した。
クリスマスソングの中。
エンドロール後にインスタ用に上げた笑顔のスタッフ写真。それは彼の理想郷。
一致団結のように見えて実はバラバラだった高級レストラン。
長回しの緊張感での中、起こる出来事は個人的に見ても大袈裟なことではない。
いい加減なスタッフと明らかに多すぎる予約客、苛立つオーナーシェフがいればよくある問題だし、結局彼ら彼女らの問題は解決もなにも無い。
その爆発日を幸せなクリスマスに当てた事が一層荒んだものと化した。
なので感情移入もできず、ただ荒んだレストランの裏側を密着取材してた感じ。