劇場公開日 2022年7月15日

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「「カーリーと10人のヘタレ」 キャパオーバーの末路について」ボイリング・ポイント 沸騰 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「カーリーと10人のヘタレ」 キャパオーバーの末路について

2023年11月1日
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【働きアリの法則】
ってご存じだろうか?
いつ、何処で、誰がどんなグループを作ろうとも
人間が集まる所には「2:6:2」の割合で、「働き者」と、「普通グループ」と、「足を引っ張る あんまり役に立たない困った集団」に、なぜだか必ず分れるのだ ―
という社会学の発見です。
ホント、なぜだか自然に分かれるのですよ。

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【レストランの映画は面白い】
昔、「ソムリエかコック、もしくは世界一のギャルソンになってみたい」という夢を抱いていた僕。
料理、サービス、内装、そしてオペレーションの連携。
レストラン映画は、そのどこを取っても大変興味深くて目を奪う。
それは料理の味付けだけでなく、登場人物の味付けが生きてくるからです。

ファミレスの「ジョナサ○」の厨房でバイトをしていたうちの息子。友人関係の幅が実に広くて、秀才たちからも不良グループからも慕われて、いつも引っ張りだこの変わったキャラ。
その息子がたった1人で奮闘しました、
一番お客さんが来ない 閑古鳥なはずのファミレスの日曜日の深夜=月曜日の夜明け前のこと、
突如マイクロバスで押しかけた30人の団体客を八面六臂で片付けました。
ホール担当の女の子のこともテキパキと指示して使い、案外平気でやってのけたそうです。ケタケタ笑ってました。
ブラボー my son.🎉

僕ですか?
マックの経験者です。2分30秒で24個のハンバーガーを連続で作れます。

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さて、
【ボイリング・ポイント】
問題あるこの映画のレストランですが、
職場で良い仕事をするためには、帰宅後にホッとできる家とか家庭とか、私たちには絶対に必要なんですよね。

映画の冒頭の「電話シーン」―
あの電話シーンで、物語の結末は明らかにされてしまったようなものです、
・会社でずっと寝泊まり。
・別居する妻からの仕事場への電話。
・掛け直すも早口で大声。
・行き違いの留守電。

そこにきて、食品衛生監察官の見回りと、彼が帰ったあとのシェフの八つ当たりの怒号まで、
先ずは開幕からのそのシーンまでで一気。緊迫感で息が止まりましたね。
開店直前です、絶体絶命の時間です。
シェフ自身の仕入れミスが発覚。食材がまったく不足。
寝不足。alcoholic。
予約はまさかの100名という恐ろしさ!

「ワンカット長回し撮り」の息もつかせぬ緊張感は、こういう 急げ急げのストーリーには適しているのかもしれないです。

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【チーム作業もの】の映画は とかく面白い。
鑑賞者自身が、
①チーム作業の上手く回ることの爽快感や、
②以心伝心、「わかっている仲間の頼もしさ」を知っていれば、そういう絶好調な流れが、画面から手に取るように判るからです。
立場上。そして経験上。

ただし、
残念ながらこの映画「ボイリング・ポイント」は全てが逆パターンでした⤵
終始順調にいかなかった場合の、「泥沼」の有り様です。
「働きアリの法則」の最下層グループが、そのグダグダで鑑賞者を悩ませ、疲れさせてくれるアン・ヒーリング映画。
メンタル、消耗しましたね。

まったく、このアンディの店のダメダメぶりには唸らざるを得ないです、
・中堅のベテランが少なすぎるキッチン。
・ヘタレの新人ばかりでシェフは調理にまったく集中していない。
・ホール担当者やウエイティングバーのバーテンダーも私語でやかましいし、お気楽勝手でまとまりがない。
・「自分の仕事じゃないから」との一辺倒で、牡蠣殻のゴミを目の前に放置して棒立ちの男。
・ストーブの前で怒っているサード。
・皿洗いは遅刻。パティシエールは別のことで泣いている。
で、入店1週間目のフランス人へのフォロー体制はいったいどこへ?

もうこの時点で、この面々ではレストランが長続きはしないことが有り有りと見えていました。
( 金髪女性の支配人も、実は彼女が「父親からこの店を引き継いだばかりの経験も力量も不足なタマ」だとわかるのは後半になってから)。

肝心な事がわかっていない睨みの利かないシェフと、
能力不足でマネージメントの何たるかを分っていない現場支配人。
残念だがこの両者がダメ。その「非力さ」がレストラン凋落の元凶となるはず。

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【高速長回しの人生にSTOPをかけてくれる人脈がいなかった末路】
Dearアンディ。
きみに言いたいよ、
きみは家族を犠牲にしてしまうのなら、そのライフワークはすでにきみのキャパを超えてしまっているのだし、
すべてのパワーをその仕事に注ぎたいのであれば、あなたは家庭を持つべきではなかったのだね。
シェフ個人の家庭の事情が、有機体としてのレストランのチームスキルを壊してしまう、その残念さを
この“破滅”にズキズキと思い当たる経験者ならば、
この映画は痛烈な“お灸”として、鑑賞者を刺すことになるだろうな。
料理だけに集中できないのなら、まずは身の丈に見合った小さな食堂にすべきだったんですよ。

アンディは孤独。
ストップをかけてくれる親友とか、どやしつけてくれる悪友とか、アンディにはそういう感じの「生きていく上で頼りになる特別の友だち」がいなかった。

アルコールとヘロインとストレス、
そして燃え尽き症候群。
そして何よりも自分の能力の無さに押し潰されて昏倒したアンディ。
ようやく彼は倒れて救われたというべきだろう。

病院のベッドで意識を取り戻して、
一人になって、
また新しい人生と身の振り方を、アンディはゼロに戻って考えれば良いことです。
これはこれで、めでたしめでたしなのです。

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そんなわけで
内容的には見事に弱っちい人間ばかりのレストラン映画でした。
作品の作りとしては、95分の尺では「快進撃」と「躓き」の両方の部分を、一本の脚本で見せることが無理だったのだと思います。そこが少し残念。ダメ人間しか映さないので後半 飽きてしまった。
で、唯一まともだったのは、ここを辞めての転職を決めているスー・シェフのカーリーだけでした。
「働きアリの法則」も破綻です、
「カーリーと10人のヘタレ」と改題が良いかと。

そして
劇中では悪者のように描かれるライバルシェフのスカイなのだが、料理馬鹿のアンディとオーナー娘に良い仕事をさせるなら、案外彼のような経営手腕に富んだ外部取締役って、組織が大きくなるほど必要なんだがね。

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【おまけ】
人事の採用部門に関わるあなたにそっと耳打ちしましょう。
「履歴書」にスポーツの経歴が記載されていたら、その「種目」には注目です、
適材適所です。
①バスケットボールや、サッカーや、野球の選手をお選びください。
彼らは目が効く、鼻が効く、やるべき事を瞬時に察知する。声も出せる、仲間のミスを、素早く体が動いてフォロー出来る。ミスを予見することさえ出来る。そして後ろにも目がある。
フィールドを俯瞰する能力に長けているから、入社当日から彼らはチームの即戦力になる。

②逆に陸上、特に短距離走者は、チトむずかしい(笑)
日焼けしたナイスガイでも要注意です。
彼らは自分のタイムにしか興味がなく、独りで、ある意味自己満足の練習に没頭してきたアスリートです。他人のすることには とんと興味が無い、そんな傾向が強い。
会社勤めよりも座禅でもしていたほうが良いかもね、ゴメンネ。
起業・個人事業主向き。

③少人数競技の種目だと、
卓球やバドミントンのダブルス経験者は動体視力が超絶です。入れ代わり立ち代わりの高速ライン作業は平気の平左。お手のものです。
カーリングなどもそう。
インドアのスポーツパーソンは、容貌が日焼け無しの色白であることと、その視力の良さ、そして担当する部署への責任感ですぐに判ります。

・・以上は、新入社員たちの動きを観察して、その人のスポーツ履歴を言い当てるという変な趣味を持つ僕の、経験値からのアドバイスです。
ずいぶんと新人たちには感心させられ、また苦労もさせられました。その中から発見したチェックポイントです。

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【ワンカット長回し映画】としては
「カメラを止めるな」や「大空港2013」が記憶に新しいけれど
もう一本あります。
たった二人の出演で、夫婦が歩きながら会話し続ける三谷幸喜の「short cut」(ショートカット)。これ、実験的作品としては僕は評価しています。配信でどうぞ。
鈴木京香・中井貴一が結婚10年目の夫婦役です。

きりん