「沸点の後」ボイリング・ポイント 沸騰 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
沸点の後
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2021年。フィリップ・バランティーニ監督。ロンドンの一流シェフが手掛けるレストランの内情は問題だらけ。一番の問題は料理の腕は超一流のシェフ自身にリーダーシップや生活力がないことだが、オーナーの娘でもあるマネージャーは上から目線で料理人にあたり、皿洗いは仕事をせず、見習いは自殺未遂歴があり、フランスから来たばかりの下料理担当は英語を聞き取れない。そこへ、明らかに人種差別をする白人男性客がホールの黒人女性に嫌がらせをし、今や売れっ子タレントとなったシェフの元相棒が料理批評家を連れて表れて、、、という話。
ワンシーンですべてを撮っているという触れ込み通りの緊迫感はあるが、さらに緊迫化を生んでいるのは、登場人物たちが次々と「沸点」を迎えて感情を爆発させていくなか、内面の心理状態からも外面の資金繰りや人間関係からも徐々に追い詰められていくシェフの様子。シェフが「沸点」を迎えることで物語は終わりとなる。
人種規範もあらわだが、ジェンダー規範もあらわで、男たちは「沸点」を迎えてそれでおしまい、なんの後処理も修復もしないが、女たちは「沸点」を迎えたあとで修復の努力をして人間関係を続けようとする。ナルシストな男、インクルーシブな女。これこそジェンダー的に問題のある描き方かもしれないが。
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