「実在のレストランでの群像劇がスリリングに疾走する、『ヴィクトリア』に比肩するワンカットサスペンス」ボイリング・ポイント 沸騰 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
実在のレストランでの群像劇がスリリングに疾走する、『ヴィクトリア』に比肩するワンカットサスペンス
全編ワンカットの映画としてはスペインからやってきたウェイトレスの女の子が酷い目に遭う明け方までの140分を捉えたドイツ映画の『ヴィクトリア』という大傑作がありますが、こちらはロンドンにあるJones & Sonsという高級レストランを舞台にオーナーシェフのアンディ、アンディの同僚カーリー、フロアマネージャーのエミリー、アンディの元同僚で有名シェフのアリステア、グルメ評論家のサラといった複数の登場人物達が持ち込む小さな騒動がぶつかり合ってタイトル通り“沸点”に達するまでの群像劇を一つのカメラで見つめ続けるより複雑でテクニカルな90分。次から次に起こるトラブルを場当たり的に追いかけていながらさりげなく伏線を張っているので、クライマックスの展開はただでさえ無軌道な物語をあらぬ方向へ強引に加速させ着地させます。収拾がつかないほどリアルな喧騒は演者によるアドリブなりハプニングもあるのでしょうが、相当繊細に準備されたもの。それを一発撮りで完成品に仕上げた製作スタッフのチームワークに感動しました。
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