「違和感のない「のん」」さかなのこ 悶さんの映画レビュー(感想・評価)
違和感のない「のん」
【鑑賞のきっかけ】
「さかなクン」がテレビに登場したのは、1990年代初頭ですが、以後、気がつくと、ずっとテレビ番組に出演し続けていて、好感の持てる人物でした。
その「さかなクン」を、何と、女優である「のん」が演じるという。
これは、必見!とばかりに劇場に足を運んできました。
【率直な感想】
<まずは、前半の驚きの展開>
本作品で、「さかなクン」は、「ミー坊」という愛称で呼ばれています。
物語は、冒頭、成人した「ミー坊」の姿が映されるのですが、すぐに、時代を遡り、小学生の時代へ。
毎日さかなのことを考えている「ミー坊」のもとに、現実世界の「さかなクン」本人が登場し、私は一瞬カメオ出演か、と思いました。
ところが、それが違うのです。
「さかなクン」は、いつもの姿で登場するのですが、「ギョギョおじさん」という、変わった人物として物語に入ってきます。
さかな好きの「ミー坊」は、「さかなクン」の家に招かれ、言わば、「さかなクン」は魚類研究の師匠のような展開になっていく。
現実の世界の「さかなクン」との違いは、お魚博士を目指していたけど、それが出来ず、貧乏暮らしをしている、という設定になっていて、もの悲しい顔をするのが印象的でした。
<「さかなクン」と「のん」>
「さかなクン」という男性を、「のん」という女優さんが演じる。
最初は、どういうことだろう?と思ったのですが、これが違和感ないのですよね。
よい意味で、お二人とも、「男か女か」という性別を超越した存在だからでしょう。
<現実のさかなクンは…>
現実のさかなクンは、東京海洋大学の名誉博士であり、客員教授でもある。
とても「クン」などと呼べる存在ではなく、現実世界では、「○○(本名)先生」と呼ばれていてもおかしくないです。
また、1975年生まれなので、もう、40代後半ですが、若々しいですよね。
これは、益々、「クン」などとは呼べない。
でも、彼は、ずっと「さかなクン」と呼ばれ続けるでしょう。
こんな親しみのあるキャラにどうやって育っていったのか。
じつは、この映画は、その秘密を明かしてくれているように感じます。
「さかなクン(ミー坊)」は、大のさかな好きで、さかなのことばかり考えている。
もし、彼が、「おさかな」とだけのお付き合いだったら、いくら、魚類に詳しいからと言って、これほどの著名人にはなれなかったでしょう。
最初は、小学生時代を描いていますが、やがて、上級の学校に進学し、不良学生たちにいちゃもんを付けられます。
ここで、自分のおさかな好きを主張するうち、不良学生たちと親しくなっていきます。
この辺りから、「さかなクン(ミー坊)」は、他人とうまく「コミュニケーション」を取ることができるようになり、相手の気持ちを察した行動もできるようになっていきます。
社会に出てからも苦難は続くけれど、おさかな好きは貫きつつ、多くの人と「コミュニケーション」し、助けたり、助けられたりしながら人生を歩んでいく。
魚類について博学なだけでなく、しっかりと「コミュニケーション能力」を身につけていった。
これが、大人気のキャラ「さかなクン」が生まれた大きな要素だと感じました。
【全体評価】
小難しいことをいろいろと書いてしまいましたが、物語展開は、それこそ、お子さんでも楽しめる、明快でユーモアに溢れた作風になっています。
じつに、後味のよい、心温まる作品でした。