劇場公開日 2022年9月1日

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「さかなだけになにかとアラ(粗)が目立つ作品。」さかなのこ レントさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5さかなだけになにかとアラ(粗)が目立つ作品。

2022年9月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

寝られる

さかなクンの物語と聞いて誰もが思い浮かべるのは、子供の個性を尊重した教育の重要性というテーマだろう。横並びの画一化を目指す今の日本の学校教育では天才は育たないと言われる。周りの空気を読んで自分を殺し、なるべく目立たないように生きるのが美徳とされる日本ではさかなクンのような子は周りから浮いてしまい、最悪いじめのターゲットにされやすい。

彼の実際の母親はおおらかで理解のある方であり、本編のセリフにあるように勉強が人並みにできなくとも好きなことに没頭させてやりたいという教育方針が実を結び、今のさかなクンの成功に繋がっている点は子育ての参考にはなるだろう。

ただ、本作はさかなクンの自伝的作品ながら、主人公をあえて女性に改変した意味がわからない。はたして女性にすることで何らかの別のテーマが見いだせたとは思えない。
高校時代に主人公だけが学ランを着ており、ジェンダーに関する問題提起かと思いきや、ただ主人公は変わり者であるということを表現しているだけに過ぎなかったりと、もはや人気女優を主役に添えて客引きしたかっただけなのかなとさえ感じてしまう。

また、本作の登場人物たちはすべてが記号的であり、紋切り型のセリフ回しや芝居のレベルも子役たちを筆頭に結構見ていてきつかった。
そして肝心の母親でさえも子供に理解ある母親という記号でしかない点も致命的。それなりに子供への理解ある態度やセリフを発するのだが、どれも心に響かない。
流石に小学校低学年の子供が見ず知らずの大人の家に遊びに行きたいと言って、子供の意思を尊重して許してしまう流れは無理がありすぎる。
あと、学生時代の不良たちとのエピソードや、不倫居候母娘との同居生活にかなり時間が割かれていたが、さかなクンの物語では必須のものだろうか?原作未読なので原作にあるのなら仕方ないが、やはり親子の物語をメインにもっと短くまとめたほうがよかったのではないか。

脚本演出にも粗が目立った。何より主人公が作品冒頭でハコフグスーツを着て出かける際、こちらを振り返って「行ってきます」と言うシーンを見て早くも作品に対して嫌な予感がした。この「行ってきます」は主人公が同居する自分の家族に向けた言葉ではなく、特に何の意味もないイメージシーンだと分かったからだ。これは昔の日本映画によくある典型的ダメ演出。
脚本的にも自分のナイフに魚の臭いを付けたくないから不良のナイフを使うというのはおかしい。普段から自分のナイフで魚をさばいているはずだし。また、居候親子が水槽がなくなるのに気づかず眠り続けていたり、主人公の絵はバンクシーじゃあるまいし、あんな人だかりはできないだろうとか、とにかく冒頭から粗ばかりが目について全く本作には乗れなかった。
極めつけは総長の「あいつなにかの主人公みたいだな」というセリフ。これを聞いた時には絶望的な寒気に襲われた。

最近鑑賞した「こちらあみ子」が凄い傑作で、どうしても本作と比べてしまい、評価は厳しくならざるをえない。
正直言ってマナーCMだけでよかった。久々に途中退席したくなるほど鑑賞中苦痛を味わった作品。

追記
鑑賞時にはまったく気づかなかったけど、本編主人公は男性の設定で、あくまでもそれを女優さんが演じていたと後から気づいた。でも子ども時代はどう見ても女の子にしか見えない。水着も女の子の水着だし。そもそも、それに気づいたところでやはり本作への評価は変わらないけど。

レント
ミカさんのコメント
2023年6月24日

こんにちは。配信で何となく鑑賞していたので、細かいところまで観てませんでした。こちらあみこをチェックしてみますね。

ミカ
kossyさんのコメント
2022年9月22日

レントさん、コメントありがとうございます。
確かに子供時代のシーンはもっとバッサリカットしても良かったとお思いました。大人シーンに入ってからホッとしていたのですが、モモの娘の演技が・・・
全体的に魚好きが三世代で受け継がれていくところも面白かったです。

kossy