「性別なんて問題じゃない‼のんが、一人の人間として“好き”に真っすぐに向き合い人生を進んでいくミー坊の姿を見事に体現してくれました。」さかなのこ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
性別なんて問題じゃない‼のんが、一人の人間として“好き”に真っすぐに向き合い人生を進んでいくミー坊の姿を見事に体現してくれました。
じょっ、じょっ、じょぉ~~~‼
さかなクンが、おんなになってるぅ~(^^ゞ。そして冒頭に『男か女かは、どっちでもいい 沖田』と沖田監督は観客にどうだ!といわんばかりの挑戦状をテロップで突きつけます。
さかなクンの半生を描いた初の自叙伝『さかなクンの一魚一会 〜まいにち夢中な人生!〜』が原作である本作。主人公のミー坊がさかなクンに成長するまでの過程が描かれます。さかなクンとは性別が異なるのんを起用した理由について、監督の沖田は「性別は特に重要ではない」とし、「中性的な魅力もある、のんさんならこの役にも違和感なく、不思議とすんなり入っていける気がした」と語っています。
ギョギョ!?っと誰もがビックリのこのキャスティングには、オファーを受けたのん自身も初めは驚きをもったようです。「まず、さかなクンさんの役を私にいただけたことがすごく嬉しかったです。ミー坊が「好き」ということだけを貫いて、まっすぐに突き進んでいく姿がすごく気持ちよくて。ミー坊のように、好きなことを追い続けて生きていたらいいことがあるかもしれない。そういうポジティブなメッセージが感じられました。」とのんは振り返っていました。
既存の枠組みにとらわれずに新たな道を切り拓いているのんなら、どんな厳しい環境の中で変わらず自分のままで居続けるミー坊、そしてさかなクンの本質を体現できるに違いない! という制作陣の熱い想いから今回のキャスティングが実現したようです。
原作から大胆なアレンジが加えられて仕上がった映画のシナリオも、のんが演じることを想定して作り上げられたそうです。
実際にのんの役作りは素晴らしく、「男性の役だと思っていたんですけど、私に来たということは、ジェンダー云々の話じゃなくて、魚が好きという人としてのミー坊を演じればいいんだなと思いました。」と明かすのんが、一人の人間として“好き”に真っすぐに向き合い人生を進んでいくミー坊の姿を見事に体現してくれました。
各地で開催された試写会で一足早く鑑賞した観客からも「さかなクンにしか見えなくなってきて、ほっこりしっぱなし」「面白そうな配役だなとは思ってたけど、想像よりもずっとお似合いだったし、のんが演じてるからこそ可愛らしくて愛される主人公だった!」「のんじゃなかったら違和感あったかも。男性女性だからどうとかじゃなく、のん以上の存在はいないね🐟」と圧倒的支持を集めているようです。
そしてのんは天然ぶり(お魚ではない)を発揮するだけでなく、体当たりで役に投じていました。
たとえば劇中のお魚をシメるシーンのためにのんが練習する場面では、活きのいいお魚がハネた瞬間に思わず「わあ!」と声を上げて驚きながらも、エラにバタフライナイフを入れて実際に捌いていくシーンでは、ドキドキがこちらにも伝わってきそうです。
撮影前から生きた魚で何度も何度も練習を重ねたというのんの、真剣な眼差しを感じられる映像になっています!
さらにトレードマークのハコフグやたくさんのお魚が描かれた白衣の衣装のまま、防波堤を一気に駆け抜け海中にダイブするのです。しかもそんなシーンが何度も!
海中ダイブを含め、今回すべてのシーンでスタント無しの体当たりで挑戦したのん。本番のチャンスが少ないなか緊張の面持ちで駆け出すも、迷いを感じさせない足取りで思いっきり空中に飛び出していたそうです。ほぼ一発で狙い通りのシーンを収めることができた沖田監督は大興奮だったそうです。
やっばり原作のさかなクン+主役ののん、そして沖田監督のコラボは、「天然物」の活きのいい笑いを生み出す最強トリオだと思いました。のんが全力で体現するミー坊を、ぜひ劇場の大きなスクリーンでご覧ください!
物語は、お魚が大好きな小学生“ミー坊”(子役:西村瑞季)は、寝ても覚めてもお魚のことばかり。お魚を、毎日見つめて、毎日描いて、毎日食べて。他の子供と少し違うことを心配する父親ジロウ(三宅弘城)とは対照的に、母親ミチコ(井川 遥)はミー坊を信じて応援し、背中を押し続けるのでした。
高校生になり相変わらずお魚に夢中のミー坊(のん)は、町の不良たち(総長:磯村 勇斗ほか)ともなぜか仲良し、まるで何かの主人公のようにいつの間にか中心にいるのです。やがてひとり暮らしを始めたミー坊は、思いがけない出会いや再会の中で、たくさんの人に愛されながら、ミー坊だけが進むことのできるただ一つの道にまっすぐに飛び込んで行くのでした。
ところで皆さん、なんといっても気になることは、さかなクンは自分の原作に出演しないのかということでしょう。彼の性格からして、大人しく撮影風景を眺めているようなタマではありません。
案の定、作品の前半では、小学生のミー坊にお魚の楽しさを伝え、トレードマークのハコフグの帽子をバトンタッチし、将来のさかなクンとして活躍するきっかけを作った『ギョギョおじさん』として登場します。それ以外も、街場のエキストラに混じって、随所で顔出ししていました。
本作は、ゆったりほんわかとストーリーが展開するので、作品のテーマ性はあまり感じられないことでしょう。しかし、劇中ミー坊が見せつける圧倒的な好きなことに対する情熱の凄さには、圧倒されます。その天然ぶり(お魚ではない)から、水族館で働いても、寿司屋で働いても、すぐクビになって落ち込むミー坊でした。それでもミー坊は「好き」ということだけを貫いて、まっすぐに突き進んでいく姿は、直ぐに現実に妥協し、本当にやりたかったことを見失いがちな多くの観客に、好きなことをやり抜く勇気を与えてくれることでしょう。