「個人的には今年ベストの一作」チャーリー・イズ・マイ・ダーリン yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
個人的には今年ベストの一作
昨年亡くなったローリング・ストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツの名を冠した本作。もともとは2012年に発表された作品だったのですが、タイトルに図らずしも追悼の意味合いが加わりました。
本作は、当時ようやく「サティスファクション」などのヒットで人気バンドとして知名度が高まりつつあったローリング・ストーンズが、1965年に行ったコンサートツアーの様子を記録したドキュメンタリー作品です。
もちろんミック・ジャガーをはじめメンバーはみな若々しく、演奏を楽しんでいる様子が映像からも伝わってきます。4Kレストア版として今年同時期公開となった『ロックンロール・サーカス』と同様、早くに亡くなったストーンズの初期メンバー、ブライアン・ジョーンズの演奏や発言が収録されており、これだけでロック史に残る重要な資料となっています。ブライアン・ジョーンズはこの頃から既に、アーティストとしての知名度の高まりに困惑し、厭世的になりつつあることが窺えることに感慨を覚えました。
2021年に亡くなったチャーリー・ワッツが、周りがどれだけ騒いでいても、ひとり物静かに佇んでいるにもかかわらず(いやそれだからこそ)、強い存在感を放っている点も印象的です。
本作最大の衝撃は、ステージに乱入した観客が暴れてメンバーが逃げ惑う中、彼だけが何事もないかのようにドラム演奏を続けていた、という場面。チャーリー・ワッツは最初から「彼でしかなかった」ことが強烈に伝わってくる映像です。実質彼が主役と言ってもいい本作、追悼の意味を含めなくとも今年ベスト級の素晴らしくかつ貴重なドキュメンタリーです。
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