「ずっと生々しい」夜を走る 味彩さんの映画レビュー(感想・評価)
ずっと生々しい
玉置玲央さんの演技が好きで、玉置さんが出演されているという理由で観に行きました。
『教誨師』をテレビで見たことがあり、とてもよかった記憶があるのですが『夜を走る』も『教誨師』の監督が作られているんですね。こちらは鑑賞後に知りました。納得です。
途中までは、所謂、男性が見て楽しめる映画なのかな~と思っていたのですが、どんどん、雲行きが違う方向に……これは誰が見てもただ心地いいだけの、スカッとする類いの映画ではないんだなぁと嬉しくなりました。
玉置さん演じる役がめちゃくちゃチャラくて、営業の女の子を軽く飲みに誘いすぐキスしようとする最悪っぷりがよかったです。
可愛げのある最低な男に違わぬ言動。
しかし揚々と生きているように見えて家庭ではああいう感じなんだ、というのがとてもリアルだなぁと感じました。
不倫相手には調子良いこと言えるけど奥さんには無視されてる……そりゃ不倫するよなぁと思っちゃいましたが、いやいや、不倫してるって知ってから無視するようになったのかな?
かくいう奥さんも不倫してて、むちゃくちゃやんけ~でもこういうことってあるんだろうなぁと感じる温度感の映像でした。
主人公の男性も40年間恋人がいない説得力がある。
さらに、その後の狂いっぷりが生々しくて、本当にこういう人いそう、こういうことありそう、ああいう団体ありそう、がすべてが自分の歩いてる地面の延長線上にあるように感じられてめちゃくちゃ恐かったです。
女性の格好をしてまで教団にすがるところとか、ずっとにこにこしてる女性の教団員さんとか、悪魔という単語を使うのとか、とにかく生々しい恐さがありました。
ホラーではないのになんて怖い映像なんだろうって思いました。
かと思えば怖い中にもユーモアがあって、主人公がキャバクラの偉いさんに連れていかれそうになったときに誘導していたボディガードの人が主人公と同じ教団の人だった展開には面白くて膝を打ちました。
まさかそうなるとは!
「俺はあんたに謝りたかったんだ」
そういう思考になることが、恐ろしいし、すごいなぁと。銃まで渡してしまって、ボディガードはその後逃がしてしまって、大丈夫だったんだろうか少し気になりました。
ラストがまだ消化しきれていないのですが、私は主人公は自殺したのかなと思ったのですが、銃で脅して?あの教団のトップになったとも考えられるのかなぁ。
主人公にインスパイアされた教祖があの踊りを教えてるのかなと思ったのですが……一緒に見た友達とどうなんだろうかとしばらく話し合いました。
また、営業の女の子を殺した犯人も本当は主人公じゃなくて玉置さんの役なんだよね?と友達と確認し合いました。
決定的なところを描かない作品も好きなのですが、詳細が気になってしまいました。
全体としては恐かったな~という感想なのですが、玉置さんの演技が相変わらず素晴らしくて満足感がありました。
不倫相手といるときのだらけた感じがまたとてもよかったです。