「突っ込みどころ満載で最後まで楽しめる」ブレット・トレイン ありのさんの映画レビュー(感想・評価)
突っ込みどころ満載で最後まで楽しめる
原作準拠で日本を舞台にしているが、幾つか設定に変更があるようで、煌びやかなネオン街は現実感が薄くどこか架空の街を思わせる。ブラピが乗り込む超高速列車”ゆかり号”の内装も普通の新幹線に比べると装飾過多で、そういう意味では架空の日本を舞台にしていると解釈してよかろう。敢えて突っ込みどころ満載なバカ映画としている節もあり、そういうスタンスで観れば十分に楽しめる作品ではないかと思う。
実際、コミックタッチなアクションシーンはすこぶる痛快で、戯画化されたキャラクターたちが織りなす因縁も、あり得ないくらい数奇に満ちていて飽きさせない。誰と誰がどこで結びつき、それが物語の中でどう転がっていくか。伊坂幸太郎の作品の中ではこうした皮肉めいた人生の因果がたびたび登場してくるが、それが本作でもドラマチックに再現されていて、外見の派手さはともかくとして原作に対するリスペクトが感じられた。
特に、終盤にかけてのアクションシーンは、デヴィッド・リーチ監督らしい突き抜けた演出が心地よく、観ている方としてもテンションを維持したまま一気に駆け抜けることができた。少々ブラックなテイストもあるので、そこも”らしい”と言えば”らしい”。
ただ、編集の問題もあるのかもしれないが、シーンの繋ぎの悪さが気になる箇所が幾つかあった。例えば、ミカンとレモンの最後の別れは、それまでのテンションを考えると妙にメランコリックで少し戸惑いを覚える。終盤におけるプリンスの動向がまったく描かれないのも、一体彼女はどこで何をしていたのだろうか?と気になってしまった。
尚、劇中にかかる楽曲も実に多彩でGood。日本が舞台ということで日本の歌がフィーチャーされているのも嬉しい。開幕で流れるビージーズの「ステイン・アライヴ」は女王蜂のアヴちゃんがカバーしているバージョンだったとクレジットで知って驚いた。
キャストでは、ブラピの少し三の線が入った造形が作品のテイストに見事にマッチしていた。さすがにこういう役はお手の物といった感じである。
真田広之の貫禄タップリな演技も堂々としたもので、アクションも相変わらずキレがある。もはやハリウッド大作に欠かせぬ日本人俳優になった感がある。
日系人俳優では木村役を演じたアンドリュー・小路も雰囲気があって良かったと思う。今回初見であるが、どうやら米英で幅広く活動しているらしく、今後の活躍が楽しみな俳優に思えた。
他に、チャニング・テイタムやライアン・レイノルズといった豪華スターのカメオ出演等、濃ゆいキャストのオンパレードはもうそれだけでお腹いっぱいという感じである。
ところで、劇中に登場してくる”モモもん”なるキャラクター。どことなく東京オリンピックの某マスコットキャラに似てなくはないだろうか?そのあたりにも製作サイドの遊び心が感じられてニヤリとさせられた。