劇場公開日 2023年9月1日

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「だれが、どこに。」スイート・マイホーム 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0だれが、どこに。

2023年9月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2023年。齊藤工監督。長野県松本のスポーツジムで働く男は妻と小さな娘と三人暮らし。マイホーム購入を機に身の回りで殺人事件が連続して起こり、妻は「家の中に誰かがいる」と言い出して、、、という話。
浮気をしていた主人公は浮気相手が脅迫されることで周囲に対して疑心暗鬼になっていくが、さらに、自身が過去の父親にまつわる記憶を失っていて閉所恐怖症になっているため、自らの精神の健全性に自信がない。また、作中には誰かに監視されていると思い込んで社会生活ができなくなっている主人公の兄がいて、いたるところから見られているから気をつけろと主人公を注意する。すると、家の中にいる誰か、とは主人公や周囲の人間の無意識的な何かだったり、妄想だったりするのではないかという想定、つまり、心の中の問題なのではないかという想定がはたらく(一人で家に残る妻は心配が嵩じてそう言いだしているのでやはり心の問題と思われる)。しかし一方で、妄想とは全く関係ない他人の子供が幽霊を見たり、実際に赤ちゃんがさらわれそうになったりもするので、その誰かは心の中とは関係なく存在する怨念とか祟りとかの霊的なものか、または物理的に存在する人間なのではないかとも思わせられる。本作では、これらすべての「誰か」候補がひとつにしぼりこまれないまま重なり合っている。無意識的なものや霊的なものは地下で顕れ、人間は屋根裏に隠れている。最後の妻の様子も含めて、「真犯人」が目的をもって行動していました、では説明できない細部がたくさんある。人間であり、無意識であり、幽霊である「誰か」。
山場で包丁で人を刺すシーンがある。主人公の過去の記憶とも関連している山場なので、ここをどう撮るのかを映画に詳しい齊藤監督が考えなかったはずがないが、やや粗雑に扱われた印象は否めない。

文字読み