「吹き替え版の出来に違和感を抱いた作品もありましが、今回は大成功」バッドガイズ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
吹き替え版の出来に違和感を抱いた作品もありましが、今回は大成功
「シュレック」 「ボスーペイビー」のドリームワークスの最新作。
憎めない、愛すべきキャラクターが集まった怪盗集団の活躍を描く、子供も大人も楽しめる快作だ。
原作はオーストラリア発の児童漫画シリーズ。
カリフォルニア州、ロサンゼルスのとある街で、リーダーで天才的スリ師のミスター・ウルフ(尾上松也)が率いる悪名高き怪盗集団バッドガイズは、銀行強盗を成功させるといつものように警察を煽りながら逃走していました。
アジトに帰ると金庫破りの達人であるウルフの親友スネーク(安田顕)の誕生日を、近接戦を得意とするピラニア(河合郁人〈A.B.C-Z〉)、天才ハッカーの紅一点タランチュラ(ファーストサマーウイカ)、変装の達人シャーク(長田庄平〈チョコレートプラネット〉)と祝います。
一同が今回の強盗に関するニュースを見ると、街の知事である狐のダイアン・フォクシントン(甲斐田裕子) は彼らのやり方を時代遅れと批判したのです。これにはスネーク、シャーク、タランチュラ、ピラニアが憤慨するなか、ウルフは美術館で開催されるパーティーに乗り込み、名だたる怪盗が盗めなかったお宝である金のイルカを盗む計画を実行しようとメンバーに持ちかけます。
パーティー会場で、それぞれが着実に役割をこなしていく中、ウルフは自分の出番が来るまで来客達から金品をひったくっていました。けれども一人の老婦人(京田尚子)のハンドバッグからお金を取ろうと手を伸ばした矢先に、老婦人は階段から落ちそうになってしまうのです。しかし、偶然ウルフがバックの持ち手を掴んだことで大事にならずに済むのですが、老婦人から助けてもらったことに関して褒められてしまい、ウルフは嬉しさのあまり尻尾を振ってしまうのでした。
ピラニアの助けもあり、金のイルカが展示されている部屋の入り口の警官を無力化することができたウルフとスネークは警備システムをタランチュラにハッキングしてもらい、無事盗み出すことに成功するも警察に捕まってしまいます。
しかし、護送車に乗せられる寸前にウルフは、パーティーで金のイルカを賞のトロフィーとして授与されるはずだった街の名士であるルパート・マーマレード4世教授(山口勝平) にある提案を持ちかけます。それは、バットガイズをグッドガイズにするという実験でした。スネーク達は困惑するも、ウルフは良い奴になれば誰も自分たちが悪事をやっても疑わないと説明し、一同は納得するのでした。
減刑を条件に実験を開始するも、この実験の裏で世界を脅かす巨悪の陰謀が動いていたのでした。
冒頭、2分25秒にも及ぶ一連の食堂のシーンで、一気に心をつかまれるはずです。犯罪映画「オーシャンズ」シリーズやアニメ「ルパン三世」の風味を感じさせつつ、とにかくテンポが良く、予測不能。
さらにドリームワークスのお家芸とも言える、笑わせ、泣かせる筋立てが絶妙なんです。また善悪逆転のドンデン返しも、本作でも健在。ワルの代表格であるバットガイズだって、いいことをしでかし、ウルフなんて何度もシッポをフリフリ感激するし、何よりも盗品を投げ打ってまで、仲間を救おうとする絆が素晴らしいのです。そしてバットガイズの上を行く、伝説の盗っ人が、登場する善人ズラの人物の中に潜んでいたのです。その意外な真相にはビックリしました。これなら充分大人でも楽しめることでしょう。
ところで大半の映画館で日本語版のみが上映されますが、吹き替えもとても良く仕上がっています。ウルフ役を担った尾上松也をはじめ、それぞれのキャラクターに見事にはまっていたのです。
特筆すべきは、スネーク役の安田顕と、天才ハッカーで毒舌のタランチュラに声を当てたファーストサマーウイカ。声の心地よさと表現の豊かさに感銘を受けました。過去には知名度を重視した配役のせいか、吹き替え版の出来に違和感を抱いた作品もありましが、今回は大成功と言って間違いないでしょう。
本作公開後の2022年4月、監督のペリフェルは「ぜひ続編をやりたい」と語ったそうです。