「原作よりも池井戸風味、原作にはない地味な倍(?)返し」シャイロックの子供たち ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
原作よりも池井戸風味、原作にはない地味な倍(?)返し
原作とWOWOWドラマは履修済みだが、本作は完全オリジナルストーリーということで、オリジナル部分を楽しみに観に行った。
原作は原作で面白いのだが、お世辞にもスカッとするタイプの話ではなく、池井戸潤に半沢直樹的カタルシスを期待する層には受けが悪そうだ。それに、短編小説の集合体のような体裁のせいか、サイドストーリーが多めで若干テンポが悪い。多分それとは全く別物になっているのだろう、映画ならそれもまたいい。
と思いきや、設定以外の細かいエピソードに関しても、パーツの配置だけ変えて意外とそのまま使っている部分が多かった。遠藤がノイローゼになって神社に行く場面などは、話の本筋とはほぼ関係ないが、原作のエピソードそのままだ。オリジナリティが出てくるのは主に後半だった。
瑕疵を隠した不動産の売買契約シーンなどハラハラさせる要素もあり、細かいツッコミを入れたくなる部分はそこそこあったものの、スカッと感を出そうと工夫した跡がうかがえた。ある意味原作よりも、一般的な池井戸作品イメージに近い作風に仕上がっているのではないだろうか。
倍返しというキーワードを阿部サダヲに言わせてるのは完全に予告映像用かな。
柄本明、最近アクセント的な役でよく出ている。いや、昔からよく出ている人なのだが、今上映中の「エゴイスト」にも出ていたし、「ある男」にも「流浪の月」にも出てたよね?これだけ出ていて、どの役でも「これは柄本明が適役」と毎回思わせ、出演時間が短くても必ずインパクトを残すのはすごい。役によって当然置かれた立場など違うのに、「確かに、こういう立ち位置にはこんな人いるな」と思ってしまう。普通にも、愛嬌あるようにも、恐ろしくも見えるまさにこれぞ俳優。
橋爪功の狸親父ぶり、いいですねえ。いかにも食わせ者で、ちょっとねっとりしてて。演技なのに見ていてイラッとします。この不快感があるから西木の企みを応援できるし、石本がガツンとやられるクライマックスが引き立つわけで。
上戸彩若いな……。これ何歳の設定なんだろう。
(以下、原作小説とドラマ版の結末に触れます)
ドラマと映画を観て興味深かったのが、どちらも西木の末路を原作から大きく変えている点だ。
原作では、西木が黒幕(と匂わせる終わり方)。彼は現金紛失事件を調べようとしていて、ある日行方不明になってしまう。ところが、そもそも石本と西木の間に昔接点があったことが後でわかる。西木は滝野をはめ、架空融資の金を持って失踪し、別人となってどこかで生きているのでは、というところで終わる。
ドラマでは、行方不明だった西木が病院で無事見つかり、その後銀行を退職。過去に滝野同様石本から謝礼を差し出されたが、ドラマの西木は頑として受け取りませんでした、清く正しい銀行員でした、という設定。原作を読んだ後で見ると、なんじゃそりゃあああという感じだ。
映画では、疑惑解決に奔走した一方、沢崎からの謝礼はしっかり受け取り、保証人問題を密かに解決して銀行を辞める。
私はこの中では小説の、人間の闇を感じさせるどんでん返しが原作の一番の特徴だと思うし、インパクトがあって結構好きなのだ。それに、実は周到な悪事を犯したパターンの西木を、阿部サダヲなら演じられたと思う(彼がキャスティングされたことと人間の二面性を感じさせるようなポスターデザインから、ほんの少し期待している自分がいた)。結末は原作通り、という冒険も見てみたかった。(爽快感からは程遠くなりそうだが)
そうはいってもこれは私個人の好みの話で、原作をあげて映画を落とすつもりはない。各登場人物の人間臭さと池井戸的銀行の内輪ネタが満載で、退屈はしなかった。
こんにちは。
お久し振りです。
本作、
半沢直樹の様な痛快倍返し劇ではなく、シリアス過ぎない程良い塩梅の倍返し劇といったところでしょうか。
原作未読、TV版も未見ですが、ラストは思わせ振りで、まさか西木が・・・と推理してしまいました。西木を演じたのが阿部サダヲだったので、このまま終わるわけはないと思ってしまいました。
ラストは、原作、TV、映画版で違っていたわけですね。
なるほど、だから、思わせ振りなラストになったんですね。
思わせ振りも悪くはないですが、やはりスッキリしたラストにして欲しかったです。
では、また共感作で。
ー以上ー
私も個人的には、原作のラストの方が好みです。
柄本明さんの、いるいるそういう人❗️
いや、そういう人そのものだ❗️
凄味のある役ももおとぼけ系の見せかけも、いつでも自然体にしか見えない‼️
なんだか、ロバート・デ・ニーロみたいですね。