「【”突然現れた幼き弟は、お姉ちゃん、僕を売らないで、私に言った・・。”医者になる夢と血縁との二者拓一に悩む若き女性の姿を描く。中国の一人っ子政策と男尊女卑思想への批判を込めた作品でもある。】」シスター 夏のわかれ道 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”突然現れた幼き弟は、お姉ちゃん、僕を売らないで、私に言った・・。”医者になる夢と血縁との二者拓一に悩む若き女性の姿を描く。中国の一人っ子政策と男尊女卑思想への批判を込めた作品でもある。】
■中国、四川省の成都で看護婦として働くアン・ラン(チャン・ツイフォン:「チイファの手紙」以来である。透き通るような美しき女優になっていて、目を見張る。)は、両親を車の事故で失う。
彼女の前に現れたのは、幼稚園児の弟ズーハンだった。
彼女の両親はどうしても息子が欲しく、アン・ランを身体障碍者として届を出し、一人っ子政策の中、ズーハンを設けていた。
◆感想
・アン・ランが、両親の行いに失望し、一人で生きて行く道を選んだ事が良く分かる。幼き時に、身体障碍者かどうかを、確認しに来た女性の役人が来ることを判っていて、スカートを履いて躍る姿。
ー 怒った父親から、酷く叩かれる姿・・。-
・ズーハンは、望まれて生まれて来ただけあって、亡き両親から溺愛されていた事も、その我儘な姿から、良く分かる。だが、彼も徐々に幼いながらも、姉の心の葛藤を察し、姉を慕っていく。
ー チャン・ツイフォンの演技は別格として、ズーハンを演じた男の子の演技が絶妙に巧い。
憎らしかったり、可愛かったり、大きな瞳に涙を貯めて”お姉ちゃん、僕の事が好きでしょ・・。”なんて言われたら、アン・ランでなくとも、葛藤するよなあ・・。-
■今作では、成都の習慣も巧みに取り入れられている。葬式の際に、近親者で賑やかに麻雀をする習慣など。
・又、アン・ランの懸け麻雀が好きすぎて、離婚された叔父(シャオ・ラン)の一見、金に五月蠅い男と思っていたら、”ズーハンを引き取ろうか・・。”と、アン・ランに優しく言ったり、叔母(ジュー・ユエンユエン)が、アン・ランから”小さい頃、叔母さんの旦那さんにぶたれたり、裸を見られたりした・・。”と言われ、病に臥せる夫の布団を泣きながら、叩く姿。
ー 今作は、アン・ラン、ズーハンだけでなく、周囲の人物造形も見事なのである。-
・アン・ランの夢は、彼氏と北京の医学大学に行って、医者になる事。
だが、彼氏は両親にそのことが言い出せない。
・ズーハンを養子として引き取ってくれる夫婦を探すアン・ラン。直前まで上手く行った富裕な夫婦には、ズーハンは乱暴者という情報が入り、養子の話は流れそうになるが・・。
ー ここで、ズーハンが取った行動が心に沁みる。彼は、自分が怪我させてしまった、事故の原因にもなった男の娘に富裕な夫婦に電話をかけて貰い”あの子は乱暴じゃないよ。”と言って貰い”僕を貰って・・”と言うシーン。
幼いながらも、ズーハンに姉を思い遣る心が生まれた事が良く分かるシーンである。ー
<そして、アン・ランがズーハンを養子として引き取った家に行って、”二度とズーハンと会わない”という誓約書にサインを求められるシーン。
アン・ランを演じたチャン・ツイフォンの渾身の演技が沁みるシーンである。
彼女は、涙を流しながら、数秒考え、サインをせずに綺麗な服を着たズーハンの元に駆け寄り、一度は破ったズーハンのサッカーボールを持って、雨の中駆けだして行く。
勿論、ズーハンもしっかりと姉の手を握って、着いて行く。
そして、雨が上がった道を、二人はサッカーボールを蹴りながら、笑顔で”何処に行こうか”と言いながら走って行くのである。
アン・ランが下した決断。それは、血のつながった幼き弟と一緒に生きて行く事だった。
今作は、中国の一人っ子政策や、男尊女卑思想への批判を絡めながらも、血のつながりの大切さを描いた作品なのである。>
このストーリーは日本語版は無理だなと思いました。まさに、男尊女卑と一人っ子政策。日本語版があるなら江戸時代よりもっと遡る必要がありますね。人身売買も現実的なのかもしれない。そう思える国だからそこリアルに楽しめました。
チャン・ツィフォンも良かったですね。本当に透明感の塊で、まだ幼い感じですが、強い女性でした。調べたら今は21歳とのこと。「チィファの手紙」も良かったです。
いつか、違う映画で見たいですね。