グッバイ・クルエル・ワールドのレビュー・感想・評価
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音楽や映像でカッコよさを狙っても、魅力的な悪党がいなければ
クライムムービーは内面が魅力的なキャラが出てきてこそ、感情移入出来る。日頃縁のない犯罪者の世界が描かれていても、キャラの心の動きにどこか「わかる」部分があるからこそ、映画を観ている間だけ悪事に引き込まれていき、エンタメとして楽しめる。ここで言う「わかる」というのは共感だけでなく、想像がつくとか理解出来るとか、何か蠱惑的な魅力を感じるとか、そんなノリまで含む。
この映画で、私は「わかる」登場人物を見つけ出せなかった。
西島秀俊が演じた安西は、カタギでやり直す資金調達にヤクザの金を奪ったけじめのない元ヤクザ。近所に身バレした時、陰で強盗をしたばかりなのに今はカタギであるかのようにふるまっていたが、その矛盾が安西の中でどう整理されているのか(開き直っているのか無自覚なのか)よく見えなかった。
玉城ティナは喫茶店で一般人っぽい人も撃った動機がよくわからなかった。斎藤工は人物描写が浅いままモブのように死んでしまった。三浦友和は左翼崩れという設定上仕方ないが政治的な台詞が鼻につき(現実世界への皮肉として言わせたにしては中途半端な気がした)、かつ中の人の上品さが消し切れていなかった。
大森南朋演じる蜂谷刑事の境遇を見て、つい「孤狼の血」の大上刑事を思い出し、そのせいで蜂谷刑事の「ただのクズ」感がよけい強くなってしまった。
「クズ同士の潰し合い」と作品サイトに書いてあるが、本当にただのクズの潰し合い以上でも以下でもない話に入り込めず、最後まで傍観者のまま眺めていた感じだ。
登場人物たちに「行き場(居場所)がない」ことが、台詞の中で繰り返される。これが多分物語のキーワードなのだろう。彼らが何故行き場を失ったのか、そこにドラマがあるはずなのだが、本作の中ではいまひとつ見えてこない。それも、感情面で置いてきぼりになった原因のような気がする。
安西のヤクザ時代の舎弟を、狂気と過去の不遇を感じさせる気迫で演じた奥野瑛太と、下品さにリアリティのあった宮川大輔はよかった。
俳優陣は豪華で、それぞれの見せ場もあるし、ストーリーの動きが激しいので退屈はしない。ただ、キャラクターの心の動きに同調出来ない中で人が殺されてゆく様は高揚感がなく理不尽さばかりが際立ってしまい、そういう意味では単調だった。玉城ティナがボコられたあたりから、誰がどうなるのかだいたい想像がついた。
物語やキャラクターをカッコいいと思えなかったせいか、映像や音楽のカッコよさを狙った感が目についた。洋楽の挿入曲の使い方も喫茶店での現実感のない銃撃シーンやガソリンスタンドの爆発も、洋画で何度も見たことがあるやり方や雰囲気で、こういうカッコいいシーンを撮りたかったんだろうなあというメタ的な視線になってしまった。
クライムムービーの高揚するカッコよさの源はもっとこう、違うところにあると思うんだけどなあ。
タランティーノっぽい邦画を作ろうとして失敗した感じ。
基本的にヤクザ映画は大好きなのでそこそこ楽しめたが、無駄に長い、そして作りが雑(ラストで安西と刑事が偶然出会うことはあり得ないだろう)、というか登場人物の生き方が雑。俳優陣はそれなりに豪華なのだがタランティーノっぽい邦画を作ろうとして失敗した感じ。そもそも政春(斎藤工)が美流(玉木ティナ)にちゃんと正当な分け前を渡しておけば話は終わっていたのではないか?音楽が良かった。そして奥野瑛太(最近よく見る気がする、顔は知っていたが名前は知らなかった)が一番ヤクザっぽく見えた。
もったいない
ストーリーがめちゃくちゃでとりあえずみんな死んじゃうやつ。それでいて演ってる人達がこれまた名優ばかり。何気ないちょっとしたシーンもいい演技で場面がしまるしまる。
なんか演技力だけで最後まで見れた感じ。
好きな俳優さんがいればそれはそれで見る価値あるかも?
内容? よく分かりませんでした。
B級バイオレンスへのオマージュか?
シンウルトラマンの斉藤工と西島秀俊さんが出ているので観てしまったが、何だこれ!?
中身はアメリカでお馴染みのB級ギャング・バイオレンスもどき、いきなりの派手なアメ車にソウルミュージック、掃いて捨てるほど作られたそんなB級映画を今更、豪華キャストで真似てみてどうしようというのか・・。
見飽きた感の暴力シーン、それに加えて左翼運動家の馴れの果て、妻子や世間に見放された元ヤクザなど日本流の浪花節を絡めるから残飯雑炊のようなゲテモノ映画になってしまった。
まあ、多様性の時代、美より醜を良しとするB級映画へのオマージュなのでしょう。
和製スナッチ...?ではない。
和製スナッチを期待して観に行ったけど、なんかちょっと違った。
終わり方はすごい好き。
クタクタになった2人のおじさん、綺麗な海、鳴り響く銃声。
渋すぎる。
でもなんで最後のシーン銃声が1発なんだろ?と思った。
あの状況なら2発鳴りそうだけど。
片方は組長殺しの容疑で拷問されるのだろうか。。
そう思うと後味悪いなぁ!
銃声2発にしてくれたら、こんな悶々としなかったのに!
もったいないわ
キャストもロケも映像も仕掛けも、傑作となるチャンスは間違いなくあった。この場合観客の矢印は脚本演出監督に向かう。それは仕方がないね。
役者で良かったのは奥野瑛太と片岡礼子。異論はないだろう。残念だったのは三浦友和と宮沢氷魚。共に役者というよりは演出の間違いかと邪推。三浦友和の役はべらべらと薄っぺらいことを喋りすぎ(若者にやられるための振り?要らんわそんなもの)。宮沢氷魚の役はアーッとか意味不明な雄叫び複数回、それにラストの環境音がない中での劇伴に合わせたダンス、何だそれ。お二人とも役者の格が落ちる残念な仕事になった。
大ラスの西島秀俊と大森南朋(監督の実弟)のシーンも「なぜの嵐」(吉沢秋絵)、悪党をかすかに写すという画角にこだわる割に、西島秀俊がフレームインしてようやく存在に気づくという不自然さ。
オマケ。大森南朋と宮沢氷魚、ちむどんどんでは義理の親子ね。
皆殺しの富野
2022年映画館鑑賞46作品目
9月19日(月)イオンシネマ石巻
ハッピーマンデー1100円
監督は『まほろ駅前多田便利軒』『ぼっちゃん』『まほろ駅前狂騒曲』『日日是好日』『タロウのバカ』『MOTHER マザー』『星の子』の大森立嗣
脚本は『婚前特急』『きみはいい子』『裏アカ』『まともじゃないのは君も一緒』『ボクたちはみんな大人になれなかった』『さがす』『死刑にいたる病』の高田亮
ラブホテルでマネーローダリングの真っ最中だった杉山興業の現場を叩いた強盗5人
まんまとうまくいったが杉山側の策略も手伝って5人は仲間割れ
なんやかんやで殺し合い全滅する話
強盗団で運転手の役割をしている武藤がド派手なアメ車を借りて運転するのが面白い
オープニング曲に使用されたボニー・ウォーマック の『What Is This』がとても良い
このメンバーの紅一点に玉城ティナはナイスキャスティング
この作品内容にハーフならではのバタくさい顔がよく似合う
『ちむどんどん』でヒロイン暢子の夫の和彦を演じていた宮沢氷魚が髪の毛を染め大胆にイメチェン
役者冥利に尽きるというかこっちの方がやりやすいのではないか
それにしても氷魚って真魚以上に変な名前
元ヤクザだという事がバレてしまい真っ当に生きようにもうまくいかない安西が可哀想で悲しい
宮脇と浜田の関係がもう少し描かれたら良かった
ミルが踊るシーンでチカチカするシーンがあるがその後チカチカがやたら長いのが頂けない
医学には詳しくないが癲癇患者には良くないのではないか
これは大きな減点対象
最後海辺をバックに柵にもたれて笑いあうオッサン2人のシーンが印象的
強盗団の一員で元ヤクザの安西幹也に西島秀俊
強盗団の一員で闇金業者の萩原政春に斎藤工
強盗団の一員でデリヘル嬢の坂口美流に玉城ティナ
強盗団の一員で萩原に借金がある元証券マンの武藤に宮川大輔
強盗団の一員で左翼崩れの元県知事秘書・浜田に三浦友和
ラブホテルの従業員で強盗団に情報を漏らした矢野大輝に宮沢氷魚
オガタから小遣いを貰い杉山興業に協力するマル暴刑事・蜂谷一夫に大森南朋
安西の妻で実家のこじんまりとしたホテル正田屋を継いだ安西みどりに片岡礼子
安西の元舎弟で正田屋の従業員になった飯島に奥野瑛太
杉山興行のトップ杉山に奥田瑛二
杉山興行の幹部・オガタに鶴見辰吾
知事選で4期連続当選を狙う現職知事・宮脇に螢雪次朗
浜田の手下に前田旺志郎
浜田の手下に若林時英
浜田の手下に青木柚
窃盗後の話だったのか!
道が混んでて最初の5分くらいを見逃す。おそらく寄せ集めメンバーでラブホにて現金強奪をしたシーンがあったに違いない。
話はそこから。ヤクザのマネーロンダリング、ヤクザに買収されている刑事、ラブホのスタッフ、更生した!?元ヤクザ、元政治家秘書で落ちこぼれ、単なる借金まみれの男、それぞれの思惑が殺しの連鎖を生んでゆく。
話自体はとても分かりやすいし、どんどん登場人物が殺されていく。
誰が生き残るのかという視点でずっと見ていた。あーここで殺されるかーと思いきや生き延びたり、あれここで殺されちゃう!?と思ったり、展開が激しくてその点は楽しめた。
最後の2人と追いかけるチンピラのシーンでもう一段階どんでん返しがあればよかったなー。
個性的なギャングたちの演技を、物語が支えていない
◉ 終わり方が情けない
瀕死の安西(西島秀隆)と蜂谷(大森南朋)が、海を見下ろす道路の防護壁に寄りかかって、こんな所に住みたかった、そうだなみたいな会話が交わされた。この映画のテーマが居場所のない奴らだったからでしょうが、やはり取って付けたようなセリフ。次の瞬間、光溢れる画面が消えて、銃声(何故か1発)が響いて終幕。
ならず者であっても、行く場所は結構、あったりするのです。でも、物語の終焉としては情けなさは隠しきれなかったと思います。そこまでのストーリーの中で、強奪犯とヤクザ癒着のデカの絡みなども、油っこく見せられたはず。
「グラスホッパー」の最後で、死んだ二人の殺し屋が車で何処かに旅立ったのとは違う。
◉観たいものを観られない
力技のアクションと残酷な裏切り・騙し合いを織り交ぜて、ヤクザ+警察VS強奪犯の殺し合いで進行すると思われた物語。しかし、ラブホに持ち込まれたマネーロンダリングの金が、ヤクザから奪われた後のストーリーは、いったん主犯格の男たちの日常に戻り、ノンストップの闘いにはならなかった。
安西は元ヤクザの素性を隠して、旅館の立て直しに努め、浜田は悪徳政治家の追い落としを目論む。萩原(斎藤工)は次の盗みへ。こうした展開自体には、コクみたいなものを感じたのです。矢を引き絞って次の展開に備える。でも、そうはならなかった。
世の中の悪いことだけ選り抜いて生きている萩原と、頑張るように見えても基本、盗んだ金が元金で、しかもまた強奪犯に手を染める安西と浜田。それにヤクザ幹部(鶴見慎吾)率いるチームがごった煮になって、ヤケッパチの闘いが始まると期待した私の気持ちを、どうしてくれる‼︎
◉シュールの重みを支えきれない
話は、ある局面からシュールな狂気に変質していく。矢野(宮沢氷魚)と美流(玉城ティナ)がシースルーのレインコートを着て、喫茶店に乗り込む。ここで客を皆殺しにしたシーンを転換点として、現実の殺しから、まるで若者二人の脳裏で繰り広げられているような殺しに変わったと、私は感じたのです。
見捨てられた二人は、萩原と相棒を撃ち抜き、回りを牽制しながら去った……のではなく、片っ端からショットガンで他の客をバリバリ殺りくした。後の報道のシーンで、ヤクザや犯罪者が集まる喫茶店でしたと説明が入ったものの、ガチなハードボイルドの筋書きは、ほとんど消滅してしまった。
更に、この二人の若者の怨念が引っ張るシュールな殺しが本来の狙いだったとしても、ディテールだけはしっかりと作って欲しかった。二人とも細身なんだから、ショットガンの反動に身体が震えたり、慣れていないのだから撃ち損なったりするシーンもないと、作り物感(そりゃあどうしようと、作り物ですが)ばかり。
宮沢さんも玉城さんも、吹っ切れた不思議な空気感を出せる演技者だと思うのですが、今回のアクションは空回りに感じました。
監督あるいはヤクザ・警察・強盗たちの身勝手に付き合わされた気持ちが拭えなかったです。ただ、奥野瑛太さん初めどのならず者も、一人一人の映像は圧力に満ちていました。それは間違いない。
世の中の搾取構造を痛烈に批判する社会派クライムサスペンス
タランティーノっぽいという前評判を聞いた上でこの映画を観に来ましたが、思ってたよりもタランティーノ要素は前面に出ていないように感じました。
たしかに、オープニングの現金強奪のシーンの編集とか選曲とかタイトルの出し方(字体は完全にパルプ・フィクション)はタランティーノっぽかった。
けれど、描かれてる物語自体はタランティーノっぽい明るくて笑えるような物語では決してなく、社会の底辺にいる人間がそこから這い上がるために命懸けの勝負を仕掛ける哀しいまでのクライムサスペンスだった。
まず、登場人物たちはそれぞれ色んな形で社会から搾取されていて、過去や周りの環境にがんじからめになっている。
例えば、西島秀俊演じる安西は旅館を経営してささやかな生活を送っているが元ヤクザという過去の呪縛から逃げ切ることが出来ていない。
奥野瑛太演じる元舎弟に強請られたり(奥野瑛太の現実に打ちのめされて自暴自棄になった人間の演技が凄まじかった)、商店街の仲間たちに元ヤクザということがバレて商売が出来なくなったりしてしまう。
他にも、玉城ティナ演じる援デリ嬢の美流は体を売る仕事から抜け出すことが出来ず、宮川大輔演じる美流の彼氏は投資会社をリストラされて作った借金で首が回らなくなっている。
そして、三浦友和演じる浜田はコンビニ経営をしていたがコンビニの運営会社に搾取をされた挙げ句に過労死で奥さんをなくしている。
人生の主導権を取り戻すために大金が必要な登場人物が多かったように感じます。
この映画の主題は明らかに、行き過ぎた資本主義が生み出した搾取構造に対する痛烈な批判だと思いました。
利用するだけ利用して用済みになったらポイ捨て。
人を良いように使って、得た利益は一切分配しない。
そんな搾取の構造がこの映画のなかでは何回も繰り返し描かれる。
そして搾取された側は搾取した側に復讐を試みるが、結局搾取をされてる人間同士で殺し合うだけで、最終的に搾取をする人間や搾取構造は一切ダメージを負っていない。
そんな虚しさすら感じるこの映画を観て、これはまさに今の日本で起きてることと全く同じだなと思いました。
居場所のない者たち
登場人物に誰一人として共感できなかった。
それぞれが寄る辺がない状況というのは分かる。
が、そこに到る経緯が描かれていない、あるいは台詞のみのため実像感がない。
そんな記号たちが殺し合いをしてても何も感じることができませんでした。
ショットガンの反動がなさすぎたり、弾の詰替が手慣れすぎてたり、命中率が良すぎたり、覆面取るの早すぎたり、ガソリン撒いたとこでライターやら拳銃やら使ったり。
画作りばかり優先してしまった印象でツッコミ所も多い。
「互いに素性も知らない」「裏切り者は、誰だ」などの意味深な煽りも、ストーリーラインに活かされていない。
最後の銃声が一発だったが、西島サイドにも拳銃があり、誰が誰を撃ったのか。
・・・というのも、正直どうでもいい。
90分くらいでスピード感重視でつくるか、人物をしっかり描くかしてほしかった。
深みのない狂気には惹かれない。
東映セントラルフィルムのような犯罪映画?
もっとテンポよく、お洒落(スタイリッシュ)にすれば面白かったろうに。
西島秀俊はもとヤクザに見えないし。(奥野瑛太は見えすぎてたけど)
撃たれても刺されてもなかなか死なないのに、鶴見慎吾だけはすぐ死んじゃうし。
斎藤工(悪役いいな)はマスクして顔隠してるけどあんなに目立つ刺青隠してないし。
劇中曲の入れ方や、そもそも選曲にセンスないし。(ブレットトレインのヒーローなんか涙が出るほどかっこよかったよ)
最後のカリフォルニア・ドリーミングは、なんで?って感じだし。
ヤクザから足を洗ってただ静かに暮らしたいって、強盗してる奴に同情できないし。
それぞれにバックグラウンドが描かれてるけど、感情移入できないし。
逆にもっとドライに描いた方が悲しさが増したんじゃないかな。
期待が大きかったからいろいろ不満はあるけど、こういった昔の東映セントラルフィルムによくあった犯罪映画好きだな。
同じ仲間割れ(仲間じゃないか)なら、直前に観たファン・ジョンミンの誘拐犯たちのがよかったな。
ポンポさんみたいなプロデューサーがいて、90分くらいに編集してくれてたら傑作になってたかも。
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