「思ってたのと違った…」グッバイ・クルエル・ワールド おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
思ってたのと違った…
事前情報ほぼなしで、クライムサスペンスだと思って鑑賞したので、予想外のバイオレンス描写にびっくりしました。あまりに多くの人が無惨に殺されていったので、鑑賞後の感想としては、おもしろいかどうかより、正直ちょっと疲れてしまいました。
ストーリーは、ヤクザのマネーロンダリング情報をつかんだ5人組の強盗集団が、まんまと大金をせしめたことを発端に、分け前が原因の仲違い、現金を奪われたヤクザの追撃、そのヤクザと繋がった悪徳刑事の暗躍等、大金をめぐって悪党たちが凄惨な殺人を繰り広げていくというもの。
序盤はスローテンポで何度か寝落ちしてしまいましたが、物語の進行にあわせてさまざまな人物の思惑が明らかになってくると、しだいにおもしろさが増してきます。特に、強盗たちに情報をリークした人間が明らかになったところで持ち直したように感じました。
また、ヤクザが足を洗ってもカタギにはなれない悲哀や苦悩、悪党どもの騙し合い、派手な銃撃アクション等も盛り込まれ、これらがうまく融合していれば、かなりおもしろい作品になったのではないかと思います。しかし、残念ながら全てが中途半端に感じてしまったのはもったいないところです。
居場所のないさまざまな人たちの群像劇としたことで、結果として誰にも感情移入できず、中途半端になったような気がします。そして、これがまた終盤の派手な銃撃戦との相性も悪くしてしまったように感じました。そのため、最後も何が言いたかったのかよくわかりませんでした。「ヤクザと家族」や「すばらしき世界」のように、中心人物の心情や変容にスポットを当てるような描き方をしていたら、また違った印象になったと思います。
出演は、西島秀俊さん、大森南朋さん、斎藤工さん、三浦友和さん、宮沢氷魚さん、鶴見辰吾さん等、なかなか豪華な顔ぶれです。大森南朋さんの悪徳刑事はよくハマっていたし、斎藤工さんのイっちゃった感じもすばらしかったです。脇を固める奥野瑛太さんのヤバい感じもリアルすぎて秀逸でした。逆に西島秀俊さんは、いい人オーラが出過ぎてヤクザ上がりに見えなかったのは少々残念でした。そんな強面たちを向こうに、堂々たる演技を披露した玉城ティナさんも、確かな存在感を放っていました。