劇場公開日 2022年6月24日

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「脚本が少し弱いですが、エンタメ的には楽しめる。そこそこ面白い映画。」神は見返りを求める beast69さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0脚本が少し弱いですが、エンタメ的には楽しめる。そこそこ面白い映画。

2022年7月17日
PCから投稿

この映画、観るべきかどうか、色々迷って、参考までにレビュー等をネタバレを避けながら眺め読みしていましたが、肩を押してくれるようなレビューは1個も無く、とりあえず吉田監督作品は余り観てなかったのと、俳優陣が良いのを決め手に、勉強のために観に行く事に決めました。

前日にチケット予約した時は、私以外は全部空席でガラガラでしたが、上映時には多くのお客さんでギッシリと埋まってビックリ!それくらい話題性や人気が高い映画なんですね。きっと吉田監督や出演している俳優陣のファンの人達が多いのかも。

映画が始まって暫くは、「おお、これだ。こういう映画が好きなんだよ」と思わせるような、グッと来る場面が余り出てきませんでした。「これはハズレを引いたかな・・・」と不安になりましたが、後半に入る頃には、面白くて飽きさせないストーリー展開が増えてきて、だんだんと引き込まれてきて、安心しました。結果的に面白い映画で、個人的には観に来て良かったと思いました。

ただ、人にオススメ出来るかと言えば、ちょっと微妙な感じもします。おそらく監督自身、この映画で何を伝えたいのか、自分自身でも頭の中で、まとまってなかったのではないでしょうか。キャラクターの人物描写が不安定で、どうもリアリティに欠けているのが、最大の欠点です。

人気YouTuberを目指してるものの、全然バズらずに悲しんでる女の子が主演で、あるキッカケで知り合った、見返りを求めずに協力してくれる田母神さんという、もう1人の主演であるオジサンと楽しく動画作りに励みます。彼女はオジサンを「神」と呼ぶほど感謝しているのですが、やがて人気YouTuberや売れ線デザイナー達と知り合って新たに作る動画がバズって人気者になっていき、流行からはズレてるオジサンが邪魔になってきて排除するようになるストーリー。

しかしながら、神と呼ぶほど崇拝していた頃の彼女の健気で優しい性格が急激に冷酷で非人間的になっていくのは何故なのか、金儲け程度で簡単に豹変する異常な性格なのか、それとも今までは完全な演技で嘘だらけの女だったのか、その辺がキチンと深掘り描写されてないので、感情移入しづらくなります。出演している俳優達も、この台本を呑み込めていないようにも思えて、セリフも感情がこもってないような場面が散見されてるし、どこか微妙で惜しいという感じがします。

現実にYouTubeで稼いでいる連中も、詐欺師まがいの事をしていたヒカルとか、「辛口だけど、実はいい人」を演じて大衆を上手に洗脳してお金を稼いでるシバターとか、30億円の賠償金を踏み倒すために、フランスに逃げて、今でも「論点すり替え」の詐欺師的話法で真実の中に嘘を織り交ぜ、無知な大衆をミスリードして洗脳している西村博之とか、ろくでもないゴミみたいな人間が多いだけでなく、彼らを崇拝している不特定多数の人達もスマホ依存でその場しのぎの欲しか追えないゴミのような人達が多いという状況で、そんな世界に批判的な視点で映画を作ったところは評価すべき点ですが、結局は何が言いたいのか、監督自身も自分で良く分かってなさそうなところが、ちょっと映画としての完成度としては弱いと感じます。

事前に眺め見をした多くのレビューの中には「気分が悪くなっただけの不快な映画」とか「嫌な奴しか出てこない」とか「最後までハッピーじゃない」というのがありましたが、自分的にはそんな事は無かったです。実際に嫌な奴が意図的に多く出されてますが、その人物の背景が深掘りされてないため、本当に嫌な奴かどうかもリアルに感じにくいというか、描写不足のために、憎悪するところまでは行きません。田母神さんは優しくて親切過ぎるために悪質な人達に利用されて散々な目に遭いますが、怒りを露わにした時でさえも、人間の心を忘れてない感じがあります。自分の事は置いといて、自分を少し犠牲にしてでも、他人を救う事を嬉しく思うような、何よりも他人の幸福を願うような素敵な人物です。実際にこんな人がいたら、周囲に見守ってくれていたり、応援してくれる人がいそうですし、本当のハッピーがつかめるのは、この映画の中で田母神さんだけのように想像しました。しかし、やはり脚本がちょっと物足りないため、監督が意図したところはイマイチ分かりにくいです。決して悪い作品ではないですし、気軽に「何か面白そうな邦画が観たいけど、何か無いかな」という人には悪くない映画かと思います。

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beast69