「【”有難うって言って欲しかっただけなのに・・。”僅かな齟齬により、善意が憎悪に変わる時を抉り出した作品。今作は、SNS社会で生きる私達の姿を映し出しているのかもしれないな、と思った作品でもある。】」神は見返りを求める NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”有難うって言って欲しかっただけなのに・・。”僅かな齟齬により、善意が憎悪に変わる時を抉り出した作品。今作は、SNS社会で生きる私達の姿を映し出しているのかもしれないな、と思った作品でもある。】
― ご存じの通り、𠮷田恵輔監督はオリジナル脚本で勝負できる、数少ない監督である。その作風に、人間の妬みや嫉みや、隠しきれない悪性を取り入れ始めたのは「ヒメアノ~ル」「犬猿」辺りからだと思う。
そして、個人的な意見だが、見事にそれらの要素が結実したのが「空白」だと思っている。-
◆感想
・今作を鑑賞後、爽やかな気持ちで”あー、楽しかった!”と言う人は少ないと思う。何か、人間の愚かしさや、
厭らしさを見せつけられた感じがするからである。
・”神”と揶揄される程のお人良しのイベント会社に勤める、田母神(ムロツヨシ:怪演である。)が、売れないユーチューバーのゆりちゃん(岸野ゆきの)をあるきっかけで手伝い始める。
ー 彼が、ゆりちゃんに何かを求めていたとは、思えない。正に、お人よしなのである。-
■だが、ゆりちゃんが人気ユーチューバーとの共演でブレイクし、一方、田母神が、いつも金を貸していた且つての同僚が飛び降り自殺し、彼自身がその同僚の連帯保証人であったが故に、彼は精神的、金銭的に追い詰められていく様を演じたムロツヨシの人が変わった様な姿が異様なまでに怖い。
・ゆりちゃんは、アッサリと田母神をパートナーから切り捨て、イケメンデザイナーと仕事を始め、たちまち人気者に・・。
ー 成程ね。ユーチューバーが、小学生のなりたい職業ランキングの上位に定着する筈だ・・。ー
・怒りを制御し切れなくなった田母神は”T-ゴッド"として、ユーチューバーデビューを果たすが、目的はゆりちゃんの人気を落とすというだけのモノ。
ー 二人で罵り合う、田母神にも、ゆりちゃんにも全く共感できない・・。そして、天罰のように、ゆりちゃんはユーチューブ製作中に、大やけどを負う。その様を病院で映す、ネズミの面を被ったユーチューバー気取りの少年の姿が、恐ろしい。田母神に一度は追い払われるも、彼は撮られた映像を田母神にSNSで流される事を恐れ。彼を傘で滅多刺しにする・・。-
<前半は、田母神とゆりちゃんのラブストーリーに展開していくのかと思わせつつ、急転直下の嫌な嫌な展開の落差が、不快だが、秀逸である。
他人の噂話を脚色し、自覚なく流す、田母神の同僚の男(若葉竜也)を含め、登場人物がほぼ総て共感出来ない稀有なる作品。
もしかしたら、この作品はSNS社会で生きる、私達の姿を映し出しているのかもしれないな・・、と思った作品。
ラスト、ゆりちゃんが”大っ嫌い・・。でも有難う・・。”と包帯でくるまれた身体で田母神に言うシーン。その彼女の姿を映しながら、後から”有難う・・。”と言うシーンを見返す田母神の姿が切ないと思った作品でもある。>
今晩は。
今日やっと先行配信でこの映画を観ました。
YouTuberと言う人々の浅はかさ・・・
(これが現実なんでしょうね)
NOBUさんのレビューで言い尽くされています。
素晴らしいです。
「彼がゆりちゃんに何かを求めていたとは思えない」→そうかなぁ…って、思いました。
あわよくば付き合いたいとか、あったと思う。ただ、いわゆる「棚ぼた」で、手に入れたくなかった(そのあたりが、ある意味で良い人なのかも知れませんが…)。
そういう期待が、だんだん薄くなってきて、それと同時に借金を抱え込んだことで、お金に転嫁されただけのように思いました。
ただ、現代社会の問題点とか、最後せつないのは同感です。
火傷の原因を作った二人の、病院での振る舞いは、もしかしたら、自分だってあの状況なら同じことをやってるかも、という怖さがありました。
あそこまでいくともはやホラーなんだなと。ある意味、現実のほうもホラーと紙一重でやってる人がいるのかもしれませんね。