かがみの孤城のレビュー・感想・評価
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Escape from reality!
現実と鏡の中の世界観が丁寧に描かれているのが良かったです!
中学生の登場人物が、それぞれ現実で生きづらさを感じていて、孤城だけが現実を忘れられる空間というのが悲しかったです。
鍵の謎解きが完了して、こころが全員の回想シーンを見る場面はとても感情移入してしまいました…
最終的に平和な願いを叶えて、オオカミ少女の正体が明確になる場面が個人的には1番心に沁みました😭
真実は一つ!
原作も事前情報も知らず映画館での予告編だけで見ました。
ちょっとイジメがテーマの映画たからキツい所もあるかも知れない。中学生のガキのやる事だから実に下らないが、人によっては微妙な気分になるかも知れない事を先に書いておく。
ただ見終わった後味は爽快だからそれも書いとく。
色々背負い込んだ物を色々な人の力を借りて乗り越えて成長していく、そんな映画。
多感な少年少女だけでなく皆にお勧めできる良い映画だ。是非見て欲しい。
イジメで不登校になってしまった中学生のココロ。
ある日自室の鏡の向こうの世界に引きずり込まれた。
そこは絶海の孤島のお城。同じく引きずり込まれた六人の同年代の少年少女が待っていた。
そして怪力の狼少女(オオカミ様)が扉の開かない部屋の鍵を探す様にお願いする。その鍵で部屋の扉を開くと何でも願いが一つ叶えられる。その代わり7人いた時の記憶は全て失われる。鍵が見つからなくても構わない。その場合はここでの思い出は消されない。全て自主性に任せる。各自プライベートな部屋は用意されている。サロンも食堂もある(食べ物と水は無いが)。好きに使って良い。ただし城に入れるのは日本時間の9時から17時の間だけ。来ても来なくても良い。ただし17時を過ぎて城にいた場合は連帯責任で全員巨大狼に食べられる。期限は来年の3月30日までの10ヶ月程。それを過ぎると城は消滅する。
何とも不思議な話である。ずっと城に住んで良いのかと思ったら違っていた。お願いはするが鍵を探すのは自由。何がしたいのか分からない導入部。
彼らは城に来て鍵を探したり遊んだり勉強したりと思い思いの生活をする。徐々に親睦も深まるが鍵は一向に見つからない。
何故彼らなのか?何故中学生ばかり集められたのか?何故7人なのか?鍵とは?狼少女とは?実はここまででも伏線は色々ある。
全て意味がある事ばかり。
そしてこの物語内で全ての伏線は回収される。
つまり真実は一つしかないのだ。
それが解き明かされた時何かが起こる。
親切過ぎる内容なので見ていくだけでどんどん謎が解けていく。そして驚愕の真実へ。
是非じっくり見て欲しい。
嫌なシーンも多いが基本的に心温まる良い話である。
最後に、入場時に特典配ってくれるけどネタバレの絵が描いてあるから見ちゃダメだよ。
封にも大きく書いてあるけどね。
まあ見たからと言ってそれだけじゃ直ぐに分からないかもだけど映画を最後まで見るとああそうか!と言う映画のその後が分かる。
話は淡々と進んで特に何も起きずに半年が経つ。事件はどん詰まりで大きく動くが·····。
不登校になったこころ(當真あみ)が、理由も分からず「孤城」に招かれるところから始まる。
うーん、流行りの異世界ものに近いなあ。
7人集められるんだけど、意味深にも「オオカミさん(芦田愛菜)」が登場。「ようこそ!」
うーん、召喚した側は「ようこそ!」って言うよねー
鍵探して願いの叶う部屋で願いを言うと言う、これもまた合理的な説明もなく悪い予感しかない。
オオカミさんとは誰か
しばしば登場するフリースクールの喜多嶋先生とは?
同じ学校と喜多嶋先生(宮崎あおい)からなんか気づきそうだけど、マサムネ(コナンくん/高山みなみ)の推理に引っ張られてパラレルワールドに行っちゃうんだね。
マサムネくんが将棋の相手をしているスバル(板垣李光人)は会話からゲームプログラマーになるみたいだから、そのへんもヒントになっている。
そんなわけで7匹のヤギ達よりも先に時間差トリック(トリックではないか)には気づいたよ。
ドラマとしては大した盛り上がりもなく進むので少々退屈。
特に見せ場もなく半年経つところが逆に驚く。
設定も展開もテンプレ通りなので、私にはあまり刺さらなかったよ。
ほかの皆さんが仰られているように、現実世界に戻った7人がどうなったのかはもう少し見たい気もしたねー。
北村匠海くんや板垣李光人くん、梶裕貴くんはさすがだし、声優陣はみないい雰囲気出していた。
當真あみさんは「し」の発音が「スィ」に聞こえるのが残念。「すずめの戸締り」の同世代原菜乃華さんに比べると経験不足は否めないっすね。
あと、歩くシーンがたくさん出てくるんだけど、恐る恐るでは無いがなんだかみんなゆっくり歩くので、そんなところもいらいらさせられましたね
さて、来場者プレゼントは見てから開けとの事。一部のその後に関係してました。
名作
本屋大賞は伊達じゃない。
良い映画観たな感がとても高い。
解りやすい構成、丁寧な伏線。
萌えに振らないキャラデザ。
拙い演技だが、キャラクタの個性と噛み合った声。
弱い人、強い人、良い人、悪い人が上手い具合にちりばめられている。
それら全てが絶妙なバランスで取れていて脱帽する。
小学校中学年くらいから、全ての年齢の人にオススメできるが、アキのトラウマシーンだけは幼い子どもには厳しいか…。
以下つらつらと
七匹の子やぎ以外の伏線はすべて読み解けただけに、少し悔しい。
子どもの頃に赤ずきんとの親和性には気付いていたのになぁ。
こころの痛みを吐露するシーンでうるっと来た。
痛みは耐えるものじゃなく、訴えるものなんだよ。
序盤の母ちゃんがキツく当たってくるのでムカムカしたが、味方になってからの心強さにほっこり。愛されてるなぁ。
入場者特典がありがたい。これは嬉しい。
総評:原作未読。読むかー。
メリーゴーランド
原監督久々の作品という事でウキウキで鑑賞。
かなり心にズシっとのしかかる、けれど考えさせられて、感動して、笑える、そんな作品になっていました。
今作の城に招待された子供たちは、実際の生活でいじめや虐待などを受けている子供たちで、"願い"を叶えるためにオオカミさまから指示をもらいます。この子供たちのいじめられている描写、特にこころの描写は本当に生々しいです。
タヒねやブスは連呼するし、家に凸ってくるし、仲間外れなんて当然、先生の前では良い子ぶる、とにかく被害者に優しくない世界が強く展開されていました。作中でそれぞれの年代が違う事に気づいた際にも、"未来でもいじめる奴らはいるんだな"というセリフが重くのしかかりました。
しかも加害者ばかり庇う世界、ここまでのものにあった事はありませんが、自分もいびられていた経験があるので少し苦しくもなってしまいました。
その中で子供たちが絆を深めていく、その最中で衝突したり、自分の思いを吐露したりと、ギスギスしすぎず、ベタベタしすぎずのまま進んでいくのでテンポ感も良かったです。キャラクターも全員しっかりと立っていたのでそれぞれの役割も、その後進むべき道もしっかりと定められていたのもスッキリする要因になっていました。
伏線の殆どを回収していくのは映画の尺に収めるためには仕方なかったんだとは思いますが、多少思わせぶりなまま終わっても良かったのかなとは思いました。ある程度その流れが分かるとなるほどねと思ってしまったので、インパクト不足に陥ったのは少し残念でした。あとわりかしのんびりしすぎじゃないかなとは思いました。最初の半年を交流に使うとはこれ如何に。
あと声優陣は本職と俳優が入り混じっているので、上手な人と下手な人の差が浮き彫りになっていた印象です。あとこれは中の人繋がりだとは思うんですが、某有名探偵のセリフが作中に入ってきたのは少し冷めました。そこまで培っていた緊張感が一気に崩れてしまったので、あぁいう内輪ネタはやらないで欲しいなと思いました。
気になる箇所こそありましたが、それでも扱うには度胸のいるテーマを真正面から描き、原作に沿いつつも、監督なりの答えを出して物語に終止符を打ったのはとても好感を持てました。ぜひ原作やコミカライズ版にも触れたいと思います。
鑑賞日 12/23
鑑賞時間 14:30〜16:35
座席 H-2
トラウマを乗り越える、そして秘密を解き明かし◯◯をてに入れろ。
主人公含め集められたメンバーはなにかしらのトラウマをもっています。
狼様は◯◯を解き明かし◯◯をてに入れれば解放されるといいます。
しかしながら、解放されると◯◯がなくなるといわれます。
それでも集められた人たちは◯◯を探すため奔走します。
その後のストーリーは是非とも劇場でご確認ください。最後の歌で泣いてしまうかもなのでハンカチの用意を。
人気の女優さん、声優さんたち勢揃いなので凄かったです。
あるキャラクターのセリフがでてきますが、ご愛嬌を。笑
原作未読。 現在学生や学生時代が近い人たちにはとてつもなく刺さって...
原作未読。
現在学生や学生時代が近い人たちにはとてつもなく刺さっているようです。
個人的には変なひねりもないし、オーバーな展開もないし
割と淡々と進んでいくストーリー、だからこそ終盤の割と重めのエピソードと
伏線回収が生きてくるのかなと好感が持てました。
キレイにまとまっているけど決してこの世は美しいだけの世界ではなく
世界は変えられないかもしれないけど、あなたは自身は変わることができるかもしれないと
エールを送ってる感じも良かったです。
私自身は大人なので、いくら時代が進んでもこの世が不条理で偏っていて、みんな寂しやりがでだからこそ保身のために誰かを傷つけてしまう現実を知っているけれど、
それでも中には美しいものもあることを知っています。
それがあの9分間で知る事が出来ます。
星を4つにしたのは、やはり声優かな、、、
やっぱり素人感が出てしまって時々現実に引き戻されてしまう。
ただ、主人公がプロの人がやってしまうと日本アニメ独特のあのキンキンとしたアニメ声に
なってしまって初々しさがなくなってしまうから仕方ないのかな。
あと、集客しないといけないから人気俳優を配置するのも、、、
人間関係という名の"戦い"
原作未読です。
感想
リアルな不登校描写とファンタジーな世界感が見事に融合した見応えのある青春群像劇だった。長編小説が原作の為、尺の都合上展開が早足に感じる部分はあった。
・物語構成
物語前半は孤城に招待されたゲストの子供達の紹介と深掘り、後半では怒涛の伏線回収とキャラクター達の成長潭を描いていた。子供達が不登校になった原因を描く描写がどれもリアルで生々しく、観ていて辛かった。その分各メインキャラクター達がどれも魅力的に見えて楽しめた。しかし、長編小説が原作の為、展開自体はかなり早足でもう少し、細かく描写して欲しいと思う部分もあった。
後半の伏線回収パートは伏線がかなりわかりやすく提示されていた為、あまり意外性は無かった。
最後には、"明るく前を向いて不条理に立ち向かって行こう"と思える様な勇気をもらえるラストになっていたのでとても満足できた。
・作画
A1picturesが制作していたので、安定の綺麗な作画でとても観やすかった。
・声優
ゲスト声優多めのキャスティングだったが、違和感なく観る事が出来た。
・ED
本編後のED映像が、本編の余韻に深く浸れる映像とそれに合った主題歌だった為、感動して泣いてしまった。
・入場者特典
ネタバレ厳禁の"物語のその後"が観れるイラストカードだったので、鑑賞後も映画の余韻に浸る事が出来た。
総評
ストレス社会の今を生きる全ての方に観て欲しい、優しい青春群像劇。原作の方が深く描かれている気がしたので、原作も読んでみたいと思った。
うっかりタイトルでネタバレしそうになった
原作未読。
最初はちょっとモヤモヤだけど、話はストレス無く進む。
全員が辛い体験や問題を抱えている。どれも辛い。
個人的にはアキの体験が一番嫌。
だけど、こういう嫌な体験が一つも無い子なんているのだろうか。
なんて思いつつ、
病室の風景や喜多島先生の細かい描写(微妙に若かったり老けたり)で
全員の関係性が解ってくる。
お見事。
途中、「真実はひとつ!」の声に全部持ってかれました。
謎解きには外せないですね。得意そうに語るのが可愛かった。
シュタゲ??
あと、5時45分という時間帯なのか、学校が休みなのか、映画の題材的にターゲット層なのか、
高校生くらいの子のグループが多くて騒がしく、特に男子、
映画が始まってもお喋りは止まらず、着信音は鳴るわ、スマホは光るわで、、、この映画がこの子達に響くのかなぁ、、などとおばちゃんは余計な心配をしてしまった。
本格ミステリー的な「仕掛け」が物語構造に直結した、ヒキニート少年少女の救済物語。
予告編観て、やたら胡散臭い設定語りをきいたり、「私たちは助け合える!!」とか「生きなきゃ」とかマジでいってるのをきいて、「くっそさみーな、これヤバい地雷なんじゃねえの」とかイタい映画扱いしててごめんなさい。
とても良い映画でした!!
自分の「泣ける」要素にはひっかからなかったけど、斜め前の若者は終盤「ううううう~」とか思い切り嗚咽してました(笑)。
あの予告編を観て、「うわっ」とか思っちゃった(俺みたいな)人も、騙されたと思ってぜひ観てほしいところ。観終わったときには、きっとすさんだ心も浄化されていることでしょう。
原作未読。原監督の作品も、『河童』以来、とんと観ていない。
なので、映画館でかかった予告編の内容以外は、ほぼ予備知識ゼロで視聴。
出だしは、正直かなり微妙な感じがしていた。
ヒキニートやってる人間が、突然一カ所に集められて、いきなりあんな自己主張しながらお互いしゃべったりできるわけねーだろ、とか(コミュ障や発達要因があって間合いがとれないせいでハブられるヤツが、あんなふうに「普通の人間」を「擬態」なんかできないというのは、残念ながら本当だと思う)。
ヒキニートどうしが最初に自己紹介するのに、いきなり下の名前で語り合うとかマジありえねーだろ、とか。
だいたい、みんながちゃんと前を向いて、相手の目を見てしゃべってること自体、俺の知ってるニートじゃ全然ないんだけど、みたいな。
ただ、観ているうちに、ここに集められた子供たちというのは、単に社会不適合で引きこもっているというよりは、外的な要因がメインだったり、「できすぎる」せいで集団から浮いてしまっていたりする、いわゆる「社会復帰可能」なタイプの子たちばっかりなんだな、ということに逆に気づいて(=敢えて、救済可能な子たちだけが集められている)、制作者に対する不信感はだいぶゆるんだ。
要するにこの映画は、ヒキニートのくせになんでしゃべれるんだ、ではなく、ヒキニートのなかでも救える可能性のありそうな子たちだけが「敢えて」選ばれている、その「物語内の理屈」を考えながら観る映画なのだ。
他にも、出だしでは「おかしい」と思ったことが、観ているうちに納得がいった部分が、この映画にはいろいろとある。
7人の少年少女が、異世界にあるらしき絶海の孤城に集められて、狼の仮面を被った少女に「鍵」を探して見つけられれば、なんでもひとつ「願いが叶う」と言われる――。
このなんだか出来の悪い「なろう小説」みたいな設定も、じつは、「いかにも無理やりでっちあげたみたいなイタい設定」であること自体に、とても「切実な理由」がちゃんとある。
それから、僕個人は大変気になったのだが、この映画は、背景美術がやけに簡素というか、質素というか、予算が足りないみたいにあまり描きこまれていない。
特に城の内部のシーンでその傾向は顕著で、書き割りみたいというか、薄っぺらいというか、これが新海誠や宮崎駿だったら、みっしりと「古城」っぽい要素を描き込んだんじゃないかなと思えるくらい「なんにもない」。
最初は単純に、もともと児童向けアニメ出身の監督だから、なるべくキャラクターに集中して観られるように、あえて背景はシンプルにして意識を散らせないように作ってるのかな、と思いながら観ていた。でもその割に、床への映り込みや、鏡への映り込みといった細部(かがみの孤城だしね)には異様にこだわってつくってあるし、これだけやれるのなら、もう少し「リッチな画面」でつくれただろうに、と。
でも、物語の「真相」を知って、やはり思いを改めた。
この城には、「書き割り」のようである「理由」がちゃんとあるのだ。
ぼくらでもなんとなく想像がつくようなものでしか、城を「構築」できない切実な理由が。
その理由は、先に触れた「設定のダサさ」とも、きちんと連動している。
「何がこの城を生みだしたか」から逆算して、ちゃんと全てが組み立てられているのだ。
この「逆算」という要素は、本作を語るうえで大変重要なファクターだと思う。
多くの人は、『かがみの孤城』のことを「学校に通えない子供たちの救済」を目的とする、ある種のファンタジーとして捉えるだろうし、それ自体は間違いではない。
しかし、本作における物語の組み立て方は、じつは「ファンタジー」のそれではない。
間違いなく、本作は「本格ミステリー」として組み立てられている。
幾重にも伏線を張り巡らせて、その解決によってカタルシスを生み、想像していた世界観とは異なる「真相」を呈示することで、観客の先入観を「反転」させる。
この本格ミステリー的な「仕掛け」を実現するために、「後ろから逆算して」入念に、箱根細工のように組み立てられた作品――、それが「かがみの孤城」という物語の本質だ。
だから、ネタの実現のためには若干の「設定上の無理」や「現実ではありえないこと」も、ある種の「ルール」として押し通さざるをえない。そこがクリアされないと、本格ミステリーとしてのギミックが発動できないからだ。
その意味では、本作は世にはびこる「なろう系」や「異世界もの」より、むしろ綾辻行人の『時計館の殺人』や乾くるみの『イニシエーション・ラブ』あたりに近い作品だし、漫画ジャンルでいえば、荒木飛呂彦や福本伸行に近いテイストの「ミステリー・マインド」の充溢した作品だということができる。
先に触れた、かなり違和感のある「いきなりの名前呼び」に関しても、じつはいくつかの理由で、この作品の「ネタ」を成立させるためには、とても重要な要素だったりする。
これは、そのまま「なんで1年近くも比較的みんなで仲良く付き合ってるのに、お互いのフルネームを知らないのか」とか、「なんで彼らは自分の境遇や周辺の流行りものについて、1年もいっしょに居ながら、たいして情報交換を行っていないのか」という、ある意味「致命的」ともいえる作劇上の問題とも直結している。だって、実際にそんなことはまずありえないわけだから。
でも、そこは「ルール」として押し通すしかない。
そのことで可能となる、本格ミステリーとしての「仕掛け」が、本作では何よりも優先されるからだ。
要するに、『かがみの孤城』は、「とあるネタ」を成立させるために、いろいろと無理を重ねて「人工的に構築」された、絵に描いたような「本格ミステリー」映画なのだ。
このことに思い至って、僕のなかでの本作への「マイナスの先入観」は雲散霧消したのだった。
なにせ、お涙頂戴の気持ち悪い人情噺やそれを作りたがる連中の100倍、僕は本格ミステリーとそれをあくせく作ろうと努力する不毛な作り手たちに、大いにシンパシーを感じているので(笑)。
ただ、このミステリー要素に関しては、ひとつ気になるところがある。
真相に直結する具体的な「ヒント」が、中盤も早いうちに、かなり「あからさま」に、「むき出し」のような状態で、けっこう「唐突に」呈示されるのだが、あれって原作でもああなってるんだろうか?
そのせいで、僕のなかでは「ああ、○○は○○なのか」とまずはすぐ気づいてしまい、そこから「逆算」して、この物語の仕掛けにも、なんとなく思い至ってしまったという……。
正宗が、別の仮説を語り出したときには、「ええええ? そっちに話が行くのか??」と逆にびっくりしたくらいのものでして……(結局は当初予想した方向にまた話は戻ったわけだが)。
あれ、あんな違和感の残る形で出さないほうが、映画を観ながら真相にたどり着く人間の数を大分減らせたと思うんだけどなあ。まあ、そのぶん「気づかなかった」人にとっては、「あれだけあからさまにヒントが出てたのに、なんで俺気づかなかったんだろう!?」って、逆に「傑作」評価の基盤になるんだろうけど。
出だしで多少胡散臭く感じても、そのうちに誰もが映画に引き込まれてしまうのは、登場するキャラクターたちの抱える問題にリアリティがあるからだ。
リアルだから、いつしか観客も、我がことのように心配しながら彼らの行く末を見守る気分になれる。
とくにヒロイン、こころの話は、なかなかに痛々しい。
起きている事象や「敵」のキャラも含めて、羽海野チカの『3月のライオン』に出てくるひなたのエピソードを容易に想起させる内容だが、影響関係がどうのというより、女子(女性作家)にとっては、最も「身近によくあるタイプのいじめ」であり「一番よくいるタイプのいじめの首謀者」なのだろうね。身近だからこそ、エピソードの細部が生々しいわけだ。
フウカのエピソードは『四月は君の噓』の女性版のような感じ、アキのエピソードも最近はよく漫画や小説で見るタイプの話で、それぞれ目新しさ自体はあまりないが、少なくとも説得力のあるキャラ立てにはなっていたと思う。
逆に女性作家原作だからか、男子キャラにはだいぶ「理想化」が入っているような気も……(笑)。もっと男子のヒキニートってのは、生理的な気持ち悪さを内包している生物のはずなんだが。そのなかでは、公立学校にいたら100%いじめられそうな、距離感の測れない人懐こいコデブのウレシノは、いかにもな感じでとてもよかった(ああいうタイプは、気に入っていじってくれる軍師ポジの人間がクラスにいるとうまく溶け込めるんだけど)。
彼らを「社会に戻す」――「少なくとも死なせない」ために必要なのは、家庭以外の「居場所」の確保だ。それから、近しい立場の少人数の構成員によるリハビリ的な交流。そして、長いスパンでのゆったりとした、誰からもせかされない「均し運転」の期間設定。あとは、共同作業としての簡単な「タスク」もあったほうがいい。
そう考えると、「かがみの孤城」は、彼らにとっては、まさにうってつけの場だといっていい。
そこは、二重に守られたフリースクールのようなものだ。
センシティヴな子たちのなかには、学校に行けないのと同様、現実と地続きにあるフリースクールにも、なかなか通えなかったりする子も多い。
その点、「かがみの孤城」は、現実ではない非現実の空間にある、絶対的に安全なRefuge(避難所)だ。かがみの世界に認証された特定の7人しか入れない、究極の「会員制クラブ」。なかにいる全員が「学校に行けていない」子たちだとわかっている、安心できる「秘密基地」。
これしかない、と思えるような理想的な幻想世界をあてがわれて、子供たちはそこで傷ついた心の羽根をゆっくりと癒し、新たな一歩を踏み出すための「はばたく練習」を繰り返すのだ。
一体なぜ、「かがみの孤城」が、そんな機能をもつ場所になっているのか。
それは、最後まで観て、「誰がここに招待する人間を実質的に選んだのか」に思い至ることができれば、おのずと理解できる仕組みになっている。
(多少無理はあるのだが、「かがみの孤城」は「ふたつ」の想いが交錯して成立していることを忘れてはならない。)
正直にいえば、SF的にこの物語がきちんと成立しているのかについては、ちょっと分からない部分もあるし、とあるキャラクターのCVに某人物が当てられているのは、本格ミステリー的には「ズル」だとも思う。なんで「5時を過ぎて狼が出た」あとの城にこころが行けたのかも、僕にはよくわからなかった。他にも、階段をあがるときの3Dが奇妙だとか、音楽があまりに大仰だとか、気になる細部はいろいろあるのだが、全体としてはとても丁寧に作ってあったという印象。さすがは原監督といったところか。
終盤の子どもたちの行動(腰に手を……)や台詞の応酬は、僕にとってはちょっとトゥーマッチというか、サムい感じがしないでもなかったが、「謎解き」をたたみかけるテンポの良さと、それによって生じるカタルシスの大きさのおかげで、とても充実した気持ちでエンドクレジットを迎えることができた。
声優陣も、技術的にはいろいろ拙い部分も多かったけど(とくに泣くのと叫ぶのは、非声優の鬼門だ)、声質自体はこころもフウカもアキも、いい声をあてがえていたと思う。
今年を代表する2本の長編アニメが、かたや「鍵を閉める話」で、もう一方が「鍵を開ける話」だというのは、なんとなくおもしろい符合だよね。
意外に奥深い
中学生のこころはある事から不登校となり、部屋に閉じこもる日々を送っていた。そんなある日、部屋の鏡が光り鏡の中に吸い込まれるように入っていくと、そこには城のような建物と、6人の見知らぬ中学生がいた。狼のお面をかぶった少女が現れ、7人は選ばれた人で、城のどこかに秘密の鍵が1つ隠されており、見つけた者はどんな願いでもかなえてもらえると言った。鍵は見つかるのか、7人の共通点とは何か、という話。
オオカミと7匹の子山羊に例えたカラクリや、同じ中学の不登校生徒だが7年ごとに年齢差がある設定などがだんだんとわかってくるストーリーに引き込まれた。
意外に奥深い作品だと思う。
こころの声優を當真あみがやってたが、彼女は声だけでも良かった。
極上のファンタジー。
原作もよみたくなった。不登校の中学生たち7人それぞれの悩み、語ることの大切さ、人とのつながりの必然性、そして彼らの隠されたつながり、先が読めないのに展開が優しい。極上のアニメーション。
ストーリーはすずめの戸締まりよりよくできていたと思う。いじめられっ...
ストーリーはすずめの戸締まりよりよくできていたと思う。いじめられっ子など学校に通えない中学生7人が城に集められ、願いが叶う鍵を探す、という話なんだけど、鍵を見つけるまでに主人公こころの学校での仕打ちが描かれて胸が痛い。
大どんでん返し的に、最後の方で次々と謎が明かされるんだけど、しっくり来なかった。
まず集められた7人の生年が7年おき。この内のアキが、こころが信頼する喜多嶋先生だった。なぜアキが周りから信頼されるような先生になれたのかはよくわからない。
またオオカミさまはリオンのお姉さんだった。何故姉がオオカミさまをしていたのかはわからない。
お姉さんが出てくるのが唐突過ぎなのだが、元々お姉さんは病気で亡くなっているから、不幸な姉を想うと心が揺さぶられてしまう。
最後に狼に皆食べられたのに、何故アキを救ったら皆復活したのか分からなかったな。
映像が映画と思えないくらいにお金をかけていないのが残念でした。
カラフルの制作陣だから期待はしていたけど
2022年劇場鑑賞297本目。
傑作カラフルの制作陣が作るということでその点では期待したのですが、
今年はすずめの戸締まりを筆頭に長編アニメが大量に公開された印象でしたが、ハズレも多く今作も予告の感じだとなんかまたどこか飛ばされる系かとあんまり期待してもだめかもと思っていきました。
しかし序盤でもう7人プラス1人のキャラクターの奇妙な生活に引き込まれていきました。正直話の展開のために不自然に色々話題の制限がかけられていてそこだけ引っかかりましたが終盤の伏線の回収は怒濤の展開でした。まぁちょっと分かりやすい伏線があってある程度予想できちゃったんですが観て損のない秀作でした。
弱った心に優しく寄り添う良作
予告でそこまで興味を惹かれたわけではなく、たまたま時間の都合がよかったので鑑賞してきたのですが、思いのほかの良作で、鑑賞後の満足度はかなり高かったです。
ストーリーは、同級生からのいじめで不登校となった中学生のこころが、自室で突然光り始めた鏡の中に吸い込まれると、そこは西洋の城のような場所で、狼の面をつけた少女・オオカミさまから「ここに隠された秘密のカギを見つけた者はどんな願いも叶えてもらえる」と告げられ、先に訪れていた見知らぬ6人の中学生とともにカギ探しに挑む中で、しだいに心を通わせていくというもの。
まずは、開幕早々にこころの置かれた状況、親子関係などをさらっと理解させ、あっという間に鏡の先の城へと場面を移します。舞台のお膳立てまでが早く、訳もわからず不思議な世界に放り込まれ、さまざまな疑問が湧き上がり、観客もこころの心情と同化するような展開がよかったです。その後は、ややゆったりとして少々浸れませんでしたが、中盤で7人の少年少女たちの共通点が明らかになってくるあたりから、この城に隠された謎をめぐってがぜんおもしろくなってきます。
とはいえ、わかりやすいヒントのおかげで序盤で喜多嶋の正体に薄々気づいてしまいました。そうなると、集められた少年少女たちの素性や現実世界で出会えなかったわけにも気づいてしまいます。さらには、リオンの過去が語られた瞬間に、オオカミさまの正体も察しがついてしまいます。おかげで、種明かしで味わう爽快感が薄れてしまいました。ここは、あまり深読みせずに観るのが吉だと思います。
それでも、終盤のさまざまな伏線回収は小気味良く、それとは気づかなかった細かな伏線もあったので、最後まで楽しむことができました。映像的には昨今のアニメにしてはそれほどの魅力を感じませんが、本作はストーリーで魅せる作品なので、とくにマイナスポイントには感じませんでした。
鮮やかな伏線回収も見どころですが、そのあたりの察しがついてなお心に響くのは、悩みや傷を抱える心にとことん寄り添った脚本のおかげだと思われます。不登校が大きな教育問題となり、同じような悩みをもつ若者が多い現代、このような作品が世に出る意義は大きいと思います。本作が、苦しんでいる多くの若者の心に響いてほしいし、周囲の人たちが若者の悩みに気づき寄り添うきっかけになってほしいと切に願います。
キャストは、當真あみさん、北村匠海くん、吉柳咲良さん、坂垣李光人くん、横溝菜帆さん、高山みなみさん、梶裕貴くんらで、タレントさんの脇を一流声優さんが支えるという構図です。全体的には悪くないのですが、中には力不足の方もちらほらいて、劇場版アニメのキャスティング問題は、残念ながら本作でも感じてしまいました。
度肝抜かれる伏線回収とエンドロールのエモさが半端じゃない…
普段涙腺ボロボロの僕が泣くのを忘れるぐらいに引き込まれた…あれ?これ凄くないか?
ざっくり言えば不登校の少年少女が、新学期までに願いを叶えること。
一瞬ペラペラな感じがするが、結構…重い。
虐めに留まらず、現代でも聞くような背景まで彫り込むからしんどい。
…筈なのに。同じ仲間との和気藹々とした空気や、互いを思いあう姿がその空気感を軽くしている。
寧ろ純粋無垢だったり、変わらず大人ぶる某眼鏡君だったり、内気な子だったり、はたまたイケメンだったり…。
大人になってからわかる、「あーいたよなこういう奴」という気持ちと共に、何故かほっこりする。
多分、短い期間で同じ境遇の人達との絆なんだろうなぁ…確かにこれは本屋の大賞取れるわ。
伏線も終盤の短い中でそれなりに掘り下げ、細かいところまでもが伏線だったという凄さ。
アニメになってリアルに描ける分、細かいところまで丁寧に描写されていた。
因みに、タイトルにもある通りエンドロールで帰る人よ。
こればかりは帰っちゃ駄目だ…エモい…エモいぞコノヤロー!
特典も好き…あー、これは小説買っても良いかもしれない…
🔞です。少し刺激が強い。論理の飛躍あり。
40代男性です。こころとアキと訳あり留学生ホティの楽しいラブコメディ。青春時代の甘酸っぱさに社会への風刺が織り込まれた、混沌とした令和時代を象徴する作品。
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