劇場公開日 2022年12月23日

  • 予告編を見る

「原恵一監督の新たなる挑戦」かがみの孤城 サイレンスさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5原恵一監督の新たなる挑戦

2022年12月25日
Androidアプリから投稿

原恵一監督といえば
言わずもがな「オトナ帝国」など、
クレヨンしんちゃんやドラえもんなどの
アニメ制作においてその腕が評価され、
しんちゃんを抜けてからは
「河童のクゥ」「カラフル」「百日紅」「バースデーワンダーランド」と、
数年に一度のペースで
主にアニメ映画の監督を務めており、
国内外から多くの授賞経歴を持つ方。

そんな原監督が
今までとは明らかに異なる映画を作ったのが今作。

これまでの原恵一映画は
よくいえば「芸術的な魅力のある作品」が多かった。
しかしそれは悪く言ってしまえば
「誰もが楽しめる作品とは言いづらい」という見方も出来る。

「カラフル」や「百日紅」など、先にも書いたように
国内外から様々な賞を貰えるくらいには
評価されている作品にも関わらず、
そこまで映画に興味のない人、
特に子供には楽しみづらい点を感じていた。
実際、映画館には純粋に原監督の作品を好きなのであろう大人がほとんどだった気がする。
まぁ元々ドラえもんやしんちゃんとは違い、
それらは原作からしてあまり子供に向けられた作品ではないのですが。

しかし、今作「かがみの孤城」は違った。

若者が映画館に観に来ている。
中には子供もいる。もちろん大人もいる。
中身もそこまで難しくなく、
上映後には若い子たちの感想が飛び交う。

端的にいえば、「アノ原恵一監督がガッツリ老若男女に向けた作品を久しぶりに作っている」という事に驚いた。

なによりすずめの戸締まり、スラムダンク、アメコミ映画や福田雄一作品など、
さまざまな話題作が公開されている中で
客席がほぼ埋まっていた事に驚いたし、
原恵一作品好きとして、すごく嬉しい。

原作は辻村先生の人気タイトルなのだが
上下巻二冊分の小説作品という
それなりに長い物語になっており、
これを二時間に収めるのがまず難しいとされていた。
実際に映画公開前は「小説二巻分を二時間に収めるのは難しいから期待できない」
という意見をチラホラ見かけていた。

しかし、そんな難しさを感じさせない位
キレイにまとめられており、
一本の映画としてキチンと完成されている。

原作の良さを崩さず、
「映像作品である意味」も出ていた印象。
キャラクターのトラウマを描く場面では
本当に胸が痛くなるような演出・構成で
映画に引き込まれる。
かつて「カラフル」を観た時にも
そんな感情を持った覚えがある。
悪い人を描くのが上手い人だなぁ、と。

ここにきて原恵一監督は
今までとは異なるアプローチを見せてきており、
なおかつそれが世間から高く評価されている。
同じ所にとどまらず、挑戦し続ける精神に脱帽。

観て損はないかと思います。

サイレンス
かせさんさんのコメント
2024年2月20日

原恵一監督は良くも悪くも論理性の人で、ストーリーの飛躍を嫌いますから、そこが大人には受けますが、子供には難解になるのかなと。
この映画に関しては、とてもバランスが取れていたと思いました。

かせさん
Mさんのコメント
2023年3月7日

見て損はないどころか見ないと損する映画だと思います。

M