劇場公開日 2022年9月30日

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「がんばった!がんばった!」アイ・アム まきもと おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5がんばった!がんばった!

2022年10月2日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

悲しい

予告からコメディかと思いきや、その要素は実は控えめで、主人公・牧本の真摯な生き方が胸を打つ、心に染みる良作でした。

ストーリーは、身寄りのない孤独死をした遺体の火葬から納骨までを請け負う、市役所の「おみおくり係」として働く牧本が、自身の信念に基づき、精いっぱいのお見送りをする中で、多くの人と繋がっていくというもの。人の心をうまく察することができず、相手の理解を得られない時もある牧本ですが、地道な取り組みの積み重ねでその思いがじんわりと伝わっていく展開が涙を誘います。

本作では、身寄りのない孤独死がテーマとして描かれます。身内がいない、いても葬儀への参列を拒否され、誰にも見送られることなく埋葬される故人は本当に不憫です。そんな中、少しでも故人のためにと奔走し、最後の仕事となった蕪木の葬儀にあたっては、彼の知人を訪ね歩き、ついには身内を探し当て、参列へと導いた牧本のひたむきさには頭が下がります。自身のために購入した墓地を譲ったのは、彼の喜びと感謝の表れだったのだと思います。

そんな彼に終盤で襲いかかるまさかの展開に驚かされます。冒頭と呼応するカットが切なさを引き立てる中、そこから流れるようなラストが涙を誘います。冒頭の寂しい葬儀との対比で描かれる、一人また一人と参列者が現れる蕪木の葬儀。たった一人の刑事の手による納骨との対比で描かれる、遺族と知人に囲まれた蕪木の納骨。牧本のしてきたことはどこにも記録されない些細なことかもしれませんが、それは人と人とを結びつける確かな仕事であり、彼は精いっぱいがんばったのです。そんな彼自身もまた身寄りのない人生でしたが、彼の思いは多くの故人にしっかり届いており、心に染みるラストシーンに涙が止まりませんでした。

さて、主人公の牧本ですが、序盤から彼の察しの悪さやこだわりの強さ、周りが見えなくなる様子が、ある種のおもしろさを醸し出します。でも、彼のこの様子からはアスペルガーが疑われ、彼自身は何もおもしろくないはずです。そんな彼を近くで見ている同僚はきちんと理解してフォローするのに対して、新しく赴任した上司や初対面の人たちは彼を変わり者と捉えて否定したり笑ったりします。一方で真摯と思われた牧本の仕事ぶりも、彼の優しさから発したものではなく、彼の特性がそうさせていただけなのかもしれません。しかし、多くの故人を見送る中で、とりわけ蕪木の生き方に触れたことで彼自身も変化していったように思います。人とつながる、理解するということのもう一つのテーマがここにあったように思います。

主演は阿部サダヲさんで、不器用で相手を察することのできない牧本を好演しています。脇を固めるのは、満島ひかりさん、松下洸平さん、でんでんさん、松尾スズキさん、宮沢りえさん、國村隼さんら実力者ぞろいです。

おじゃる
満塁本塁打さんのコメント
2022年10月2日

こちらこそ、今後もよろしくお願いいたします。ありがとうございました😊。\( ˆoˆ )/

満塁本塁打
満塁本塁打さんのコメント
2022年10月2日

イイねありがとうございました。😊アスペルガーの「当然夢中」からの、最後の微妙な成長というか変化。おっしゃるとおりでございます。着眼点が素晴らしい。勉強になります。ありがとうございました\( ˆoˆ )/\( ˆoˆ )/。

満塁本塁打