「家父長制の闇、宗教、家族愛…」三姉妹 愚者さんの映画レビュー(感想・評価)
家父長制の闇、宗教、家族愛…
前夫の借金返済に追われ、なおかつその前夫が金をせびりに来る。そのため常に金に困っている長女。大学教授の夫を持ち周囲が羨む高級マンションを新居とした次女は、敬虔なキリスト教信者で教会の聖歌隊の指揮者を務める。三女はアル中の劇作家で、中小企業の社長の後妻となるが夫の子供に軽蔑されている。
一番順調に生活しているように見える次女の夫が、聖歌隊の大学生と不倫関係に陥ると、それまで気品ある貴婦人として振舞っていた次女に変化が…。
教会の清らかな教えに従順な人間でも暴力は振るう。酒癖の悪い父親の虐待が、3姉妹の特徴に結びついてくる。常に怯えている長女、教会の教えに頼ることが最善と考える次女には、父親に似た暴力性が現れる。三女は父親の虐待から守ってくれた次女に頼り切る。
そして、迎えた父の誕生会で事件が起きる。複雑に絡み合った鬱屈が爆発する。それでも…生きていくしかない。何も解決していないし、解決する見込みも見えない。それでも、久しぶりに会った三姉妹は笑顔で写真を撮る、食べる、はしゃぐ。彼女たちの生活に存在する影を吹き飛ばす爽快感がスクリーンから溢れる。
家父長制の闇、宗教の限界、儒教的価値観の行き詰まり…そこにはリアルな韓国があった。
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