「容赦はない。救いはあるか?」三姉妹 taroさんの映画レビュー(感想・評価)
容赦はない。救いはあるか?
久しぶりに、容赦ない韓国映画を見たような気がする。
ガサツだけれども気はいい人、意地悪ばかり言うけど根は優しい人といった、多くの映画やドラマに登場し、観る者に刺激と安心感を与える人物とは明らかに異質な三姉妹(とその家族)。まるで、観る者の〝感動したい・共感したい〟という欲望に抗うかのように、この映画は〈どうしようもない人々〉の愚行を次から次へと映し出していく。そこから生じる緊張感、痛々しさが最後まで持続する。
しかし、この映画は単なる露悪的な映画ではない。三姉妹の〈どうしようもない〉愚行の根源に家父長制の暴力がある事を浮上させる。「82年生まれ、キム・ジョン」は男性中心主義社会による女性の抑圧がテーマで、そこでは女性は基本的に被害者であった。それは見え難くされている女性の被害を可視化する適切な表現だったと思う。一方で、本作は、家父長制の暴力が被害者を加害者にしたり、トラウマから被害者が自分と周囲に絶大なマイナスの影響を与えていく様を執拗に描いている。しかも、そのことがわかったとしても、三姉妹の性格が変わるわけでも人生がやり直せるわけではない。しかし、「それでも、、、、、」という願いのような思いが湧いてくるエンディングになっている。
ここまで〈どうしようもない〉人々を、それでも否定しない(むしろ肯定している?)、この映画に感銘を受けた。
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