「観ていて苦しくなるのに目が離せない」三姉妹 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
観ていて苦しくなるのに目が離せない
予告編では三者三様の姉妹が、それぞれの問題を抱えながら姉妹としての絆を確かめ合う物語って感じがしていたがとんでもない勘違いだった。そんな枠にとどまらない、とてつもなくすごい映画だった。
序盤は三姉妹の現在が描かれるのだが、これが観ていてつらくなる。それは3人とも。仕事、夫婦関係、親子関係、観ている側が苦しいと感じる点は3人それぞれ違うのがうまい。アルコールへの依存、夫の浮気、癌の発覚…、さらにそんな仕打ちが待ち構えてんの?って感じだった。
でも後々、それらが後半につなげるための設定でしかなかったことがわかる。次女と三女が裸足でかけるシーンの理由はなんとなく予想できていたが、ポイントはその理由ではなく駆け込んだお店で受けた常連客の対応だったのか。酒癖が悪く、子どもに暴力をふるう父親に対して、当時の世間は甘かった。通報してくれと逃げ込む子どものほうが親不孝となじられる時代だった。いや、時代だけではなく韓国社会の問題とも言える。
そんな暴力をふるってきた三姉妹(プラス弟)の父親の誕生会が本作のクライマックス。このシーンがとにかく強烈だった。父親に対して、自分たちにしてきたことの謝罪を要求する次女。いつの間にか三姉妹(プラス弟)の側に立ってしまっている自分。そして父がとる態度と、母親と牧師の対応に怒りを覚え、さらに長女の娘がとった行動で私の感情はグチャグチャにかき回されてしまった。怒りと称賛と感動。まさかこんなに心を揺さぶられるとは思わなかった。
頭を窓にぶつけ血を流す父親に対しても、多分あの三姉妹(プラス弟)同様、しらけた気分になってしまった。もう完全に感情移入。
正直、長女の癌はどうなる?とは思うし、三女の状況も何も好転していない。でもあの三姉妹は間違いなく前を向いて歩きだした。映画って、ハッキリとしたとした結末が描かれなくてもスッキリとした気持ちで観終わることができるんだな。色んな人とこの映画の感想を話し合ってみたい。そんな気持ちにさせる映画だ。