「すれ違いに終始して納得行かない映画でした」日の丸 寺山修司40年目の挑発 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
すれ違いに終始して納得行かない映画でした
本作「日の丸 寺山修司40年目の挑発」を観に行くきっかけは、題名に「日の丸」と「寺山修司」という2つの言葉が入っていたこと、また日の丸を象ったチラシが非常に印象的だったことの2点でした。観る前のこちらの勝手な先入観としては、寺山修司の人となりや半生記を紹介しつつ、日の丸との関係を掘り下げるような内容だと合点していました。
ところが蓋を開けるとさにあらず、1967年に寺山修司が手掛け、TBSテレビで放映されたドキュメンタリー番組を、現在TBSテレビのディレクターである佐井大紀氏が監督となって、再度同じ手法で創られたドキュメンタリー映画でした。
内容的には、街を歩く市井の人々に「日の丸とは何ですか?」をはじめ、「家族と国とどちらを愛してますか?」、「外国人の友達はいますか?」、「戦争になったらその人と闘えますか?」といった、国家と個人、ないしは家族に関する質問を浴びせ、その反応を見るというもの。半世紀前と現在の日本人にとって、国家と個人の関係に関する意識を比較するというものであり、最初からそうと知っていればそこそこ興味深い内容だとは思うものの、何せこちらの早合点のため、内容に着いていけないまま映画は進んでいってしまいました。
後半の方でこそ寺山修司の事績がいくらか紹介され、内容的にもようやく自分の頭の中で整理が付いてきたものの、半世紀前と現在の日本人の意識がどう変わったのか、もしくは変わっていないのかと言った本作の主題に関する明示的、ないしは統計的な解答もないまま終わってしまい、最終的に全く納得感が得られませんでした。
そもそも佐井大紀監督の製作動機からして、1967年と2022年という時代が、東京オリンピックが直前に行われたことや、片やベトナム戦争が行われ、片やコロナ禍にあるということを以って類似点があったからと説明されるのですが、ここからしてどうも腑に落ちません。ロシアによるウクライナ侵攻後なら話は分かるのですが、本作は概ねウクライナ侵攻前に製作されていたので、ベトナム戦争とコロナ禍を同一視されても、今一つピンときませんでした。
また、市井の人々に対するインタビューも、何処の誰であるかを名乗らずに、いきなりマイクを向けて「日の丸とは何ですか?」という質問を浴びせるというもので、こんな不躾な方法の取材が行われたことに対して、正直怒りが込み上げて来ないでもありませんでした。これは寺山修司らが考案したもので、いくつかの方法を比較検討した上で決定したもののようですが、自分がこんなインタビューを受けたら、絶対にシカトするだろうし、そのインタビュアーに怒りを抱くことは間違いないだろうと想像したところです。
”ニッポン”を問うことが、寺山修司や佐井大紀監督のテーマだとしても、それで問われる”ニッポン”って、本当の姿なのか、私にはどうも分かりかねるところでした。
結論として、当方の先入観と作品の内容が端からすれ違っていたこともさることながら、内容的にもどうも納得がいかない話であり、残念ながら評価は★1としたいと思います。