劇場公開日 2022年12月16日

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「戦場と言うより“戦災地”だが、ウクライナの戦禍を映画で示したスピード感は称えられるべき」戦場記者 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0戦場と言うより“戦災地”だが、ウクライナの戦禍を映画で示したスピード感は称えられるべき

2022年12月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

ロシアがウクライナへの攻撃と侵攻を開始したのが2022年2月24日。TBSテレビの中東支局長である須賀川拓氏がウクライナで爆撃を受けている町やチョルノービリ原発を取材し、他のパレスチナやアフガニスタンでの取材映像も合わせ、自ら監督としてドキュメンタリー映画を完成させ同じ年の12月に劇場公開した、このスピード感たるや。もちろん須賀川監督だけの力量だけでなく、製作に関わった大勢の尽力によるものだろうが、なんにせよウクライナ侵攻を扱った劇場向けドキュメンタリー映画としては他国を見渡しても最速の部類に入るのではないか。

“戦場記者”と聞いて、鑑賞前は銃弾や砲弾の飛び交う最前線で取材を敢行するジャーナリストをイメージしたが、須賀川氏はどちらかと言えば戦禍に巻き込まれた町の人々の現実を伝えることに力点を置いている印象を受けた。もちろん命懸けの取材であることに変わりはなく、空襲警報を聞いて他の取材者たちと一緒に大急ぎで防空壕に駆け込む場面なども収められている。タリバンが支配を取り戻したアフガニスタンで、貧困とドラッグ禍が深刻化している現状を映し出した映像も衝撃的だ。

戦闘に巻き込まれたり人質に取られたりといったリスクと背中合わせの取材がこの先も続くのだろうが、須賀川氏には今後もどうか身の安全に十分留意しつつ意義のある報道を続けていっていただきたい。

高森 郁哉