劇場公開日 2022年11月25日

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「死を恐れぬ潔さに感動を覚えてしまう」人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版 ゆみありさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0死を恐れぬ潔さに感動を覚えてしまう

2023年1月31日
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鑑賞方法:映画館

興奮

山野井泰史は世界で13人だけが受賞しているピオドール生涯功労賞(登山界のアカデミー賞とも言われる)の受賞者。アジア人では山野井ただ一人という文字通りのレジェンド。この映画は1990年代から今日に至るまでの彼を追ったドキュメンタリーである。
ヒマラヤなどの氷壁に挑む山野井の姿に胸を打たれるのはもちろんだが、同じ登山家(クライマー)である9歳年上の妻妙子との夫婦としての生活(凍傷で欠損した指での料理や庭いじりなどの何気ない日常、夫婦でクライミングを楽しむ光景、夫のクライミングをフォローする妻…)も僕には興味深かった。
山野井は20代の頃のインタビューで「死ぬかもしれないという危機感を覚えないクライミングには挑戦する気になれない」と発言している。実際映画の中にたくさんのクライマー仲間が出てくるのだが、その多くが山で亡くなっている。常識で考えればまさにクレイジーなのだが、死をも恐れない、その潔い生き様には感動すら覚える。日常で抱えたさまざまな悩み、心配事がすべてちっぽけなものに思えてくる。
また、雪山、断崖絶壁、山から望む絶景(海、空)を写した映像はあまりに美しい。その壮大な景色は、人間なんてちっぽけな存在なんだという事実を我々に突きつける。

ゆみあり