「いつまでも奴隷船は作り続けられる」ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
いつまでも奴隷船は作り続けられる
農業ではドイツのバイエル社(旧モンサント社=アメリカ)が、種子と種苗の知的財産権を独占して、強力な除草剤とその除草剤に耐性のある遺伝子組み換え植物(GMO)の両方を販売することで莫大な利益を得ている。そのせいでインドの農家は毎年15,000人が自殺している。
どうも先進国の大企業は途上国の労働力を食い物にする傾向があるようだ。利益追求だけを唯一是とする資本主義の企業論理は、自社の眼前の利益のみ優先し、将来のことなど顧みない。
流行りのSDGsも、国連で採択されたからという理由で、各企業はパフォーマンス合戦に余念がない。地球全体のこと、人類全体のことを考えている企業など、本当はひとつもないのだ。
それは国単位でも同じことで、トランプのアメリカ・ファーストという露骨な主張は身も蓋もなかったが、実はどの国もトランプと同じで、自分の国さえよければいい。
人間は本来的に利己主義であり、国にも利己主義を求める。他国との共存共栄ではなく、他国を支配して利益を独占する支配者を求める傾向にあるのだ。平和主義よりも戦争主義である。
利己主義が罷り通る世界では常に弱者が犠牲になる。本作品の奴隷船はその極端な事例である。世界が平和主義、平等主義、自由主義、つまり民主主義がパラダイムとならなければ、いつまでも奴隷船は作り続けられる。
振り返って世界の民主主義の割合をみると、人口比では3割にも満たない。専制政治の国に住む人が世界の7割強なのだ。そしてそれは増加の傾向にある。選挙制度のある国でも、その選挙が政権有利に進められるようになっている訳だ。人類に未来はない。
コメントする