「【”少数言語の伝承と消失。”今作は、民俗学が好きな方には面白いのではないかな、と思うドキュメンタリー映画だと思います。】」ヨナグニ 旅立ちの島 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”少数言語の伝承と消失。”今作は、民俗学が好きな方には面白いのではないかな、と思うドキュメンタリー映画だと思います。】
舞台は沖縄・与那国で、高校が無いので中学生たちは卒業すると夫々の道を歩んで行く。多くは、沖縄本島の高校に行くようだが、中には東京に進む人もいる。
インタビュアーは、彼らに対し、与那国への想いを聞いて行くが、答えは様々である。
劇中、与那国の言葉”どぅなん”が字幕付きで紹介されたり、伝統文化が若い世代へと受け継がれていく様子も描かれる。
少し驚くのは、この映画を製作したのが、映像作家アヌシュ・ハムゼヒアンと写真家のイタリア人ヴィットーリオ・モルタロッティのコンビで、3年間もの間記録したという事である。沖縄・与那国の文化に惹かれるものがあったからである。
私は、高校時代に都会から東北の或る地域に父親の仕事の関係で引っ越し、最初はその地方の方言に慣れるのに苦労したが、徐々に愛着を持って行った事を、この映画を観て思い出した。
又、登山をやっていたので、東北地方だけでなく全国の山村に住む高齢の方々の言葉を聞いて来たが、日本には多数の言語がある事に改めて驚いたモノである。
沖縄の高校生達が、我社に入社した時に新入社員教育の担当をしたことがあるが、沖縄の高校生達はどこかノンビリしていて、あの独特な抑揚の言葉で”アイチの人は、マジメダネー。オキナワジャ、コンナニセカセカハタラカナイヨ。”とニッコリ笑って言われたモノである。
今作でも描かれているように、少数言語、文化は、日本から徐々に無くなって行くものなのかもしれない。それが時代の趨勢ならば、仕方がないと思う。
けれども、私は少数文化、言語が多数残る国と言うのは、文化度が高いのではないかと思っている。
国に住む全員が、共通語を喋るというのは、不自然だし、少数文化、言語を軽視する国は不寛容だと思うからである。
私は、民俗学者である、宮本常一の本が好きである。ご存じのように彼の先人は、自らの脚で全国を回り、その土地土地の人達が話す言葉を聞き取り、伝わる物語を聞き記録したからである。
<今作の様なドキュメンタリー作品は、地味ではあるが貴重なモノだと私は思う。
因みに高校野球で、沖縄代表の高校のブラスバンドが頻繁に流す曲に、嘉納昌吉&チャンプルーズの「ハイサイおじさん」があるが、私はこの曲が入っているCDを夏になると良く聴く。
だが、ある年に「ハイサイおじさん」は、酔っ払いの歌だからと沖縄の一部の人が言いだして、自粛した事が有った。愚かしい事である。
その国の文化度の高さとは、上述したように、少数言語の伝承にあると思っているからである。
幸い、今では甲子園でアルプススタンドから、「ハイサイおじさん」が演奏されるそうである。沖縄らしくて、良いじゃないかと私は思う。>