劇場公開日 2023年9月29日

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「だって、本気じゃないでしょ」まなみ100% 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0だって、本気じゃないでしょ

2023年8月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会、映画館

泣ける

幸せ

萌える

公開前舞台挨拶付き上映。

高校生のボクは入部した器械体操部でまなみちゃんという魅力的な女子に出会う。
その後、環境が変わり様々な人と出会いや別れを経験していくが、ボクにとってまなみちゃんはずっと大好きな特別な存在だった。
そんなまなみちゃんとボクの10年の物語。

クラウドファンディングをやっている頃からキャストと設定に惹かれて1年くらいずっと楽しみにしていた作品。
まなみちゃんのことが100%だった男(監督)のほぼ100%実話の話。
彼女への態度だったり、浮気体質なところだったり、かなりクズ男として描かれていて、監督はよく自分をモデルにここまで描いたなというのが第一印象なんだけど、何故か全く否定することもできない。
自分にも潜在的にこういった部分があると気付かされる。
彼女はいるけどまなみちゃんと結婚したい、この感情が分からなくもない。

「好き」という感情は本当に難しい。
“ボク”もきっと「好き」が分からないのだろう。
物凄くどうしようもないくらいずっとまなみちゃんのことが好き。
だけど、その挨拶くらい当たり前の愛をいざ言葉にしてしまうと軽くなってしまう、嘘っぽくなってしまう。
そして、その愛は本当に愛を伝えたい人に伝わらない。
彼女が結婚する。
どんなに想いがあってもそこまでに伝わらなければおしまい。
舞台挨拶で仰っていたが、実際にはまなみちゃんは結婚していないし、監督自身も断ち切れていない部分がありそうな感じだった。
だが、たとえずっと愛し続けている唯一無二の存在だろうと、「好き」の気持ちが分散している時点で踏ん切りを付けるべきなのかもしれない。
あの結婚式のシーンには監督なりの覚悟が見えた。
(この話をこれ以上すると今現在の自分に痛いほど刺さるのでこの辺で……)

恋愛のリアリティのみではない。
いわゆる青春のあの頃が鮮明に蘇った人も多いはず。
思春期の無敵感だったり、正義に走るイタさだったり、仲間とのバカ騒ぎだったり、そんな日常の片隅にいつもいて見つけられるとちょっと嬉しいあの子の存在だったり。
楽しい思い出も苦い経験も、今思えばみんな今の自分に繋がっていて、今の自分もまだ大人の階段を登り始めたばかりだけど、ノスタルジックでエモーショナルでちょっとセンチメンタルな気持ちにもなる。
思い出が走馬灯のように頭を巡る、合唱のシーン。
合唱曲の『虹』が本当にいい曲で、やはりその中でも輝きながら歌っているまなみちゃんとそれを眺めるボクを観たらもう自然と目が潤んでしまう。
もう2度と戻ってこない最高の時間だから、楽しかったことも悔しかったことも思い出しては胸を締め付けてやまない。
それぞれ浮かぶ景色は違えど、この映画を観て郷愁を感じた人は自分なりの“あの頃”に思いを馳せるはずだ。

この映画は瀬尾先輩の一件があって監督が制作を決めたらしい(舞台挨拶より)。
伝えたいことは伝えられるうちに伝える。
なんだってそうだ。
瀬尾先輩が教えてくれた大切なこと。
魅力的な登場人物と魅力的なシーンの連続。
この感動を味わいに公開されたらもう一度観に行こう。
(2人の靴踏みシーン控えめに言って最高です)

唐揚げ