「レンガかアヘンを作るしか生きる術がない難民キャンプに暮らす夫婦の姿に痛烈なメッセージが聞こえてくる寡黙な作品」ベナジルに捧げる3つの歌 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
レンガかアヘンを作るしか生きる術がない難民キャンプに暮らす夫婦の姿に痛烈なメッセージが聞こえてくる寡黙な作品
アフガニスタンの首都カブールにある難民キャンプに暮らす若い夫婦シャイスタとベナジルを見つめる物語。シャイスタはベナジルのために即興で歌を歌う優しい青年。3年生で学校を中退し難民となったシャイスタには土を捏ねてレンガを作るかケシの実を採るくらいしか仕事がない。学校に行きたいと父に相談しても聞く耳を持たない。意を決してシャイスタは国防軍に志願することを決めるがそこには目に見えない壁があった。
晴天の空の下で子供のように戯れ合う仲睦まじい二人の頭上にプカプカと浮かぶ監視用気球が不気味。教育を受けていなければまともな仕事に就けず、さりとて教育を受けるすべもない。どこにも逃げ場のないディストピアから逃れようともがくシャイスタと彼を見つめるベナジル、そしてやがて生まれくる子供達に突きつけられる現実がとにかく鉛のように重い。
シャイスタの虚ろな目がナレーションの代わりに語りかけてくる強烈な作品でした。
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